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深夜。
一回行ったし、行けるかな?
聖女アプリコットのテレポートを使い、聖女アプリコットの部屋に潜入した。
変装というよりは変身に近い能力で聖女アプリコットに姿を似せている。
勝手に姿を借りちゃったけど大丈夫だろうか、聖女アプリコットは今やヒロトの正妻として事実上の教団ナンバー2の地位に収まっている。
もっともやっていることといえば走り込みで身体を鍛えたり、瞑想して精神を鍛えたり、ボケーっとして休んだりと教団としての活動に参加してないようだが。
亜人の村をまわって私と決闘しろー私が勝ったら教団に協力しろーとかやってる元聖女の暗黒神官デイジーのほうがまだ活動している。
というかデイジーはかなり役に立つ、戦闘以外の役目がないから暗殺されても戦死してもそれほど困らないから平気で危険なことを任せられてなおかつちゃんと強い、その上バカだけどバカじゃない。
周りを見る、誰も居ない。
そもそもこの総本山の聖女の私室の周辺がどうなっているのかわからない、聖女アプリコットも教えてくれないし。
気配を探りつつ音を立てないようにドアを開けて廊下に出る。
灯火の魔法が込められた魔石がほのかに廊下を照らしている。
ランタンを持てばそれでいいようなところに高級品の魔石なんか使っちゃう辺り余程儲かっているらしい。
人の気配を避けつつどんどん進んでいくと隠し扉を見つけた。
ちょっとやそっとじゃ開けられないような頑丈がカギ穴がある、カギがないと無理か。
だがカギなど探しているほど暇ではない、防音魔法をかけてから素手で隠し扉をぶち破る。
隠し扉は分厚い鉄板だが天使アイリーンの腕力をもってすれば紙切れのようなものである。
階段になっている、どんどん降りていく。
一体何処まで降りておけばいいのか? という疑問が浮かぶがようやくたどり着いた。
階段の先、そこは資料室だった。
適当に1冊手にとって読んでみる。
日付と記号とサインが並んでいる、一部にメモのようなものが書いてあるが意味があるのかどうか不明だ。
資料を物色していくと1冊、勘がこれだと言っている書籍を見つけた。
「能力を与える能力……ハイミル教式の闇の儀式? 身体頑丈、動植物知識、魔法の才能、剣術の才能、幸運補正、ブロードソードを使う技能、ファイヤーボールを使う技能、弓矢を使う技能、説得の技能……技能は本人の能力とは別に作用する、身体頑丈を与えられた者は本来身体が持っている丈夫さとは別に身体頑丈が効果を発揮して身体を守る、才能は素の能力を上げるのに使い技能でそれを補完する……ご丁寧にやり方まで全部載ってる、後でじっくり読むか」
これをちょっと改良すればネフロレピス教でも神聖騎士団や聖女を作れるかもしれない。
テレポートで書籍をネフロレピス教の神殿にある自分の部屋に送る。
ここは宝の山かもしれない、もう少し知らねてみよう。
「そこで何をしているんだい?」
明かりがついた。
そこには聖女候補と思われる1人を連れた聖女イリスが居た。
天使アイリーンからすると後ろから声をかけられた形になる。
ここまで接近されるまで気が付かなかったのは夢中で書籍を読んでいたからか、聖女イリスが上手く気配を消せるか、それとも聖女候補と思われる少女が気配を察知させなくさせるなんらかの魔法を使うのか。
前に見た時は剣しか使ってなかったが魔法は使えるのか?
聖女アプリコットはテレポート能力を隠し持っていたが何か切り札があるかもしれない。
剣しか使えないならゴブリンの王が負けるわけがないが実際には完敗してる。
人類の守護者、決戦存在、それのコードネームが聖女というだけだと思っていいだろう。
ヒロトはそれを普通に口説き落として正妻にしちゃったけどあれは例外。
ネフロレピスと聖女を含む王国軍が戦うのだとしたらここで1人でも聖女を刈っておけば……その前に自分が刈られる側になるかもしれないが。
さてどうするか。
「なあ、黙ってないで答えてよ。君は公には死んだことになっているんだよ」
そんなことはわかってんだよ……あれ?
ひょっとして本物の聖女アプリコットだと思ってる?
そういえば変装してたんだっけ。
「返答次第じゃ、立場上、君を剣を傷つけなきゃならない、3秒以内に答えてくれ、無回答は宣戦布告とみなし、刺す」
「考え事をしていて返事が遅れたわ、ごめんなさい聖女イリス」
「本物の聖女アプリコットかい」
バレずにいけるかどうか、多分無理だとは思うけど。
「あなたの知っている聖女アプリコットじゃないから本物じゃないかもしれないわね」
「何があったの、何が変わったの? デイジーみたいに死んで生まれ変わったの?」
「別に死んでないからデイジーとは違うわよ、それにデイジーも正確には一度も死んでないし」
「そうなんだ」
「まあ一番変わったことといえば既婚者になったことかしらね」
「はい?」
「ヒロトと結婚した、口説かれてハーレムの1人じゃイヤだから正妻ならって言ったらじゃあそれでってことで、今の私はネフロレピスのナンバー2よ」
「え……」
「なんだったら私と一緒に来る? あなただったら重用するわよ」
「それは……駄目だよ」
なんだ今のため時間は、即答で断る話だろうが。
というかこのまま付いてこられて本物の聖女アプリコットと鉢合わせしたら2人になんて言い訳したらいいかわからないからこられちゃ困る。
「王国軍が討伐隊を編成しているそうね、聖女も参加するとかいう話も出てるけど、くるつもり?」
「行かないわけにはいかないかな」
「ネフロレピスのナンバー2としては戦力を少しでも刈っておくべきかしらね、でもあなたとは戦いたくないのよね」
「ボクもできれば戦いたくはないかなあ」
聖女イリスはそういうとイケメン風の笑顔を見せた。
聖女見習い達は余程の緊急事態の時以外は女だけで過ごすという、天使アイリーンはこれにメロメロになっちゃう聖女見習いの女の子も大勢いるに違いないと思った。
「それじゃあ、私は帰るわ」
「そう簡単に帰すわけないんだよね」
「そう、でも帰らせてもらうわよ」
「まあそっちの近況は聞けたし、そろそろ良いかな」
「?」
「そろそろ聖女アプリコットごっこはやめたらどうだい? 天使アイリーンだっけ? ゴブリンの王と一緒にきたよね」




