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従者物語③ 勇者の専属料理人、ファブレ  作者: yuk1t0u256
一章 魔王編
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8話 豆腐

「豆腐が食べたい気がする」

馬車に揺られて頬杖をついて外を見ながら、ヤマモトがつぶやく。

今はファブレと共に他の街へ乗合馬車で移動中だ。

「トーフですか? 名前は聞いたことがありますね」

昔シスターに聞かせてもらった勇者話に出てきた名前だ。

「豆腐は味噌汁にかかせない具材だが、そのままで食べることもある」

「どんなものなんです?」

「大豆を長時間水に浸し、膨らんだところで粉砕する。それをしばらく煮て絞ると豆乳になる」

「豆乳は知ってますが、作り方は知りませんでした」

ファブレはメモを取り出す。いつの間にか周りの他の乗客もヤマモトの話に耳を傾けている。

「その豆乳を沸騰しないように温めて、そこににがり・・海水を乾燥させて塩の他に残ったもの、を入れると豆乳が固まってくる。そこから余分な水分を抜いたものが豆腐だ」

「海水ですか? それはちょっと無理ですね」

ここは内陸で海は遠すぎる。

「そのようだな。だから召喚してみてほしい」

「街についたらやってみます」

さすがに乗合馬車の皆が見てる前での召喚は恥ずかしかった。


街で宿を取り、部屋で召喚を試みる。

トーフ。ようは豆乳を固めたものだ。味は大体分かる。これなら簡単だ。

「料理召喚」

と言った途端にヤマモトがハッと何かに気づき

「待て!」

と言ってきたがもう遅かった。

皿の上には豆乳がブロック状に固まったものが出現した。

「言うのが遅かったか・・」

ヤマモトが顔を抑える。

そしていつも通りハシを取り出して豆腐に刺そうとするが、カツンと弾かれる。

「やっぱり・・硬すぎる、こんな豆腐があるか!」

「昔聞いた勇者話でトーフにぶつかって死ぬ、とかいう言葉があったのでてっきり固いものかと思ってましたが、違うんですか?」

「逆だ。豆腐は今日乗った馬車だと崩れるほど脆いものなのだ。それで豆腐を思い出した」

「そうだったんですね」

ヤマモトからすれば誰でも知っている常識だったが、ファブレにとっては全く逆だった。

ナイフで角を削って食べてみるとボロボロと歯で砕け、濃厚な大豆の風味がする。

「これは美味いが・・豆腐では無い何かだな」

「あ、美味しいですねこれ」

おそらく大量の豆乳を圧縮したであろうものは、味はとても良かった。

二人で削って全て平らげる。

「私の国でもこんな食べ物はない。怪我の功名だな。中に具を入れたり、味付けするなどでもっと美味しくなる可能性もある」

「今までにない食べ物ですか。嬉しいです」

ファブレは自分の能力で新しい料理が作れて大満足だった。

「名前をつけようか。ファブレ式極限圧縮豆乳とかどうだ?」

「なんでそんな軍隊みたいな感じなんですか。もっと自然な感じのがいいです」

「ではトーフが元だからそれを入れよう。それに何か強そうな固そうな感じのもの・・鉄か。アイアンドーフでいいだろう」

「なんだかいい響きですね。ではアイアンドーフと呼びましょう! 僕のオリジナル料理!」

ファブレは大喜びだ。耳もピコピコ動いている。尻尾があればブンブンと振られていたであろう。

「しかし柔らかくない豆腐が美味くなるとは。常識にとらわれない発想も必要なのだな。もっと面白いものも作れるかも知れん」

ヤマモトは思案する。ピコピコ動くファブレの耳をつまみながら。

「やめて下さい!」

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