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CORRECTORS ~生きた異物~  作者: 新楽岡高
第一章 憎しみの焔
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第二話 炎の恐怖⑥

今回も短いです。手抜きとかではないのでご容赦を……。


◆◇◆



「……今日もですか、例の不審火」

「もう四日連続だな。俺達警察が何も出来ないと思って、犯人も気が大きくなったのか……」

「だとしても、昨日と今日のは洒落になりませんよ? 昨日は住宅一棟が全焼、幸いにも居住していた一家は全員無事でしたが……今日なんてこんな住宅街で派手な放火です。誰がどう見たって只ならぬ事が起きたのは一目瞭然ですからね」

 松ヶ崎警察署の警官は、誰もがまた頭を抱えていた。

 それもそうだろう、警察の捜査を掻い潜り、そして嘲笑う様に派手な放火が行われたのだ。頭痛の一つも覚えたくなるものである。

 火事の通報から一夜明けて、現場に入った警部補かつ係長――吉門(よしかど)は惨状に顔を(しか)めた。

「こりゃ、通報当初に掛けつけた奴らはもっと大変だったろうな」

「でしょうね。消防官も、警官も……これで死傷者が住人含め誰一人として出なかったのは奇跡です」

 焦げたアスファルトの路面は変形し、炭化した植え込みや焦げた家の塀、壁などはあちこちで見られる。

 詰めかけたマスコミは当初に比べたら明らかにその数を増していて、中には全国中継と思しきカメラまで見受けられる。

 あの女性キャスターはニュースで見たことあるなと思いながら、吉門は部下を引き連れて現場を歩いていた。

 規制線が張られた範囲は広く、各所を鑑識による調査が入っていると思われるが、恐らく出火原因は分からないだろう。

 少なくともライターでも灯油などの類でもない。住民の証言では一瞬で燃えていたと言っていたし、灯油などの匂いもしなかったと語っているのだ。

「火炎放射器でも使ったんですかね……?」

「こんな範囲で放火できるものなど、軍用レベルくらいだぞ。市販の物じゃまず無理だ。改造の可能性もなくは無いが……そんなものを持っていれば間違い無く目立つ」

 だが、そんな人物の目撃証言は無い。付近に不審な車が見られたという事もない。そもそも、不審火の発生時刻が八時ごろということもあり、幾ら住宅街とはいえ人通りは少なかったのだ。

 ただ、他に見られた証言として挙げられたのが――。

「若い男女三人の声と、荒っぽい言葉を使う男の声……これが鍵だろうな。ハッキリと顔を見た者はいないらしいが、月夜野(つきよの)はどう思う?」」

「俺ですか? ……まあその四人が鍵だと考えるのが普通ですけど、因みにその事情知ってそうな男女と男については、背丈とかについて分かってないんでしたっけ?」

「ああ。住民も火事に気を取られて誰も証言がバラバラだ。取り敢えず、若い男女の方は男に追われている様な声だったとの証言は複数上がっているが」

 若い部下の問い掛けに答えてやった吉門は、再度その部下に視線で問う。お前はこの事件をどう見る、と。

 その視線に、必ず答えなくてはいけないものだと悟ったのだろう。月夜野と呼ばれた彼は誰にも聞こえない程度に息を吐き、そして答えた。

「この程度の情報では、物事がどうとでも取れます。そして、どうとでも取れません。まずは情報を集めるのが先決かと」

「なら、どうすべきだ? どう情報を集める?」

「……確か、この付近には百鬼(なきり)組が居ましたね。彼らは頼んでも居ないのにこの街の見回りをやってくれる自警団組織です。何か知っているかもしれません。或いは、この事件の真犯人があそこに……」

「おっと、滅多な事をここで言うな。それで無罪だったらどうする? それで生じた互いの亀裂を埋めるのだって楽じゃない。少なくとも直截(ちょくせつ)的な事をこんな場所で口にしないように気を付けろ」

 頭は相応に働けるが、若さゆえに経験が足りないと若い部下を見ながら判断を下し、吉門はそこで話を切り上げさせる。

「だが目の付け所は悪くない。今回は連中の建物の近所。聞き込みに行くのだって何ら不自然では無いからな、午後にでも栗花落(つゆいり)を連れて聞き込みに行くぞ」

「承知です」

 そんな遣り取りを躱しながら現場を尚も見て回れば、不意に吉門(よしかど)は足を止める。

 彼の足もとに転がっていたのは、焦げ跡のついた瓦礫。

 だがそれはアスファルトでも無ければその辺の塀の破片でも無く、全く出所の分からないものだった。

「……先行した刑事や鑑識が唸ってたのはこれか」

「石、ですね」

 吉門(よしかど)(かが)んで、その欠片の一つを手袋越しに(つま)む。

 見れば見るほど何の変哲もない石だが、こんな石ころに大の大人が束になって頭を抱えていると思うと、滑稽だと思わなくもなかった。

「ああ、これの出所(でどころ)が分からない。派手に砕かれて焦げているが、解析に回した所、この辺の石とは組成が違うそうだ。一体何処から持って来たのか……今、比べる範囲を拡大して調べているそうだ。回収する際に落としていったものだろうし、後でこいつも渡してやろう」

「にしても、この石は焼いて砕かれたと見るべきでしょうか。だとしても、何の為に?」

「さあな。問題と疑問が山積みな上にもっと積み上がって来るのでは、その内に過労死しそうだ」

「縁起でもないこと言わないで下さい。吉門(よしかど)さん、実際に働き過ぎなんですから」

 上司のブラックジョークに軽く笑って見せる月夜野は、辺り一帯に散らばった岩石の欠片を見渡して、言っていた。

「これが魔法の仕業でした、とかで解決してくれれば楽なんですがね」

「あのな、それじゃ警察(おれたち)の居る意味がねえだろうが。馬鹿なこと言って現実逃避している暇があるなら考えろ。こうしている間にも、被害者が出ないとも限らない。今はまだ幸いにも一人として死者はいないが……或いは、俺達が発見できていないだけかもしれないんだからな」

「分かってますよ、冗談です。魔法なんて血迷った事を本当に信じてる訳ないじゃないですか」

 ははは、と月夜野は笑う。それにつられて、吉門(よしかど)もまた相好を崩していたのだった。だが、それもそこそこに二人は捜査と推理を再開する。

「…………」

 そんな仲で不意にそのすぐ近く、規制線の外側を一台の自転車が通過していく。

 それを漕ぐ強面で大柄な男子高校生は、瓦礫と焦げのやや酷い現場をチラリと確認して、思わずと言った様子で顔を引き攣らせていた。

 だけど彼のその気配に、吉門(よしかど)月夜野(つきよの)(つい)ぞ気付く事は無かったのである。







【幕間】

護「まさか、魔法が発現すると髪が変色するなんて……」


オ「正確には、魔力量が一定を超えるとその変化が起きるのだ。そして更にその量が大きくなると、肌などにも影響が出てくる」


護「肌にも?じゃあ緑色の肌とか居るってこと?」


オ「いや、流石にそれはいないぞ。理論上はいるかもしれんが、実際にそこまで人体に影響を持った魔法は過去に白魔法(アルバ・マギア)だけだ。それも今は現存していないしな」


護「へえ、そのアルバ何とかってのはどんな身体的特徴だったの?」


オ「そうだな、私も書物でしか知らないが、肌も髪も白く、目は赤く、彼ら種族は白儿(エトルスキ)と呼ばれて一見しただけで判別がついたそうだ。あと、非常に強力な魔法だったらしい」


護「強力? じゃあ何で無くなった訳?」


オ「狩り尽くされたのだ。魔力の沈着した肉体は諸々の素材として有用だったらしくてな。皮や骨、目や髪などなど……人間が人間を素材と見做し、狩猟した。当然、白儿(エトルスキ)側も抵抗したが、力及ばず敗北して全て狩り尽くされたそうだ」


護「……何その糞重い話。じゃあ、それで絶滅したんだな」


オ「その後もちょくちょく先祖返りは生まれていたらしいがな、民族としては私が生まれるより二千年以上も昔に滅んでいる」


護「うわぁ……」


オ「因みに私は先祖にその白儿(エトルスキ)の先祖返りが居るらしいのだが、真偽は分からんね。本当にラウレウス・アルブスが先祖だったとしたら、今頃私も白魔法(アルバ・マギア)が発現したりしたかもな」


護「……何にしろ、魔法世界も色々あるんだな。俺らの世界じゃ流石にそこまでの事は聞いた事ないし。とは言え、えげつない話は幾らでもあるんだけどね……でも素材の為に人間の民族まで滅ぼすなんて」


オ「さて、分からんぞ? 君や私は“この”世界では珍しく魔法が使えるのだ。マモルだって地球では貴重な存在とされて狩られるかもな」


護「止めてくれ想像したくもない!」



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