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CORRECTORS ~生きた異物~  作者: 新楽岡高
第七章 アメリカン・ロビン=フッド㊤
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第二話 散弾銃バンバン!⑧

 パシン、と左掌に右拳をぶつけながら俺は“ノクス”の二人を睨み付ける。

「どうにか出来る見込みがあるからこそ、俺はこの場にたった一人で乗り込んだんだ。一人しかいないからって甘く見たら、ボコボコにしてやるぞ?」

「「……!」」

 好戦的な笑みと自信満々と言わんばかりに胸を張ってそう言ってやれば、僅かでも敵に動揺が走った様に見えた。

 実のところを言えば先程受けた電撃のせいで一部筋肉が痙攣したりしていたのだが、敵相手にそんな弱みを見せる道理はなかった。

「お前らが追ってた能力者が逃げ切るまでの時間を稼くか、或いはお前らを全滅させるか。こりゃ、どっちを達成するにも余裕だな」

「……ふん、自信たっぷりと構えているのは勝手だが、物事はお前みたいな小僧の思惑通りに運ぶとは限らないんだぞ」

「んなこたぁ知ってるよ。でも、幾ら強がったところで今は俺の方が優位……」

 そこまで言いかけたところで、俺は徐々に迫ってくるパトカーのサイレンの音に気付く。

 それは、これまでも散々聞き慣れて来ただけに、この状況で聞き間違える筈もないもので。

 俺と同じ様にその音を耳にしていた“レーヴェ”は、こちらを嘲るように笑って見せるのだった。

「……誰の方が優位なんだって?」

「余計なモンを呼びやがって……無関係な人間を巻き込む気か!?」

「おいおい、無関係とは言い過ぎじゃないか? この国の警察は治安を守る為にあるんだ。なら、争いごとを取り締まるのも当然の話だ」

「都合の良いように利用しやがって……まあいい。時間的は十分稼げただろうしな」

 そこで一度言葉を切ってから、俺は耳につけっぱなしにしていた無線イヤホンに指を押し当てる。先程、弱くない電流が流れたと思ったのだが、幸いにも無事だったらしい。オーバンによって色々と耐用処理が施されている事が奏功したのだろう。

「……って訳で、撤退する。戦果としても充分だろ?」

『ああ。ただ、追われていた人物の身柄を直接組へと移送できないのは心残りだが……』

 この瞬間まで、黙ってこちらの状況に耳を傾けていたらしい父は、その事だけが名残惜しそうだった。

「しょうがねえだろ、追手を全滅させたならいざ知らず、俺はあの男を逃がす為に殿(しんがり)にならざるを得なかったんだ。こんな状況じゃ連行なんざ夢のまた夢だ」

『分かっているとも。しかしあの男、ちゃんとウチを訪ねてくれるだろうか?』

「難しいんじゃねえ? 何せ、一回我が家に忍び込んで痛い目見てるんだ。かなりの事が起こらない限り、百鬼組(ウチ)の門を叩く事はないだろうさ」

 そうなるのも無理はないだけの仕打ちをあの男は受けたのだ。そもそも、泥棒なんて真似をしていなければ済んだ話なのだが、それについて論じたところで後の祭りでしかない。

「何だ、百鬼(なきり) 護。ここに来て撤退するのか?」

「むしろこの期に及んで撤退しなかったら馬鹿すぎんだろ。お前らをそんな無理してまで撃破してやる必要も今は無いしな」

「けっ、大層な口を利きやがって」

「どうとでも言えば? 何にしろ、今日は俺らの勝ちって事で――……」

 視界の隅で、何かが動く。

 もう動くまいと、脅威ではないと思っていた者が動き、その両手に二丁の拳銃を持っていて。

「――っ!!」

 銃声。

 少し遅れて、乾いた地面に血が(したた)った。

「ちっ」

 灼ける様な痛みが、右の太腿を埋め尽くす。

 鈍痛の波は止む事を知らず、じわじわ、じわじわと俺の全身へ波及して思考すらも(さいな)む。立っているのも辛くて、俺は右足を抱えて(うずくま)っていたのだった。

「ははははははっ、良くやっぜヘンリぃー!」

「……偶々だ。偶々、糞生意気な小僧が気に入らなくて、上手い具合に当たっただけ。お前らの為じゃねえ」

「だとしても上出来だよ。さ、ここの警察が現着する前に身を隠しとけ。後で回収には向かってやるからよ。お前らは絶対に見つかるんじゃねえぞ」

「……了解した」

 満足そうな“エーデルシュタイン”の指示に従って、ヘンリーとローダの二名はこの場を後にして行く。

 その二人の背中を見送りながら、俺は己の判断の甘さを悔いる。

「まさか、拳銃を持ってやがった……全く使う気配がなかったし、この距離から拳銃を当ててくるなんて」

「あーあー、無様だな。もうじき警察も到着する。そうなればお前の身柄は確保だ。その足じゃ、幾ら体を強化しようとも機動力に限界があるんだろ?」

『護!? まさか撃たれたのか? 傷は、どこを撃たれた!?』

 “エーデルシュタイン”が嘲笑い、耳元ではこちらの安否を気遣う父の声が鼓膜を揺らす。

 しかし、額から嫌な汗を噴き出させる今の俺には、それぞれへ返す言葉もなくて、溢れ出てくる血を手で押さえる事にばかり気を取られていた。


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