41 ウルフ
今日の依頼はキャロキャロットの納品にした。
というわけで、にんじん少年少女に分けてもらいに行こう!
ひたすら走って、にんじん畑へ向かう。もう走るのにも大分慣れてきたなあ。
このあたりの猿は油断できないくらい強いけど、倒せないほどでもないから難なく突破。
そしてにんじん畑まで来たけど。そこには困っているにんじん少年少女がいた。
「どうしよー」
「どうしようねー」
「困ったー」
「困ったねー」
ほら、困ったって言ってるから間違いない。
「にんじん少年少女、久しぶりー!」
「こんにちはー!」
「今日もキャロキャロットを分けてくれ」
「あ、ウタハ、マイミ、マトバ!」
「そのお願いは、残念ながら今は叶えられないの」
にんじん少年少女は、私達にそう言った。
「それは、タダではやらないという意味?」
「ううん、違うんだ。最近ここをノラウルフがおそってきて、キャロキャロットを食べて行くんだ」
「だから、今は分けられる程キャロキャロットが無いの。それに、またノラウルフが来たら、もっと減っちゃう。これは大問題なのだわ」
「なるほど」
にんじん少年少女は今、モンスター被害に困っているのか。
「わかった。じゃあノラウルフは私達が退治してあげる!」
「そのかわりといってはなんだが、報酬としてキャロキャロットを分けてくれないか?」
「少しでいいの。お願い!」
マイミ、マトバ、私がそう言うと、にんじん少年少女は顔を見合わせてうなずいた。
「お前たちがノラウルフを倒してくれるんなら、ぜひ倒してくれ」
「でも、分けてあげられるのは本当に少しだけよ。それに、ノラウルフがちゃんと退治されたって分からないと分けてあげられないからね」
「わかった。じゃあドロップアイテムもちゃんと持ってこよう」
「よし、それじゃあ約束ね!」
「ノラウルフはここから東か北から来るんだ。どっちも確認してくれ」
「ああ、わかった。それじゃあ行ってくる」
こうして私達は、ノラウルフを退治することにした。
「ガウ!」
「ウー、ガウガウ!」
少し歩くと、すぐにノラウルフ達が現れた。
「マイミ、マトバ、いくよ!」
「というか、つっこむよ!」
「息を合わせるぞ!」
私達はノラウルフ達を鞭で叩きまくる。
ビシーンバシーン!
「キャイン!」
「キャインキャイン!」
よし、なんとかノラウルフ達を倒せそう!
そう思った時のことだった。
「ワオーン!」
ノラウルフの一匹が吠えると、ノラウルフ達が一斉に私達にとびかかってきた!
く、息のあったコンビネーション攻撃か!
ならこっちは全力で迎撃だ!
「それ!」
「えい!」
「やあ!」
ビシンバシーン!
何匹かのノラウルフは迎撃できるけど、うちもらした数匹が私達をおそう!
「きゃー!」
「いやーん!」
「く!」
かなりのダメージを負ってしまった。更に、ノラウルフ達の攻撃が止まらない!
「ガウガウ!」
「ガウガウガウ!」
「きゃあ、このままじゃ!」
「私達、こいつらの餌にされちゃう!」
「なんとか、この窮地を乗り越えなければ!」
何か手はないか、何か!
そうだ、私達には、接客バトルがある!
「マイミ、マトバ。こうなったら、接客バトルよ!」
「それでなんとかなる?」
「なんとかならなかったら、更に別の手を考えよう!」
「よし。というわけで、誘惑攻撃!」
「誘惑攻撃!」
「誘惑攻撃!」
ど、どうだ!
「キャイーン!」
「キャインキャイーン!」
すると、なんということでしょう。
あんなに獰猛だったノラウルフ達は、目をハートマークにして、私達に牙を突き立てるのではなく、ペロペロなめてくるではありませんか。
「きゃあ、ちょ、ちょっと、そこはダメー!」
「ああん、皆、ペロペロしすぎー!」
「あんっ、駄目だ。激しすぎる!」
ペロペロペロ、ペロペロペロ。
ノラウルフ達は止まらない。でも、ここはチャンスだ!
「えい。更におしゃべり攻撃!」
「おしゃべり攻撃!」
「おしゃべり攻撃!」
「キャイーン!」
「キャインキャイーン!」
「ドリンク攻撃!」
「ドリンク攻撃!」
「ドリンク攻撃!」
しぼりたてミルクをごちそうしたことで、ノラウルフ達は完全に撃沈。
私達は間一髪、ノラウルフ達を昇天させることに成功した。
「ふうー、間一髪ー」
「ワンワン!」
「よし。お前たちも満足したな?」
「ワン!」
「では、ノラウルフ達にお願いがあるのだ。この近くにあるにんじん畑はおそわないでほしい。そのせいで私達もにんじん少年少女も困っているのだ。だから、どうかここより遠くの地に行ってくれないか?」
「ワンワン!」
「え、群れの行動はリーダーが決める?」
「ワン!」
「じゃあ、私達とそのリーダーを会わせて」
「ワン!」
「わかった。しぼりたてミルク一杯で手を打とう。だって」
こうして私達はノラウルフ達を懐柔し、リーダーの元へつれてってもらった。
「ワオーン!」
「いた、リーダーだ!」
「何奴、俺が倒してくれる。だって!」
「そうはいかないよ。一体だけなら力押しでなんとかなる。ウェルカムトゥヘブン!」
「ウェルカムトゥヘブン!」
「ウェルカムトゥヘブン!」
ビシーンバシーンピシャーン!
「キャウウウン!」
ノラウルフリーダーは見事に瞬殺した。
「よし。負けたからにはしたがってよね。仲間をつれて、他の地に移住して!」
「ワウウーン」
「仕方ない。だが、次に会った時は憶えてろよ。何時の日か更に強くなって、今度こそお前たちに勝ってやる。だって」
「あ、そういう恨みとかはいらないから。はい、しぼりたてミルクで機嫌直して?」
「ワオーン!」
結局しぼりたてミルクで懐柔したノラウルフ達は、すぐに他の地へ旅立っていった。
「ドロップアイテムも拾ったし、にんじん少年少女の元へ戻ろう!」
「そうね!」
「もう暗くなる。野宿しないなら、速く行くぞ」
こうして私達は、にんじん少年少女にノラウルフ問題を解決したことを伝えた。
「おお、お前たち。本当にやってくれたのか。ありがとう!」
「約束通り、キャロキャロットを分けてあげるわ」
「やったー!」
「ありがとう!」
「感謝する」
「あと、これは俺たちからのお願いなんだけど、俺達の他にも野菜少年少女が困ってたら、助けてやってくれよな!」
「私達はいつも育てた野菜を狙われているから、いつだって大変なの」
「わかったよ。見つけたら、気にかけとく!」
「美味しい野菜を分けてくれるんなら、お姉さん達に任せておきなさい!」
「それと、いつも通り」
「皆、キャバクランニングに遊びに来てね!」




