19 虫の加護
「結局私達は、冒険者としても頑張らなくてはならない運命!」
「そうだ、そのとおり!」
「不本意だがな」
「だけど、幸い私達は冒険者としても上手くやれている!」
「そう、なぜか!」
「驚くべきことにな」
「ならば、今日も張り切って冒険者やろうじゃないか!」
「異議なし!」
「それが今の私達の仕事だから、仕方ないな」
「というわけで、今日も元気に冒険者やろー!」
「おー!」
と意気込みを新たにしたところで、私達は冒険者ギルドに入っていった。
「アーミットー、今日はスライム討伐やりまーす」
「ああ、おはよう。キャバクランニングエンジェルス。丁度良かったわ。この前良い忘れてたけど、あなた達の依頼達成度が一定値を上回ったから、これからは2ランクの依頼も受けられるわ。ただ、2ランクに☆マークがついてる依頼は選ばないでね。上位のクエストって意味だから」
「じゃあスライム討伐やめまーす!」
マイミがあっさり依頼書を手元に引いた!
「2ランクの依頼を見てくる」
「はい。皆、頑張ってね!」
「はい!」
こうして私達は、冒険者としての実力が少しだけ認められたのだった。
今回私達が受けた依頼は、草玉5つの納品。
草玉は、町を出て南にある森、南の森に生息するクサハミ虫が体内に作るものらしい。
そんな物を取るなんてえ。とも思ったんだけど。
「あ、草玉って確かきれいなんだよね?」
「あー。あのネックレスとかによくついてるやつ」
「それを手に入れる仕事か。なら、これでいいんじゃないか?」
という感じで、そうなった。
ただ、ここで予期せぬ事態が私達に襲いかかる。
「よーし、南の森についたぞー!」
「おー!」
「けど今はもう夕方だー!」
「おー!」
「帰りはどうする?」
「おー、おー、どうしよおー」
ちょっと思ったよりも、南の森までが遠かったのである。
「これってもう絶対野宿確定だよね?」
「いや、野宿は嫌!」
「では夜になってもあるき続けるか」
「それも嫌ー」
森まで来たのはいいけれど、私達のテンションはだだ下がりだった。
「とにかく、まずはクサハミ虫を見つけよう!」
「まあ、それが目的だしねえ」
「さて、どこにいるのか」
そう言って私達が見回した、その時。
ガサガサ。
すぐ目の前にクサハミ虫が現れた!
それも五匹!
「クサハミ虫いたー!」
「よーし、それじゃあ倒そうー!」
「よし、いくぞ!」
私達は鞭を構えて、いざ勝負!
「それ、ごめんなさーい!」
「えーい、ヒートアーップ!」
「虫だろうが容赦はしない!」
三人で鞭を振るい、容赦なくクサハミ虫を攻撃する!
けれど、クサハミ虫にはあまり効いてないようだ!
「な、なんかダメージ通ってる感じがしない!」
「うぬう、なかなかやる!」
「私達よりも、強いというのか?」
そして、クサハミ虫達の攻撃!
「うっ!」
「わっ!」
「きゃあ!」
私達は結構なダメージを受けた!
「うう、このままだとまずい!」
「なんとかしなきゃ!」
「だが鞭では勝てん!」
「だったら魔法を使えば!」
「おっしゃあ!」
「やめておけ。マイミの火魔法では火事になるおそれがある。かといって私とウタハの水魔法と木魔法がどこまで通用するか」
「それじゃあ、もしかして私達、打つ手なしー!」
「そんなー、久しぶりにピンチ!」
「いや、普通に勝負して勝てないなら、接客バトルで勝てばいい。いつものようにやるぞ、ふたりとも!」
「ううっ、相手は虫だけど、しょうがない、やるしかない!」
「こうなったら、やってやらー!」
「誘惑攻撃!」
「誘惑攻撃!」
「誘惑攻撃!」
おっ、クサハミ虫に効いてる!
「おしゃべり攻撃、って、効くのかな?」
「とにかくやってみよう、おしゃべり攻撃!」
「私も合わせる。おしゃべり攻撃!」
すると。
どーん! クサハミ虫達は倒れた!
「やったあ!」
「なんとかなったあ!」
「まさか本当に勝てるとは」
「それじゃあ後は、草玉を手に入れるだけだね!」
「クサハミ虫達、私達に草玉を貢げー!」
するとクサハミ虫達は、草玉を5つくれた!
「やったー、依頼達成ー!」
「おっしゃー、後は帰るだけだー!」
「む、クサハミ虫達が、まだ何か私達に用があるようだぞ」
「え、ほんと?」
すると私の中に、スキルが芽生えたのを感じた。
「これは、虫の加護?」
「え、これもくれるの、ありがとう!」
「よし。それでは最後に」
「皆、キャバクランニングに遊びに来てね!」
こうして、初の2ランク依頼も後は納品するのみとなった。
だけど。
「ううー、こんな真夜中帰ることになるとは」
「仕方ないよ。距離的に遠かったんだから」
「次からは、野営の準備もしておこう」
「そうだね。保存食もいるかも」
「あー、早くシャワー浴びたいー!」
私達は今日、冒険者の大変さを改めて思い知ったのだった。




