42 装備変更
「ねえ、ノラウルフ達にやられそうになった時、思ったんだけどさあ」
「うん」
「ああ」
「私達の装備って、貧弱じゃない?」
「だよね」
「同感だ」
「最初の頃ならいざしらず、今私達3ランクだし。今日は、防具屋見に行かない?」
「いこー!」
「ブルマー姿も、今日で終わりかな」
というわけで私達は、防具屋を見に行くことにした。
「いらっしゃい!」
「おじさーん、防具見せてー」
「おじさんじゃなくてお兄さんだ。ふーん。なら、いくらくらい出せる?」
「えーっと、これくらい?」
「ほうほう。なるほどな。かなり持ってるな。その装備で貯めたにしちゃあ、多いくらいだ」
「で、どんなのがありますか?」
「ちょっと待ってな」
防具屋のおじさんは、ちょっと引っ込むとすぐに、胸と腰しか隠さない服と、獣耳バンドを持ってきた。
「嬢ちゃん達くらいの所持金なら、この猫セクシー、犬セクシー、うさぎセクシーが良いと思うぜ」
「それはセクハラだー!」
私達は叫んだ。
「なんですかその防具。今の私達のより恥ずかしいじゃないですか。ていうかそれ本当に防具なんですか!」
「ああ、もちろんだとも。女性限定の特別防具だ。性能も見た目より高いぜ」
「嘘つけボケーっ、そんな装備で戦ったら秒でやられるわー!」
「そう言うのは、お前さん達がこの装備の真価を知らないからだ。有名な女性冒険者は皆この装備をつけて強くなったんだぜ。つまりこの防具は、験担ぎの装備でもあるんだ」
「本当か?」
「本当も本当。嘘だと思うなら、一度装備して戦ってみればいい。高性能っぷりにびっくりするぞ。なんだったら、クーリングオフも受け付けてやる。3日以内に返せば全額返してやってもいい」
「それ、本当ですか?」
「そう言って、ただ私達に着せたいだけじゃないの?」
「着せたいのは本当だ。だがそれは、嬢ちゃん達の身を案じてのことだ」
「なるほど。そんなにこの防具に自信があるのですね」
「おうよ!」
「ちょっとマトバ、まさかこれを装備する気?」
「いくらなんでも、血迷いすぎじゃない?」
「だが、本当にこの防具が良い物ならば、買わないのも損だ。ここは一度、簡単な依頼をこなして、装備の性能を確認してみないか? 気に入らなければ3日以内に返せばいいのだし、ものは試しと言うだろう」
「えー、でも、今の装備からこれに着替えるって、メンタル強すぎない?」
「正直、こんな格好で歩いてる人なんて、私達しかいないよ。今までもそうだったし」
「それが宣伝になればいいではないか。なんだ、ふたりとも。自分に自信がないのか?」
「自分に自信はある!」
「でもそれとこれを着る勇気は別もの!」
「わかった。では、私だけそれを着よう。おじさん。うさぎセクシーをくれ」
「まいどあり。ここで装備していくかい?」
「ああ」
そしてマトバは本当に、うさぎセクシー姿に着替えてしまった。
「うさうさ」
「ま、マトバ!」
「まさか、本当にそんな姿になるなんて!」
「そこまで言うな。少し恥ずかしくなってくる」
「少しだけなんだ!」
「この道通る人達、皆マトバを見てるよ!」
「でも私、感動した!」
「私も、そのマトバの姿を見て、勇気出てきた!」
「ああ。私のチャレンジが人々に勇気と感動を与えたのなら、良かった。本望だ」
「決めた。私も犬セクシーを装備するよ!」
「私も、猫セクシーを装備する!」
「まいどあり。ここで装備していくかい?」
「はい!」
こうして私達も、以前より際どい装備になって人前に出た。
「よし、嬢ちゃん達、似合ってるぜ!」
「それはセクハラですか?」
「訴えてやる!」
「そんな気はないが、そうだ。折角だから、嬢ちゃん達に依頼を頼んでもいいかい?」
「はいなんでしょう」
「ガチムチリスの毛を3アイテム分納品してくれ。その強さの相手なら、防具の強さもよくわかるだろう。それに俺もガチムチリスの毛をとってきてもらえて、一石二鳥だ」
「この場合一石二鳥とは言わない気もしますが、わかりました!」
「たしかにガチムチリスなら相手にとって不足はないね。よし、行こう!」
「では、いってきます」
「おうよ、頼んだぜ!」
こうして私達は、防具屋のおじさんからまた依頼を受けたのだった。
「ねえ、折角だから、武器屋に行って新しい鞭も見てみない?」
「おー、いいねえ。まだお金は残ってるから、もしかしたら買えるかも」
「よし。じゃあ行ってみるか」
武器屋なう。
「いらっしゃい。嬢ちゃん達、武器が欲しいのかい?」
「はい。おじさん。鞭を見せてください」
「おじさんじゃなくてお兄さんだ」
「お金はこれくらいです。前よりはいっぱい持ってきたんですけど」
「なるほど。それなら、丁度いい鞭がある。嬢ちゃん達三人とも、鞭を使うんだな?」
「はい」
「それじゃあ、ちょっと待っててくれ」
そう言うと武器屋のおじさんは、赤い鞭を持ってきた。
「これは三倍鞭と言ってな。初心者の鞭の三倍の速度と攻撃力がある」
「攻撃力と、速度まで上がるんですか!」
「それ凄い。それください!」
「待ってください。その鞭の他に何があるんですか?」
あー、マトバ。それ、防具屋の時に言ってほしかったなあ。
「他のは麻痺効果とか、快感倍増とか、そういう特殊効果つきの鞭になる。もっと高い額を出さないと、この価格帯で一番戦闘向きなのは、三倍の鞭一択だな」
「じゃあそれでいいでーす。ください」
「三人分ね!」
「それでお願いします」
「まいどあり!」
こうして私達は、鞭も新調した。
「ところで嬢ちゃん達、今日は俺と戦ってくかい?」
「はい、それじゃあよろしくお願いします!」
「今日こそ負けないよ、おじさん!」
「おじさんじゃなくてお兄さんだ。それじゃあ、表に出な」
「はい、わかりました」
私達は早速道の真ん中で武器屋のおじさんと対峙した。
「それじゃあ、勝ったらキャバクランニングに遊びに来てくださいね!」
「ああ、いいだろう。どこからでもかかってこい!」
「それじゃあお言葉に甘えて、てやー!」
「わっしょーい!」
「それ!」
ビシーンバシーン!
私達はよってたかって武器屋のおじさんを鞭打つ。
「うおおっ、これは、良い! 嬢ちゃん達、見違えたじゃねえか!」
「そうです!」
「私達は、数々の困難を乗り越えて強くなったんです!」
「このまま勝たせていただく!」
「く、そういうわけにはいかねえな。それ、おじさんタイフーン!」
「きゃー!」
「また吸い込まれるー!」
「く、む。だが、新防具のおかげであまり痛くない!」
「本当だ!」
「うそ、これ本当に強かったんだ!」
「よし、このまま。ウェルカムトゥヘブン!」
「ウェルカムトゥヘブン!」
「ウェルカムトゥヘブン!」
「あはああーん!」
武器屋のおじさんは気持ち悪い声を出して倒れた。
「はあ、はあ。まいった。その鞭さばき、まさに天国。俺の負けだ。今日はキャバクランニングに行ってやろう」
「やたー!」
「ありがとうございまーす!」
「ごゆっくり楽しんでくださいね!」
とうとう武器屋のおじさんも倒すことができた。
野次馬からも拍手をもらい、私達は機嫌よく、ガチムチリスを倒しに行くことにした。




