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そんな中、1人の男が前に出てきた。
ヤンキー風の男だった。
「おいテメー、イカレてんのか?」
ヤンキー風の男はそう言うとナイフをハゲ頭の大男に向ける。
「ん?」
大男は不思議そうにヤンキー風の男を見る。
「オラオラ、ぶっ殺すぞ」
そう言った瞬間、ヤンキー風の男の首が飛んだ。
「残り19人……、殺意の低いやつが多いな。しょうがない」
そう言うと何処からか砂時計を取り出した。
「この砂時計は10分で落ちる、あと10分経っても1人も死んでなかったら次も俺がやろう」
それを聴いて何人かが大声を出す、俺は壁を背にしてナイフを右手で持って周囲を見渡す。
戦いが始まった。
落ち着け俺、俺以外の19人全員を殺さなきゃいけないわけじゃない。
1人は既に退場しているから俺以外は18人、こいつらはこいつらで戦うわけだからトーナメントみたいなもんだ。
トーナメントと考えれば1回戦突破で半分の9人、2回戦突破で更に半分だ。
多くとも5回勝てば最後の1人、運が良ければ1回も勝たずに最後の1人になれる。
そう思って周囲を見ているとヒャッハー系のやつとうずくまって泣いているやつが目立つ。
ヒャッハーして積極的に殺しにいってるやつは数が少なく、2人くらいしか居ないが目立つ。
うずくまって泣いてるやつはそういう罠なのか? と思っていたら普通にヒャッハー系のやつに刺されていたので考え無しに現実逃避して泣いていたようだ。
俺は立って壁を背にナイフを構え、ポーカーフェイスを貫いていた。
そんな中、ヒャッハー系とも違う、半狂乱になっているやつがナイフを持って突撃してきた。
俺の顔面に向かってナイフを力いっぱい突き出してくるので冷静に少ししゃがんでナイフを避けて、その腕を掴んで柔術で投げ飛ばす。
ここから更に刺して殺せるがなんか怖くて無理。
俺はその場から離れた。
しばらく時間が流れた俺以外にも壁を背にしてナイフを構えてる目つきの鋭い男が2人残っている、合計3人か。
俺を含め3人とも壁から動かない。
砂時計の砂は落ちていく。
「ちょっと聴いていいか?」
俺は中央でニヤニヤしている大男に声をかけた。
「なんだ? 下らないことだったらぶっ殺すぞ」
下手なことを聴いたら本当に殺されそうだな。
慎重に話するか。
「10分たっても誰も死んでなかったら殺すと言ってましたがこれには優先順位はあるんですか?」
「俺の気分」
はっきり言い切るなあ。
そう思っていたらナイフがすぐ近くに刺さった、残った誰かがナイフを投げてきたようだ。
斜め前を見ると誰かが投げてた。
次の瞬間、もう1人が丸腰になった男をめった刺しにした。
血まみれのナイフを持った男がこっちを見た、その顔面に投擲されたナイフが突き刺さる。
俺が投げたんだけどね。
目の前に1本あるし、さっき外れたやつな。
「ふむ、優勝おめでとう。余裕そうだな」
「余裕なんかとんでもない、何年かぶりに冷や汗かいたよ」




