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従者物語③ 勇者の専属料理人、ファブレ  作者: yuk1t0u256
一章 魔王編
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74話 兎肉のシチュー

皆の前でファーリセスが水晶玉に手をかざし、覗き込みながら何やらブツブツ呟いている。

隠し通路の状況を使い魔で調べようとしているのだ。

ファブレもそのような魔法を見るのは初めてなので、興味津々で見つめている。

「よし、リンクが取れた。えーと、こっちかな・・」

ファーリセスが手をユラユラと揺らすと、水晶玉に映る景色が流れていく。

ファーリセスは説明しないが地上を這うような景色のため、ネズミのような小動物の視点なのだろう。

ただの瓦礫が山のように立ちはだかり、隙間を通るときは真っ暗で何も分からない。

また水晶玉の中央部分は映っているものが分かるが、端になるにつれ視界が歪んでしまう。

「うーむ、よくこれで情報を集められたな・・」

ヤマモトも目の間に皺を寄せて水晶玉を見ている。

「術者はそこに映っている以上に、使い魔の感覚が伝わるらしいぜ」

「なるほどな。後で説明してもらう方がよさそうだ。ちょっと村を回ってこよう」

スパークの説明に、ヤマモトが立ち上がる。

「お供します」

ファブレもあわてて立ち上がる。

二人が家を出るときも、ファーリセスは周りのことなど意に介さず水晶玉の操作に没頭していた。


外では昨日の襲撃で破壊された家や柵、畑を直していた。

村長のジャヒーラが目ざとくヤマモトを見つけて話しかけてくる。

「おう勇者様、昨日はありがとよ。しばらく滞在するのか?」

「ヤマモトでいい。明日には出立するつもりだ」

「もしかして・・魔王退治に行くのか?」

陽気なジャヒーラもさすがに唾を飲む。

「ああ、そのためにここまで来たんだからな。すまんがファーリセスも同行する。村の守りが弱くなるかも知れんが、元凶を叩けば問題なかろう」

「そうだな。最近魔物の襲撃が増えてな。いつまでも守ってる訳にもいかないしな」

「あのう、ジャヒーラさん。少し聞いてもいいでしょうか?」

ファブレがおずおずと手を上げる。

「君は料理人だったか。昨日のアレ、何と言ったか・・甘くてフワフワなやつは美味かったぞ。何を聞きたい?」

ヤマモトの手前少し聞きずらい質問だったが、ファブレは思い切って言ってみた。

「もし魔王を倒して魔物がいなくなっても、この村は大丈夫でしょうか? 魔物を倒して生計を立てていると聞いています」

ジャヒーラは少し首を傾げたあと答える。

「ああ、それなら問題ない。魔物が減れば鳥や獣が増えるはずだ。もともとここは狩猟をやっていた村でな。それが獣が減って魔物が増えたんで魔物を狩るようになった。それが元に戻るだけの話さ」

「そうでしたか」

ファブレは思い切って聞いてよかったと安堵する。

「だから安心して魔王を倒してきてくれ。戻ったらお祝いするか。料理はアンタに任せるがな」

ジャヒーラはそういって笑うと二人に背を向けて仕事に戻っていった。

「魔王を倒すことで不利益を被る人もいるかも知れん。だがもし魔王が軍を起こしたらこの村など一たまりもないだろう。何かあってからでは遅いのだ」

「はい、分かります」

ヤマモトとファブレが連れ立って村を歩くと、気さくな村人たちが昨日の礼だと野菜や野兎などを

押し付けてくる。ヤマモトは笑顔で受け取る。

「今日の昼はシチューかな」

「いいですね」

二人がファーリセスの家に戻ると、ファーリセスは机に突っ伏して寝息を立て、ミリアレフもベッドに座ったままユラユラと舟をこいでいる。何か紙に書いていたスパークが顔を上げる。

「おう、戻ったか。分かったことを説明するぞ」

ミリアレフは慌てて起き、ファーリセスは寝たまま、ファブレはシチューを作りながら会議が始まる。

「例の隠し通路は今でも使えるようだ。城の裏手の洞窟から、玉座の間まで通じている。ここだな」

スパークが図面を示し、ヤマモトが頷く。

ファブレは野菜の皮をむき、肉を切り分け、塩コショウして炒める。

同時にもらった水牛の乳を鍋でゆっくりと温める。

「通路には見張りのモンスターが何匹かいた。まぁ魔王城を正面から突破するよりは遥かに楽だろう」

「だろうな」

「だが使い魔で確認できるのは玉座の間までだ。魔王はその奥にいるらしいが、使い魔はその先に進もうとしない」

ファブレが厨房から口を挟む。

「どうしてでしょう? 魔王のプレッシャーのようなものでしょうか」

「理由は分からんが・・玉座の間から奥は一発勝負で行くしかない」

ヤマモトが頷く。

「いや、ここまでわかれば十分だ。ありがとう。一応レイコにも聞いてみたが、自爆したのは玉座の間でやはり奥については分からないらしい」

ファブレは炒めた具材を鍋に入れて煮込み、塩で味を調える。

そこでファーリセスが目を開ける。

「いい匂い! 何作ってるの?」

「村の皆さんから食材を頂いたので、お昼は兎肉のシチューです」

「やったぁ!」

「ま、ひとまず昼にしようか。私はパンでなくライスがいいな」

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