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1 キャバ嬢チュートリアル

「ウタハ・コイノリ。今日からあなたはこの、キャバクランニングのキャバ嬢よ。よろしくね」

「はい、よろしくお願いします!」

 私、ウタハはキャバクランニングの先輩キャバ嬢、アンミ・スヤーン先輩に元気よく返事をした。

「それでは今から接客をおこなう。でも、その前にもう一人、仲間が必要ね」

「え、接客って一人でやるんじゃないんですか?」

「ここはキャバクランニングよ。接客は三人以上でおこなうわ」

「はい、わかりましたアンミ先輩!」

「ちなみに、隣のホストクラブ、ホストランニングも大体同じ感じだから、注意してね」

「はい!」

「で、3人目だけど。マイミ・ラクール、来なさい」

「はーい!」

 すぐに私の目の前に、元気いっぱいの女の子がやって来た!

「呼びましたか、アンミ先輩?」

「ええ。ウタハ、マイミ、あなた達は新米仲間よ。上手く連携して接客してね」

「はい!」

「はい!」

「では、もうお客様が待ってるわ。行くわよ」

 ドキドキ。私もキャバ嬢ライフスタートかあ。上手くやれるかな?


 接客相手はスライムでした。

「プルプル」

「アンミ先輩、相手は液体です。人ですらありません!」

「これ本当にお客ですか!」

「キャバクランニングではこれが普通よ。さあ、ふたりとも身構えて。戦闘を始めるわよ!」

 アンミ先輩は私達の動揺を軽く流して、半身の構えをとった。

「戦闘って、キャバクラで?」

「アンミ先輩、ちょっとタンマです!」

「相手は待ってはくれないわ。ふたりとも、まずは目の前の選択肢を見て」

「選択肢?」

 私は慌てて前方を確認する。すると確かに目の前に、誘惑、ドリンク、おしゃべりの3つの選択肢があった。

「誘惑、ドリンク、おしゃべり。この3つの攻撃のどれかをおこなうのよ。それで相手にダメージを与え、HPを0にするのよ」

「そうなんですか、アンミ先輩!」

「そうよ」

「これがキャバクラ。まさに新世界!」

 私もマイミも戦慄している。けど初めての接客、上手くやらなきゃ!

「あ、アンミ先輩。よく見ると選択肢の下に、威力2、満足1、気合3って書いてあります。あ、どの選択肢の下の数値も若干違う!」

「それがあなたの攻撃の詳細よ。よく見て判断してちょうだいね」

「じゃあ私これにする!」

 マイミはおしゃべりを選択した。すると目の前にある四角の枠内に、マイミの顔とおしゃべりの選択肢が入る。

「選んだ選択肢は決定枠の中に入るの。3つ揃えたら順番を入れ替えた後、枠隣の決定ボタンを押せば攻撃が始まるわ。さあ、ウタハ。あなたも選んで」

「はい!」

 私は直感で、ドリンクを選ぶ。

「じゃあ私はこれで」

 アンミ先輩は誘惑を選んだ。すると選んだ3つの選択肢に、プラス10%という表示が追加される。

「3種類の選択肢を選んだら威力にボーナスがかかるの。2つ同種の攻撃を選んだら、その2つに10%。3つ同じ選択肢を選んでも全部に10%ボーナスが得られるわ」

「なるほど。要するにオトクなサービスが追加されるというわけですね!」

「そういうことよ。それじゃあ攻撃を始めましょうか」

 あ、目の前の決定ボタンが白く光った!

「まずは私の番。あなた素敵、プルプルしててかわいいね!」

 マイミがそう言うと、スライムがダメージを受けた。

「今度は私ね!」

 私は、えーっと、ドリンクだから。

 あ、自分の手にビールジョッキが現れた!

「お客様、どうぞ!」

 ビールをスライムに投げると、更にスライムがダメージを受ける!

「次は私の誘惑ね。うふん、あはん」

 アンミ先輩が悩殺ポーズをとると、スライムは更にダメージを受けた!

 よし。この調子ならスライムを倒せる!

「プルプル!」

 ああ、スライムが私を攻撃してきた!

「ひゃああ!」

「う、ウタハ!」

「安心しなさい、ウタハ、マイミ。これはお客様のお触りよ。相手はこうやって反撃してくるわ。くらいすぎには注意してね」

「はい!」

「はい!」

「そして今のダメージのヘリ具合から察するに、スライムはおしゃべり攻撃に弱いわ。こういう場合、おしゃべりを選んで集中攻撃するのも手よ」

「はい!」

「はい!」

「さあ、次のターンね。ふたりとも、おしゃべりを選んで」

 私達は言われた通り、おしゃべりを選択する。アンミ先輩もおしゃべりを選んだ。そして攻撃。

「お、お客様といると、なんだか緊張しますっ」

「あなた素敵、プルプルしててかわいいね!」

「ねえ、朝までおしゃべりしましょ?」

 私とマイミとアンミ先輩のおしゃべり攻撃で、スライムのHPが大きく減った!

「やった、やりましたアンミ先輩!」

「いいえ、まだよ。それに同じ種類の攻撃をし続けていると、相手は満足してしまう。満足、または超満足している相手に、同じ種類の攻撃をしても与えるダメージが減ってしまうわ。もし相手を満足させてしまった場合、他の種類の攻撃をするのも手よ」

「はい、わかりました!」

「つまり次の攻撃は、おしゃべり以外がいいんですね!」

「プルプル!」

 わあっ、スライムが粘液をとばしてきた!

 おかげでマイミがベトベトだ。攻撃力もダウン!

「うへえ、先輩、これダメすぎい!」

「おちついて、マイミ。それは相手の特技よ。お客様はそうやって特技を披露してくるから、注意して」

「はい!」

「はい!」

「さて、それでは今度はとっておきの披露よ。皆、今まで攻撃して、気合を増やしてきたわね。その気合を使って、とっておきを使うわ。足りない気合は、今ここで補填する」

 アンミ先輩がそう言って指を鳴らすと、私達の気合が増え、新たな選択肢が現れた。

「これを選べばいいんですね!」

「ええ、そうよ」

「えい!」

「それ!」

 気合を消費して使うとっておき。これならきっと、お客様もイチコロだ!

 私のとっておき、ニューチャームスマイル!

「えへへ。あなたにい、会いたかった!」

 スライムに大ダメージ!

 そして次は、マイミのファインフォルテッシモ!

「私に注目。目をそらしちゃ、ダメだぞ!」

 ウインク一発で、スライムに大ダメージ!

 そして最後に、アンミ先輩のディープヒートブレス!

「私に夢中になってくれたら、もっとサービスしてあげるっ」

 更にスライムに、大ダメージ!

 これでスライムは倒れた!

「わーい、やったー倒したー!」

「すごい、これでいいんですか、アンミ先輩!」

「ええ。相手は悩殺されて、昇天した。これがキャバ嬢の仕事よ」

「わーい!」

「わーい!」

「ふたりとも、初めてにしては上出来よ。これからもこの調子で頑張ってね」

「はい!」

「はい!」

「それと、仲間を増やしたい時は、出会いガチャで新キャバ嬢を引いてね」

「はい!」

「はい!」

「それでは続けてもう1仕事、しましょうか」

「はい!」

「はい!」

 どうやらキャバ嬢の仕事、上手くやっていけそう。

 この調子で頑張ろう!




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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いです! [一言] 追って参りますので、頑張ってください!!!
2023/05/20 10:51 退会済み
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