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第4話:ルーク様の病名が分かりました

公爵家に着くと、早速部屋に案内された。どうやら客間の様で、かなり立派だ。こんな立派な部屋に、私が住んでもいいのかしら?そう思いつつも、与えられたものは有難く使わせて頂く事にした。


有難い事に、医学書も全部運んでもらった。早速医学書を読もうと思った時だった。


コンコン

「失礼します。今日からセリーナ先生のお世話をさせて頂く、ミレアと申します。どうぞよろしくお願いいたします」


わざわざ私にメイドまで付けてくれるなんて!まさに至れり尽くせりね。


「こちらこそよろしくね。ミレア」


ミレアは茶色い髪に茶色い瞳の可愛らしい女性だ。多分、同い年ぐらいだろう。早速ミレアが紅茶を入れてくれた。紅茶を飲みながら、医学書を開く。


緑の湿疹がで出るだなんて、そんな病気聞いたことも無いわ。きっとこの国の病気ではないわよね。そう思い、他国の病気に関する資料を片っ端から読み漁る。


あった!コレだわ!さっそく病気に関する記述を徹底的に読み漁り、メモしていく。なるほど、残念ながら治療薬は無いのか。あっ、でも…


その時だった。

「キャーお止めください。お坊ちゃま、お止めください!」


メイドの叫び声と、ガチャーンというお皿の様な物が割れる音が聞こえた。


「止めて、ルーク!」


夫人の声も聞こえる。一体どうしたのかしら?


廊下に出ると、メイドが廊下で座り込んでいた。どうやら、食べ物を投げつけられた様で、スープの具材の様な物が飛び散っている。


「あなた、大丈夫?火傷をしているわ。すぐに治療をするわね。ヒール」


急いでメイドの治療を行った。


「ありがとうございます。セリーナ先生」


涙を流してお礼を言うメイド。それよりも、これは一体何の騒ぎなのかしら?ふと部屋の中を見る。


「僕に近づくな!どうせ緑色の気持ち悪い奴だと思っているのだろう?」


どうやら私の隣の部屋は、令息の部屋だったようだ。そして、相変わらず叫んでいる。


「一体どうされたのですか?」


私が部屋に入ると、手袋をしたメイド数人が震えていた。側には夫人もいる。


「セリーナ先生。メイドたちが食事を与えようとしたら、ルークが急に暴れ出したの」


この令息はルーク様というのね。


「ルーク様、一体何が気に入らないのですか?そもそも、食べ物を粗末にしてはいけません!」


「うるさい!僕に文句を言う暇があるなら、さっさと治してくれ!早く治さないと、あんたにも移るぞ!僕に素手で触ったのだからな!」


そう叫ぶルーク様。


「あなたの病名が分かりましたよ。あなたは、アメージェーンという寄生虫に取りつかれている様です。主に温暖な地域に生息するアメージェーンは、人間の体内に入り込むと、その人間の栄養を吸い取り徐々に衰弱させていくのです。緑色の湿疹は、アメージェーンが寄生している証拠。この病気は、アメージェーンが寄生した食べ物を介してのみ感染する為、人から人には移りません!だから、いくらあなたにこうやって触れても、感染する事は無いのです!!」


そう言って、ルーク様の手をギューッと握った。


「それよりも夫人、この寄生虫は主メショール王国に多く生息している様です。ルーク様が高熱を出す前、メショール王国の食べ物を食べたりしましたか?」


「そう言えば、珍しい果物が手に入ったからと、それを食卓に出した様な…それを物凄くルークが気に入ったから、私たちの分も与えたの」


「多分原因はそれですね」


ふとメイドが持っている食事に目が付いた。


「これはルーク様のお食事ですか?」


「はい、そうでございます」


なるほど。これでは治らないわ!


「アメージェーンの好物は甘い果物です。果物をたくさん食べると、アメージェーンは増殖しますので、完治するまでは果物はお控えください。逆に魚類に含まれるDHAやEPAはアメージェーンの細胞を破壊する働きがありますので、積極的に摂取してください」


「なんだって、僕は果物が大好物なんだ!それに魚は嫌いだ!」


「そんな我が儘を言っていては治りませんよ!早く治したいなら、好き嫌い言わずにお食べください!そもそも、この病気はこの国には存在しませんが、医学書を少し読めばすぐに分かる病気です。大病院の治癒師たちは何をしていたのですか?」


「そんな事、僕に言われても知らないよ!」


それはそうよね。つい興奮してしまったわ。だから大病院の治癒師は嫌なのよ。大方、治癒力で治す事しか頭になかったのでしょうね。本当に、プライドだけは一人前なんだから!


「とにかく、魚メインの料理を作りなおしてもらえますか?」


メイドに指示を出した。それにしても、随分と派手に暴れたものね…


「ルーク様のパジャマにもスープが付いていますよ。早く着替えを!」


私の指示で、急いで新しいパジャマを持ってくるメイドたち。


「どうしてまだ手袋をしているのですか?先ほど言いましたよね。この病気は移らないと」


「ですが…」


バツの悪そうな顔をしているメイドたち。


「たとえ移らなくても、気持ち悪いから素手で触りたくはないのだよ。こいつらは!」


そう言ってメイドたちを睨みつけるルーク様。なるほど。でも、それはルーク様に失礼よね。


「わかりました。では私がルーク様のお着替えのお手伝いをいたしましょう」


早速汚れてしまったルーク様の服を着替えさせる。正直、寝たきりの人の着替えなんてしたことが無いが、まあ、何とかなるだろう。


「お前は僕が気持ち悪くないのか?」


「どうして気持ち悪いのですか?あなたは病人です。病人を気持ち悪いと思った事は、一度もありません!ほら、話してる暇があるなら、あなたも少しは自分で動いてください。少しは動けるでしょう!」


15歳の男性を1人で着替えさせるのは一苦労。何とか着替え終わらせた時には、既に汗だくだ!


ちょうど着替えが終わったタイミングで、食事が運ばれてきた。私が言った通り、魚料理が並んでいる。


「さあ、次はお食事です。文句を言わずに食べるのですよ!」


ルーク様の前に料理を並べた。


「おい、魚料理ばかりじゃないか!こんなもの…」


「文句を言わずに食べる!」


有無も言わさず、ルーク様の口に押し込んだ。


「おい、何を…」


さらに口に押し込んでいく。最初は文句を言っていたが、なんだかんだで全て食べてくれた。


「全て食べられましたね、えらいえらい」


全て食べ終わったルーク様の頭を撫でると


「子ども扱いするな!」


そう言って、手を振り払われてしまった。いけないわ!つい弟や妹と同じ様な扱いをしてしまった。


「とにかく、これからも好き嫌いをせずに食べてくださいね!いいですか?明日また治療に来ますから!」


そう言うと、部屋から出て自室へと戻った。

とにかく病名が分かってよかった。これで何とか治せそうね。

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