第43話 アタシは、こんなだけど……。
「~っ! あぁもう! もうっ!! 」
――アタシの絶叫が、踊り場にこだました。
「なんでよけるのよっ!! 」
なんでだなんて、そんなのわかりきっているけれど。
今、目の前にあるのは、久しぶりに見る、真っ赤っ赤な顔のアイツ。
多分、負けないくらいアタシの顔も赤いでしょうね、なんせ今、アタシの唇は、とっさに避けるんだもん。狙った箇所には未遂だったけど、アイツの頬には、確実に触れたのだから。
「お、おま、な、どういう、なんのつもりだ……」
お互いに、とてもじゃないけど冷静でなんて居られないわよね。
でも、つい今し方、アタシの、き、きき、キスした所に手を当てて、そんな、今更わかりきったこと聞くんだもん、いよいよ、アタシももう恥も外聞もないわ。
無理矢理だったけど、強引だったけど、メチャクチャだけど、もうどうだって良いわ。なるようになれよ。
勝手に相手の唇を狙ったんだもん。最低なヤツめと、そう言う人もいるだろう。
コイツもとんでもないヤツめと、キラ……われるのはイヤだけど、だけど、開き直るしかないじゃない。――ここまでやっちゃったんだから、もうこれ以上、恐れるモノなんてないもの。
だからアタシは言ってやったの、本当にこの場所で良かったわ。
――人通りの滅多にない、特別棟の最上階。
日当たりの良い、階段の踊り場で、優しく吹く風を全身に受けながら。
さっきまでとは違う、頭の中までとろけそうな熱をそのままに、アタシは言ってやったの。
目の前に居る、最愛の幼馴染みに、わかってもらえるように、いや、わからせるように、
「なんのつもりって! なんのつもりって……」
上手には言えやしないけど、
「ど、どうもこうも、……そういうことでしょ! ……ばかっ!! 」
それでもアタシは、不器用なりに精一杯、言ってやったの。