表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/88

4 キャバ嬢達の討ち入り

 先輩たちは鞭を装備していた。

「そーれ、女王の舞!」

 ビシンバシーン。

「うわああー!」

「くらいなさい、茨の攻め!」

 ビシンバシーン。

「ぎああー!」

 すごい。先輩たち、鞭テクで悪漢達を圧倒してる!

「くっ、なんだこいつら、やけにつええぞ!」

「てめえら気合い入れろ、女相手に負けるな!」

「キャバクラッシュに手を出したのが運のつきよ。あなた達全員、お客様になりなさい!」

 男たちも強いはずだが、先輩たちはその更に上をいっている。一人、また一人と、男たちが昇天していく。

「なんだこいつら、本当に女か!」

「女も女、レディー中のレディーよ!」

 この調子なら、男たちはもうすぐ全滅ね!

「抜き足差し足忍び足」

 あ、しかも戦闘のどさくさに紛れて、シェイドさんが私達を助けに来てくれた!

「あ、シェイドさん!」

「しっ。今助ける。もう少し静かに」

「はいっ」

 三人で小さく返事をする。するとシェイドさんはするすると私達の拘束をとき、首輪まで取ってくれた。

 ありがとう、シェイドさん!

「よし。これでもう大丈夫。三人とも、怪我はない?」

「はいっ!」

 三人そろってうなずく。なんだこのシェイドさん。いつもとはまるで違うくらいかっこいい!

「く、こうなったらあの三人を人質に、って、ええーっ、なんで自由になってんだー!」

 そしてここでバカな男が、ようやく私達のことに気がついた。

「このお、今までよくもやってくれたわね。えいっ、木魔法!」

「この怒り、百倍にして返してやるわ。えいっ、火魔法!」

「拘束プレイに首輪プレイ。これはもう死刑ものだ。えいっ、水魔法!」

「ぐわー!」

 よーし、私達も攻撃。先輩たちに加勢だー!

「それじゃあ私はこれにて失礼」

「シェイドさん、ありがとうございました!」

「ました!」

「シェイドさん、ありがとうございます!」

 私達は秒で消えるシェイドさんにお礼を言ってから、戦況を見た。

 もう、男たちは半分も立っていない。そして先輩たちは全員無事。これはかなりの戦力差だ。完勝まであとわずかといったところ。

「兄貴い、このままじゃ俺たち、まずいっすよ!」

「ええい、情けねえこと言うんじゃねえ! 俺ら暴力団が暴力で負けられるか! うおー!」

 あ、けどなぜか、男の一人が急に一回り大きくなった!

 突如パワーアップ、いえ、本気を見せた男が、先輩たちを一睨みする。

「お前ら、覚悟したれ。俺の本気を見た者は、誰一人として生かしておかんのじゃ!」

「出た、いつもの兄貴の本気モード巨大化!」

「兄貴、いつものようにやってくださいよ!」

 本気を見ても生きてる人いるじゃん。味方だけど。

「総員、一斉攻撃!」

 先輩たちの鞭が一斉に、本気モード男を攻撃する。

 けれど本気モード男は、何本もの鞭に打たれても平然としていた。

「ガハハ。この程度のご褒美ちいとも効かんわ。このまま全員病院送りよ!」

 生かしておかないのに、病院には行かせるんだ!

 なんて思ってる場合じゃない。本気モード男が先輩たちに殴りかかった!

 先輩たちはうまく回避してるけど、それもいつまでもつか。

「このままじゃまずい。よし、ウタハ、マイミ。私達であの本気モード男を取り押さえよう!」

「正気なの、マトバ!」

「正気も正気、大真面目よ。この、私達が作り出してしまったピンチ、私達の手で逆転させましょう。そうすればこの先職場で肩身が狭いこともない! きっと!」

「さすがマトバ!」

「自分達の失敗は自分たちでフォローする、か。そうね。マトバ!」

「よし。それじゃあいくわよ。1、2の、3!」

「うおー!」

「でやー!」

「でいくわよ!」

「マトバ、早くこーい!」

「息があってないのはお前だけだー!」

 私とマイミは叫びながら、本気モード男にしがみついた。私は右足、マイミは首だ。

「な、なんじゃおのれら、ええい、はなさんかい!」

「いやよ、絶対嫌!」

「あなたが昇天したら、解放してあげる!」

 遅れてマトバが左足にひっつく。

「先輩たち、今です。私達ごと、こいつを倒して!」

「なんですって!」

「ええ、わかったわ。ウタハ、マイミ、マトバ。あなた達のことは忘れないから!」

 わーっ、先輩たち切り替え早いー!

「必殺、約束された勝利の鞭!」

「必殺、天地開拓しちゃう華麗鞭!」

「必殺、後輩ごと超昇天殺法ー!」

 そうして、先輩たちは容赦なく必殺技を使った。

 当然のようにそれらは本気モード男にあたる。そして私達も。

 あれ?

 私達、痛くない?

 ひょっとして、先輩たちは必殺技をすべて相手にあてて、私達をきれいにかわしている?

 先輩。ほろり。

 私は先輩たちの思いやりと超絶昇天テクに脱帽した。

「おんどれあー!」

 そして本気モード男は倒れる。

「ひいーっ、兄貴が倒れたー!」

「こんなはずは、こんなはずはー!」

 他の男達も倒れていく。

 そして最後にこの場に立っているのは、私達女性の力だけとなった。

 パチン。

 先輩一人が指を鳴らすと、みんな勢ぞろいして、決めポーズを作る。

「皆、キャバクランニングに、遊びに来てね!」

 やった。正義は勝ったんだ。悪は負けたのだ。

「せんぱあい」

「ありがとうございますう、ぐすっ」

「やっ。気が抜けたら腰が抜けて、ふえーんっ!」

 そして私達三人はというと、今更恐怖と安心がガラスのハートになだれ込んできて、思わず泣いてしまった。


 その後、暴力団員達は全員、奴隷売りに奴隷として引き渡された。当然の処遇である。

 その時得たお金は一部キャバクランニングの利益となったが、半分以上はキャバ嬢全員の臨時収入となった。

「そんな、私達も臨時収入もらって、いいんですか?」

「倒せたから良かったですけど、もともとは私達が招いたアクシデントですよ?」

「今回のお金は、受け取れません」

「ウタハ、マイミ、マトバ。うちでは、討ち入りは全員で乗り込んで、全員に現金を払うっていう決まりになってるの。それに、本気モード男をあなた達が取り押さえた成果は、正しく評価するわ。捕まっちゃったのは、それでチャラ。無事終わったんだから、それでいいでしょ?」

 アンミ先輩にそう言われてしまうと、うー、なんとも言えません。

「そうですか。では、今回のおこづかいもありがたく受け取っておきます」

「私、この恩は働いて返します!」

「私もそうします!」

「よし、その意気よ。それに、町内はまだ危ないかもしれない。また隙を見せたところで捕まらないように、気をつけなさい?」

「はい!」

「よし。良い子達ね。それじゃあ明日も客引き、頑張ってね」

「はい!」

 私達は元気よく返事をして、今日の失敗を教訓にした。

 世の中には悪い人がいっぱいいる。でもそんな男どもを先輩たちのように成敗できるように、邁進しよう!

 そして立派なキャバ嬢に、私はなる!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ