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24 鞭修行

「前回私達は、ひどい目に遭いました」

「ガイヌ達がソニックブームしてくれなかったら、大変なことになっていたわね」

「ガイヌに感謝だな」

「うん。というわけで、これ以上強い敵とまた戦ったら、十中八九私達は勝てません。例え相手の見た目が、リス如きでも」

「まあ確かにね」

「どうする、冒険者を諦めるか?」

「う、それも一つの手に思えるけど、どう、ふたりとも。この際、頑張ってもう一段強くなってみない?」

「お、それ良い。修行ってやつ?」

「だが、どうやって強くなる。何かあてがあるのか?」

「心当たりはある。けど頼れるかはわからない」

「というと?」

「先輩たちに修行してもらおうよ」


 というわけで、キャバクランニングでアンミ先輩に相談した。

「なるほど。それで私に鞭の手ほどきをしてほしいと」

「はい。お願いできますか?」

「私達、アンミ先輩だけが頼りなんです!」

「どうかよろしくお願いします!」

「まあた調子良いこと言っちゃってー。あ、でも、鞭の扱い上手い先輩紹介してあげよっか?」

「いいんですか!」

「お願いできますか!」

「教えてくれるんですか!」

「ええ。本当はガチャで当てて出会ってほしいんだけど、まあ、今回は特別にかけあってみる」

「わーい、やたー!」

「さすが先輩、頼りになる!」

「それじゃあ、もっと頼りになる先輩を紹介してください!」

「まてまて、慌てるな後輩たち。まず私が声かけてみて、駄目だったらガチャ引いてね」

「はーい、お願いしまーす!」

 こうして私達は、キャバクランニングの中でも一際鞭が上手いキャバ嬢先輩に修行をつけてもらえるかもしれなくなった。


「お前らがアンミが言ってたやつらだな!」

「はい!」

「お願いします先輩。私達に、鞭を教えて下さい!」

「よろしくお願いします!」

「アタシはレンダ。アタシの鞭さばきを盗みたかったら、見て憶えな。ああそれと、体で憶えるってのもありかもねえ」

「え、体?」

「アタシの修行はきついよ。まずは勝負だ。その中でアタシの鞭技を盗みな!」

「はい!」

「で、誰と勝負するんですか!」

「アタシと、あんた達とだ」

「へ?」

「ほらほら、あんた達も鞭を構えて。やられっぱなしになってもいいのかい、アタシはもういくよ!」

 そう言って、レンダ先輩が鞭で足元を叩いた。

 ビシーン、バシーン!

 な、なんか鞭から衝撃波が出てる。あれ当たったら絶対やばいやつだ!

「ま、マイミ、マトバ、先輩本気っぽい!」

「マジで、可愛い後輩相手に?」

「早く構えるぞ。レンダ先輩はやる気だ!」

「ほらほらいくぞ、これが百戦錬磨の鞭よ!」

 ビシバシビシバシビシーン!

 ああ、見事に一瞬で私達が鞭で攻撃された!

「きゃあ!」

「ひゃあ!」

「うわあー!」

 な、何この鞭に打たれた衝撃。全身がしびれる、意識がもってかれる!

「す、すごい、普通の鞭じゃない!」

「な、何今の。頭の奥にまでビビビってきた!」

「何度もくらったら、足腰立たなくなりそうだ!」

「そう。アタシの鞭は打った相手の全身、更にソウルを震わせる特別な鞭さばき。いわゆるスーパー鞭攻撃よ。これを体得できれば、大抵の男を満足させることができるわ」

「こ、これがレンダ先輩のスーパーテク!」

「で、でも、私達には、無理っぽい気が」

「これができるようになるのに、一年、いや、何十年かかることになるやら」

「折角鞭を教わりたいんなら、そっちも真剣になってもらわないとね。ほら、どんどんいくわよ。昇天する前に私の技、ちょっとでもいいから盗みなさい!」

 ビシン、バシーン!

「くうう!」

「ひゃあーん!」

「あひいー!」

「ほらほらどうしたの、あなた達の鞭は飾り? 鞭は振るってなんぼよ。完全に真似できなくても、まずは振って抵抗してみなさい!」

「くうう、ごめんなさい、先輩!」

「それじゃあ、本気でいきますよ!」

「お覚悟!」

 私達も負けじと、レンダ先輩に鞭を振るう。

 けれど私達の鞭攻撃は、レンダ先輩の鞭さばきで簡単に相殺されてしまった。

「ちょろいちょろい、それじゃあただ振ってるだけよ。相手の魂まで揺さぶるために、全力以上をこめて振りなさい!」

「はい!」

 ビシン、バシーン!

「きゃー!」

 ビシン、バシーン!

「ああん!」

 ビシン、バシーン!

「ふぐうう!」

 私達のHPは、確実に削られていく。体が何度もしびれて、未知の衝撃を味わう。

 これが、先輩の力。圧倒的にかなわない、熟練の技。

 けれど、これは命をかけた戦いではない。

 それに先輩から愛情も伝わってくるから、私達は全力以上に必死になれる!

「こんな痛みに、負けない!」

「私達は、もっと高みを目指す!」

「そのために、先輩のテクをものにする!」

「その意気だ、あんた達。そら、もっと速くするよ!」

 ビシン、バシーン!

「例えどんなに痛くとも、厳しくても!」

「人を思いやる慈しみの心ある限り!」

「私達の心は、誰にも引き裂けない!」

「だから、絶対ドMにはならない!」

 私達は声を合わせて叫んで、先輩へ向けて鞭を振った。

 すると。

 ビシン、バシーン!

「おや?」

「先輩の鞭が、少しぶれた!」

「私達の鞭が、先輩の鞭に効いたんだ!」

「確実に、一歩くらい、私達は前進できている、上達している!」

「どうやら、アタシの鞭を体に教え込んだかいがあったようだね。体に受けた衝撃が、鞭で再現できるようになってきたんだ」

 なんと、本当にそんなことが!

 でもこれ以上は、正直やられたくない!

「先輩、私達の全力、受け取ってください!」

「ていうか先輩が止まらないから、私達も止まれないです!」

「先輩が容赦ない以上、こちらも本気でいくしかありません!」

「おお、やってみろひよっこ共。ちょっと上達したくらいで良い気になるなよ。あんたらの鞭はまだまだ甘っちょろいんだからな!」

 こうして私達は、レンダ先輩のスパルタ修行をこなした。

 その3日後。

「はあ、はあ、はあ」

「よし、なんとか様になってはきたな。まあ修行前よりは強くなってるはずさ」

「あ、ありがとうございまーす」

「で、でも、今はちょっと休憩」

「強くなれてたとしても、今は喜ぶ余裕がない」

「それじゃあこれから必殺技教えるから。今回もわかりやすく体で覚えさせてやるからな」

「えっ」

「そおら、いくぜ!」

「ちょっと待ってくださーい!」

 私達は半泣きになりながらも修行を続けた。

 ううう。もうレンダ先輩には、修行してなんて言わないようにしよう。


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