18 お見合い再び
今日はキャバクランニングで定時連絡した後、アンミ先輩にこう言われた。
「あ、そうだ。今日、あなた達のおかげでゲットしたお客様達を、お見合いも兼ねながら接客するの。だから今晩は、久しぶりに中で仕事する?」
「え?」
三人そろって困惑する。
「それは光栄ですけど、お客様って誰ですか?」
「第三兵団の皆さんよ」
「あー」
結局皆さん、キャバ嬢に興味あったのかー。
「じゃあ、やります!」
「久しぶりに肉体労働以外が良いでーす!」
「精一杯、がんばります!」
「はい、じゃあよろしく。あと、第三兵団の皆さんはマジで結婚のこと考えてくるらしいから、気になる人がいたらアタックして良いわよ」
「はあーい」
というわけで、今晩は久しぶりに店内で働くことになった。
これを機にまた中で仕事できるようになったらいいなー。
そして夜。
「皆、兵士の皆さんが遊びにきてくれたわよ!」
「はい!」
私達含む数十人のキャバ嬢が、早速仕事モードになる。
「ウタハ達はそのパーティで接客してね」
「はい!」
言われた通りにマイミとマトバと一緒にいって、呼ばれた席に行く。
するとそこには、20と少しくらいの年齢の、なかなか良物件っぽい男3人がいた。
「皆さん、こんばんはー!」
「キャバクランニングへようこそー!」
「今日はよろしくお願いする」
「は、はいっ!」
「こ、こちらこそ、よろしく!」
「は、初めまして!」
三人とも緊張してる。これは扱いやすい。
「私、ウタハです!」
「私は、マイミです!」
「私は、マトバだ」
「お、俺はライズ」
「俺はエメン」
「俺はブレッダだ」
「今日はいーっぱい、楽しんでくださいね!」
「あ、ああ」
「それじゃあまずは、ドリンク攻撃ー!」
私達はスムーズに接客バトルに入り、すぐに相手を昇天させることに成功した。
「ううう」
相手三人は脱力しきって、頭を回している。もう正気を保ってはいなさそうだ。
「お客さん、結構簡単に出来上がっちゃったね」
「私達のキャバ力が上がってるってことかな?」
「そうかもしれないな」
じゃあ、このまま相手はお帰りになる流れかな?
「なあ、ウタハちゃん」
するとここで、ライズさんが頭をかくんかくん揺らしながら私の名前を呼んだ。
「なんですか、ライズさん?」
「ウタハちゃんは、結婚ろか、考えれるー?」
「んー、考えてますけど、今はどっちかっていうと、仕事の方に燃えてます!」
「き、奇遇らねー。俺もそうなんらよー」
相手は完全に酔っ払ってるけど、でもこれくらいのからみ度なら平気かな。
「マイミちゃんは、強い男は好きい?」
「うん。私、強くてかっこよくてお金持ちな男が好き!」
「ら、らったら、俺なんてどう? 俺も、強いし、なかなかかっこいいし、お金も、もっと稼ぐからさあ」
「んー、もっと貢いでくれたら考えてあげる!」
「マトバちゃんは、俺みたいな男、好きかなあ?」
「ええ、とても好きですよ」
「えへへ、そーお? じゃあ、付き合ってみない?」
「これを飲んでくれたら考えてあげます」
ライズ、エメン、ブレッダさん達は、昇天しながらも私達に食らいついてくる。
ちょろかったが、なかなか沈まないタフな人達だ。仕事時間じゃなければ、もうちょっと興味もってたかなー。ま、でもあんまり知らない人とは、やっぱりお近づきにはなれないけどね。
「俺、いっぱい彼女に尽くすからさー、どうか付き合ってよ!」
「マイミちゃん、俺マイミちゃんみたいな彼女がいてくれたら幸せらなあー。試しに付き合ってくれない?」
「これ飲めば、マトバちゃん付き合ってくれるの? ごく、ごく、ごく」
なんか、彼らは今執念だけで動いている気がする。そんなに彼女作りに飢えているのか。
私はマイミ、マトバとアイコンタクトで意思疎通を図った。
マイミ、マトバ、どう? 彼ら、すっごく彼女作りたがってるけど。
んー。顔と歳はまあまあだけど、有望株かはわかんないんだよねー。来店して一回で彼女になってあげるのも尻軽すぎるし、ここは見送りでいいんじゃない?
そうだな。ここはこのままお帰りになってもらおう。やはり彼氏は、もっと熱意と愛を見せてもらってから作りたい。
私達はうなずく。これで私達の心は決まった。彼らの誘いは、今のところスルーすべきだ。
「ウタハちゃーん」
「マイミちゃーん」
「マトバちゃーん」
三人がゾンビのように近づいてくる。だから私達はここで、必殺技を決める!
「とっておき、ニューチャームスマイル!」
「とっておき、ファインフォルテッシモ!」
「とっておき、清楚トレビアンヌ!」
「うーわー!」
私達の攻撃を受けたライズ、エメン、ブレッダさんは、今度こそソファに沈んだ!
「ふう。今日はこれでよし!」
「久しぶりの店内接客、楽しかった!」
「後は彼らを店の前に放り捨てるだけだな」
「あとこれも言っておこう。せーの」
「皆、キャバクランニングに、また、遊びに来てね!」
その後、他の兵士さん達も先輩の接客で完全ノックアウトして、全員店の前に捨てられた。
皆、戦場では強くても、女の子には激弱だったみたい。
その後も他の客を接客して、一日の業務を無事終了。
「ウタハ、マイミ、マトバ。今日はお疲れ様」
「あ、アンミ先輩、お疲れ様です!」
「ええ。今日はよくやってくれたわ。接客バトルも上手くやれている。進歩してるわね」
「ありがとうございます!」
「でも、明日からまた外営業に戻ってね」
「うう、はい」
「やっぱりそうなるんですかー?」
「わかりました」
「シェイドさんの報告によると、あなた達の冒険者としての評判が結構良いのよ」
「えっ」
「なので、このまま冒険者も続けてね。じゃないともったいないでしょ?」
「そんな、そんな理由で?」
「私達外行きなんですか?」
「なあに、不満? じゃあ、今日も頑張ってくれたし、臨時ボーナス出してあげる」
「わーい、ありがとうございまーす!」
「私達、もっとがんばります!」
「喜んでお受け取りいたします!」
私達は、なんだかんだ現金な女なのだった。
まる。




