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3-4

大森林にてゴブリンの村が結構出来上がりつつある。


その一方で聖女候補のデイジーと騎士見習い2人、そして雇われた傭兵100人程度が大森林を目指して進んでいた。

騎士は3人、傭兵は50人の予定だったが予定通りに集まらなかった。

何事も実際にやってみると予定通りにはいかないものである。

その規模から正面から襲ってくるモンスターや山賊はあまり居ないが食料輸送部隊や武器輸送部隊を狙ったこそ泥が侵入してくることがあるので油断はできない。

ちなみに山賊は人間でもモンスター扱いである。

傭兵としてはハイミル教に雇われている立場上、分類上モンスターである山賊を殺せないの追い払うだけにしておいた。

山賊はここで殺しておかないと別の人が襲われて被害が出るような気がするが人間至上主義のハイミル教に雇われているんだからしょうがない。

後で山賊に襲われた人はせいぜいハイミル教を恨んでくれ、俺達は知らん。というのが傭兵たちの本音だった。

ここで山賊を殺さない危険性について語り合うのもバカバカしい。


あまり知能のない巨人族が正面から襲撃してきたことはあったが弓矢で撃退に成功した。

巨人とはいえ強弓なら手首くらいは一撃で切り飛ばせる、鎧も着てないので肉体の強度は生身の人間とそれほど変わらない。

はっきりいって弓矢部隊が居ればでかい的でしかないが、実際に人間の3倍ちかい巨人のキックやパンチを間近で見るとなかなか迫力がある。

ハイミル教は人間至上主義だが巨人族は人間じゃないので問題ない。


偵察部隊は山を超え、谷を超え、海のような大きな川を馬車ごと運搬できる大型ガレー船にのせて渡り、大森林へと到着しようとしていた。


4人乗りの馬車が一行の中心部分に居た。


馬車の中には聖女候補デイジー、傭兵団長カキン、そして騎士見習いの2人が居る。

聖女候補デイジーは大きすぎてずれるメガネを片手で直している、クシャクシャのくせ毛とタレ目が印象的だった。手元には攻撃魔法を使う時に使う錫杖が常にある。


馬車にはハイミル教の旗と聖女の旗が掲げられている。


鉄鎧を着込んだ大男が言った。

彼が傭兵団長カキンである。


「いい加減話してくれてもいいだろ? 大森林に何があるんだよ?」


「知らん」


「知らないから見に行くのだ」


見習い騎士はそっけなく言った。


「100人も集めて何を見に行くんだよ」


「何度言わせるつもりだ、何が居るかわからないから見に行くのだ」


「わかったよ、どうせ何時もの亜人狩りだろ。盗賊も亜人というかモンスターみたいなもんなんだから殺させろや」


「我々に決められることではない」


「ケッ、偉そうにしやがって」


傭兵団長カキンはわざわざ聞こえるように悪態をついた。


そこでそれまで黙っていた、聖女候補デイジーが口を開く。


「まあまあ、みなさん落ちついてくださいよ。団長もすみませんね、騎士団に入りたいなんて志願してくる人はそもそも亜人を快く思ってない人が多いですし」


「……」


見習い騎士は何を言うでもなく黙っている。


「それと本当に知らないんですよ、大森林に何かヤバイのが現れたってこと以外はなんにも」


「まあいいさ、そっちの捨て駒みたいな2人だけだったら本格的にヤバイ奴が居るんだろうが……金の卵扱いされてる聖女候補様が一緒に来ているんだから、次に攻め込むところの下見かねえ? 100人も傭兵雇ってるのは過保護なだけか?」


「ああ、ええ、どうでしょうね」


「……」


「……」


聖女候補デイジーは元々来る予定じゃなかったけど強引に付いてきちゃいました、とは言いづらい。


「まさかゴブリンキングとか居ないだろうなあ? このカキン様の勘は当たるんだぞ、これでここまで生き残ってきたんだ」


騎士見習いが言った。


「それはありえんな、聖女イリス様でも取り逃した大物だ。いま聖女マルガリータ様と聖女イリス様の2人が討伐しに行っている自称魔王がそれだろう」


「聖女様が2人、ゴブリンキングとてひとたまりもないだろうな。そもそも聖女イリス様なら1人でも圧勝した相手、帝国軍も決して弱くはないのだろうが極めてまれに現れる強すぎるモンスターが相手ではしょうがない」


あんまり喋らなかった騎士見習い2人がゴブリンキングという単語を聞いた途端よく喋るようになった。

傭兵団長カキンはこうして急に饒舌になるやつは何かあるやつだと考えていた。

100人の傭兵団のまとめ役とはいえ傭兵団長カキンはいつもは6人で活動している。

傭兵をまとめて100人も雇うなんてことをするのはリグリア帝国軍くらいなもので、帝国軍に雇われた時は上官は帝国軍下級士官になるのが普通だ。

顔は広いほうだが顔を見たことがあるレベルの相手でも50人くらいしか居ない、交流がある相手は18人しか居ない。


最悪でもいつもの6人くらい全員生き残る、できれば交流がある18人には生き残って貰いたい。

自分ひとりだけ生き残っても帰るまでにモンスターに襲われて死ぬだけだから自分ひとりだけ生き残っても意味がない。


この辺りはもう人間は殆ど住んでいない。

知能のある亜人が村を作っていたりもするが、人間に対して友好的な数少ない亜人は人間の生活圏で暮らしている場合が殆どでそこから離れたところに住んでいる亜人は人間に対して敵対的だ。


亜人が住んでいる普通の村だと思って入ったらヴァンパイアが支配している村で住人は全員、死鬼と呼ばれるヴァンパイアに血を吸われた元人間や元亜人のモンスターだったなんていう話も聞いたことがある。

ヴァンパイアは危険なモンスターだ、死鬼を作ったり血を求めて帝国の領地にまでやってくることもあるくらいだ、だから専門のヴァンパイアハンターまでいる。

そんなのと遭遇したら生きては帰れないだろう。


ヤバイというとドラゴンナイトもヤバイ。

あれはただ人型になれるから亜人扱いされてるだけで普通のドラゴンだ。

ドラゴンはヤバイ。

もう災害みたいなものでヴァンパイアハンターはいるけどドラゴンハンターはいない。

ドラゴンとは滅多に遭遇することはないがチヤホヤされたくてワーウルフやリザードマンの集落に客として招かれてたりする。


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