3 町の中はなかなか危険
キャバクランニングに帰ってきました。
「おつかれー、三人ともー。まさか今日中につれてくるとは。つれてきたのは育ちネズミね、でかしたわ!」
アンミ先輩にそう褒めてもらえた。
「はい、私達頑張りました!」
「でも、正直客引ききついです。よければ店内業務に戻してください!」
ああ、確かにマイミの言う通りだ。同感である。
「気持ちはわかるけど、誰かがやらなきゃいけない仕事だから。汚れ仕事だと思って、諦めて?」
「はあーい」
アンミ先輩にそう言われたら、引き下がるしかない。上下関係とはそういうものなのだ。
「あ、でも、そのかわり屋外作業は成果があればその都度現金が発生するわよ。これ、今回の臨時収入ね!」
チャリーン。私達は、おこづかいを手に入れた!
「ありがとうございまーす!」
「それじゃあこの調子で、次もお願いね。あ、あとこれはアドバイスなんだけどお。客引きといっても、やっぱり効率が良いのは昼からよ。だから、宣伝も担当してお昼に働いてくれれば助かるわ」
「はあーい」
先に言ってほしいものである。
こうして私達は、夜のお仕事を改め、夜のお仕事のために昼間働くことになった。
「あ、それと先輩。夜歩いていたら、謎の人物が私達に下水道へ行けって言ってきたんですけど。ていうかそれで行く私達もどうかと思うんですけど、先輩はその人のこと知ってます?」
「ああ、彼女は裏方担当のシェイドさんよ」
「シェイドさん?」
「シェイドさんもうちの従業員で、主に連絡員を担当してくれているから、味方よ。だから、怪しまないであげて」
「はーい」
翌日。大通りで私達三人は合流する。
「よし。それじゃあ今日も客引き頑張ろう!」
「今はお店開いてないから、宣伝だけどねー」
「それでもいいじゃない。頑張りましょう。私、もっとボーナス欲しいわ」
「私も!」
「よーし、それじゃあはりきっていってみよー!」
「おー!」
私達は拳を突き上げ、そして戻す。
「さて。じゃあここを通る男性に声をかければいいのかな」
「そうだね。きっとそうに違いないね」
「三人で力を合わせれば絶対成功する。それじゃあ、いくわよ」
「待った」
その声がした方を振り向くと、そこにはいつの間にか昨夜の人物が立っていた。
「あなたは、シェイドさん!」
「先輩、おはようございます!」
「シェイドさん、おはようございます!」
「え、ええ。元気ね」
シェイドさんはそう言ってたじろぐ。本当にコミュ障なのかな?
「まあ、ともかく。君たちのレベルではまだ町内での客引きは早いよ。ここは町の外に行って、のんびり牛やふわふわ羊を相手にするのがセオリーかな」
「えー」
私達は、流石に不満をもらした。
「先輩、お言葉ですが、やはりキャバクラには男を呼ぶべきだと思います!」
「それに、牛や羊を客引きする自信がありません!」
「安全や効率を考えても、ここは町で宣伝した方が良いと思います」
「君たちがそう思うのならそうすればいいわ。それじゃあ、私は伝えたから。じゃ」
そういうとシェイドさんは、闇を呼び出して次の瞬間消えた。
「シェイドさん、かっこいい!」
「それよりマイミ、早く宣伝しようよ!」
「そうね。いきましょう」
「おー!」
こうして私達は、町内で宣伝を始めた。
「私達、キャバクランニングのキャバ嬢でーす!」
「今晩、私達とあそばなーい?」
「清く正しく、おつきあいいたします!」
マトバ、それたぶん違う。
けれど、私達の成果はかんばしくない。みんな、見てみぬふりをして通り過ぎていく。うう、世間が冷たい。
「ねえ、そこのあなた、女の子に興味なーい?」
「女の子と遊ぶと、心も晴れやかになりますよ!」
「みんなかわいいですよ。それにきれいです。あと、すっごく近くにきてくれますよ!」
マイミ、マトバ、私が全力で宣伝する。
けれど、進展なし。
ああ、これは、もしかしたらシェイドさんの言うことを聞いてた方が良かったのかなあ。
ちょっとそんな思考がよぎった時のこと。
「お嬢ちゃんら、かわいいのお!」
「はい、キャバ嬢ですから!」
「そんじゃちょっとこっち来てみい。ワイらが一緒に遊んでやらあ」
「へ?」
愛想をふりまいていたマイミの顔が固まった。
私達に興味をもったのは、ガラの悪い男三人組。
そいつらが私達に手を伸ばしてくる。
「ほら、良い店知ってるけん。ワイらが案内してやらあな」
「あっ、いやっ、ちょっと、放して!」
「なんなの、こいつ、警官、誰か警官呼んで!」
「くっ、駄目。こいつ、力が強い!」
私達はそろってつかまる。きゃあっ、これピンチ!
「警官、暴漢が現れたわ、早くなんとかして!」
「ああ、なにぬかすんじゃワレ、ちいと黙っとき!」
「きゃあ!」
ああっ、マイミが殴られた!
しかも女の子の顔を、グーで。許せない!
「よくもマイミを、放しなさい!」
「お前もうるせえぞ、黙っとき!」
「あぐっ!」
わ、私も殴られた!
そして、力任せにどこかへつれていかれる。
ど、どうしよう。このままだと私達、どうなっちゃうの?
私達は割と近くにあった屋敷に連れ込まれた。
そこで、縄で手を縛られる。両手はぶりっ子ポーズで固定。そして首に首輪をはめられ、首輪についている鎖の先は男たちが握っている。
あと、男たち、屋敷に入ったら増えた。今は三人だけじゃない。いっぱいいる。
「がははは、めんこい子らじゃのう!」
「こん娘共が遊び相手を探しとったとか!」
「こらあ楽しみがいがあるのお!」
やだ、こいつらキモい。怖い!
「うう、マイミ、マトバ、大丈夫?」
「ごめん。大丈夫じゃない」
「これも、シェイドさんのアドバイスを無視したからなのかしら」
うう。マトバの言う通りかも。
このまま私達、エロ同人誌みたいなことされちゃうの?
いや、そんなの嫌!
「助けて、誰かー!」
思わず叫んだ、その時。
「ははは、安心しろ、おまんがた。ワシら暴力団、ワルー組は警官に賄賂も贈ってるきに。助けなどこん」
「世は有情無常の大河なり」
「善あれば悪あり、正しきあれば間違いあり」
「故に我ら善を選び悪に裁きを与えん。正しく生き間違いを正さん」
「全ては正しき道を歩き正しく胸をはるがため」
「だ、誰だ!」
「正義の味方、キャバクランニングの、キャバ嬢!」
「悪しき輩にはそれだけ知れれば十分よ」
なんと、この場所に先輩たちが来てくれた! しかもいっぱい!
「助けてー、せんぱーい!」
「お願いします、私達もう少しで18禁的なことされそうなんですー!」
「先輩たち、こいつら、私達より強いです。気をつけて!」
私達は一生懸命叫んだ。
「あなた達。もう安心よ。悪しき輩はーっ、おしおきよ! とう!」
「えーい、何奴。野郎ども、かかれー!」
「おー!」
こうして、先輩たちと悪漢達との勝負が始まった。