紅姫
「あァ~・・・あっつ・・・・」
ォニュウの下敷きで汗を仰ぎながら、私はボソッと呟いた。
言うなり、すぐ横に荒木がちょこんと移動してきた。
「俺にも。」
「は??」
『俺にも』という言葉だけで私はドキドキしてしまっていた。
「・・・・・」
沈黙のまま、私は下敷きで自分の顔を仰ぎながら、たまに荒木の顔も仰いであげた。
「あァァ~・・・気持ちぇー」
目が細い荒木は、とても可愛い目で涼んでいた。
私はそれがどうしようもなく可愛かった、のか、思わず口に出してしまった。
「・・・・かわい」
「おめぇよりはな」
と、にやッとしながら奴は笑った。
「何それwうざー(笑)」
「本当の事を言ったまでだ。んじゃバイなら」
と、いうなり、あいつはさっさと男子の塊の連中の輪に入って行った。
(良い顔して笑うんだなァ・・・・)
なんて思いながら、ボーッと荒木を見つめていた。
すると。
「なァーえぐっつァんー。何こっちじろじろ見てんだ??」
輪の中心にいた「だいちゃん」が顔を傾げた。
山崎大輔。
私の保育園からの幼なじみで、よく一緒に遊んだ覚えがあった。
そして、小学校で別れ、こうしてまた戻ってきたってわけ。
そしてこのだいちゃんは私のモと彼。
中学入りたての頃、向こうから告白された。
そしてまだデートもしてくれずのあいつに私は別れを告げたという、とってもつまらない恋愛をした。
今はもう好きでない・・・というと、好きになれない。
だって今この恋愛と向き合っていきたいから。
だいちゃんとすごしたみたいな恋愛はもうしない。
と、私は別れを告げたとき真っ先に決めたんだ。
でもそうなったからって、友達というごく普通の関係で、過ごしていた。
「アッ・・・え?別に・・・」
と、私は口ごもってしまった。
「荒木を見つめてたんだよ」
なーんて言えるわけがないだろうw
「ププ。おめぇ颯馬のこと見つめてたろ」
バレタ、ヤバィ。
「は!?んなわけないっしょ!?そういうだいちゃんは、今日テストあること知ってんの?ベンキョしてないでしょ~!?」
と、私はばればれの動揺ぶりで、でもこれが精一杯で、だいちゃんの嫌いな教科の英語の話題にすり替えた。
「ァッ!!!!!!!!やっべw俺0点取ったらまぢかーちゃんに暴力くらうw」
美味くハマってくれたおバカなだいちゃんに、感謝。
危なかった。
私は思わずため息をつくと、無言で廊下に足を運び、窓の外をぼーっと眺めることにした。
野球の部活の男子達が、勢いよくバットの素振りをしている横で、テニス部がランニングをしている。
荒木は、部活的に運動系は好きじゃないみたいだ。
無論。
私も運動神経0。といっても、荒木はそこそこ運動神経はいい方なのだ。
それが、私の苦しい時間が増えたひとつなのかもしれない。
運動が嫌いだから文化部の私と、運動できるのに運動嫌いな文化部が、私と荒木を科学部に導いた。
意外に実験はあまりしないみたいなので、私は一安心した。
いつもはPC。みんなもくもくとキーボードを打ちまくる。
そして、だいちゃんも果歩も偶然的に科学部。なんだこの不安定なメンバーは。
同じ部活になることで、たいていの人はラッキーなんて思ったりするだろう。
だが、私は違った。
『苦しい時間』が増えるだけ、と、思う。今でも、思う。どうせ変わらない運命なのだから、どうせかなわない運命なのだからと、今の私は背を向けている。そうしたら、いつまでもあいつを見つめてしまうから。目の釘になってしまうから。見つめるだけでよかった、なんて思った私がいけなかったんだ。
と、ふいに、荒木が私の隣に立った。
心臓がまひりそう。なんでくんの。
みたいなことを口々に心の中で思いながら私は冗談でいった。
「・・・・何。うち一人だからチャンス見計らって告白しようってわけ」
と、にやにやと呟いた。
「は!?ちげーーーーーよw」
頭をがくっと下に落とし顔を染めて笑っていた。
「図星ですか。いいよ。きいたげるw」
私はアホ顔しながら耳をつまんで伸ばした。
「誤解だ」
つぼにはまって笑いながら言われた。
「今日部活来る?って聞きに来ただけじゃッ」
と、変な声をする荒木。
「あ、そんなに来てほしいなら来てあげてもいいけど」
「お前誤解最強」
「そりゃどうも^^」
と、いうと、笑いながらあいつは去って行った。
私はどちらかというと、こんなキャラ。
もじもじなんてしてられない。ッて感じかもしれない。
なんか中途半端に終わってしましましたね。続きは明日書こうかな