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従者物語③ 勇者の専属料理人、ファブレ  作者: yuk1t0u256
一章 魔王編
62/303

62話 おでん

書き直しました

「ただいま。すまん、遅くなった」

声と同時に家の扉が開き、ヤマモトが入ってくる。

ヤマモトの帰りを待ちわびていたファブレとミリアレフが笑顔でヤマモトを迎える。

「ヤマモト様! お帰りなさい」

「勇者様、聖剣はいかがでしたか?」

「ああ、この通りだ」

ヤマモトは鞘に入った剣をファブレに渡す。

「これが聖剣ですか!」

ファブレとミリアレフが目を輝かせる。ファブレが震える手で鞘から剣を抜こうとする・・が抜けない。

「やっぱり勇者様しか抜けないんですね・・」

と落ち込んで剣をヤマモトに返す。

「遅かったので心配しました。何かあったんですか?」

ミリアレフが聞く。

「取ってくること自体は大したことなかったが、誰からも能力の説明が無かったからな。色々試していたんだ」

「そうだったんですね」

「結局昼も食べそびれてしまった。こんな時は楽しいもの・・おでんなんていいな」

ファブレがヤマモトに聞く。

「おでんですか? どういうものです?」

「鍋の一種だ。はんぺん、竹輪、さつま揚げ、大根、ゆで卵、じゃが芋、結び昆布、こんにゃく、牛筋の串などを、うどんのスープにあまり醤油を入れずに透き通ったスープで煮たものだ」

「えっ、知らない食材がたくさんあります。はんぺん、竹輪、さつま揚げって何ですか? こんにゃくは糸こんにゃくと違うものなんですか?」

「はんぺんは魚のすり身にヤマイモを混ぜて茹でたものだ。焼きたての白パンのようにふわっとしている。形は白くて三角形の板状だ。竹輪は魚のすり身を串に刺して焼いたものだ。だから穴が開いている。大きいマカロニのような形だ。さつま揚げは魚のすり身を揚げたものだ。形は平たく楕円、コロッケみたいな感じだな。こんにゃくは糸状か塊かの違いで、糸こんにゃくと同じものだ。おでんのこんにゃくははんぺんと同じく三角形の板状で黒い」

「魚のすり身ばっかりじゃないですか!」

「言われてみるとそうだな。だがおでんはそういうものなのだ。とりあえずやってみてくれ」

ヤマモトは一人で納得しているが、ファブレは困惑する。

スープは分かる。だが魚のすり身を茹でたもの、焼いたもの、揚げたものとは・・。こんにゃくも全く分からない。

「自信がありませんがやってみますね、料理召喚!」

テーブルに置いた大鍋の中が煮物で満たされる。

「ふむ・・やはり練り物系が明らかに違うな。それにこんにゃくが無い」

「どうもこんにゃくは想像が追い付かないようです」

ファブレは皆の取り皿に大鍋の中身を1セットずつ入れていく。

「ではいただこう」

ヤマモトが手を合わせ、ファブレとミリアレフもフォークを取る。

「でははんぺんから・・」

ヤマモトが三角形の白いものをハシでつまみ上げる。スープがボタボタと零れ落ちる。

「これは・・スープが染み渡った魚肉味のパンだな。はんぺんは茹でると膨らむがスープは中に染みないのだ」

「そうなんですか? ますます想像できません・・」

「まぁちょっと難しかったな。これが竹輪だろうか」

ヤマモトが焼目のある筒状のものを拾い上げ、端をかじってみる。

「これは焼きつみれだな。まぁおでんには合うが・・」

「やっぱり違いますか」

「ではさつま揚げ・・これは見た目はかなり近いが、味はどうだろう」

ヤマモトが小判状のものをかじり、歯型が残る。

「これは・・魚肉ソーセージのフライだな。フフ」

どれもヤマモトの期待するおでんの具とは違うようだ。ファブレは落ち込む。

だがミリアレフは笑顔で食べている。

「どれもとっても美味しいです!」

「そうだな。それに練り物以外は完璧だ。おでんの具は大根が一番人気なんだぞ」

「へぇ、意外ですねぇ」

おでんもどきは特にミリアレフに好評で、やがて鍋は空になった。


「そういえば、先代勇者の従者と会ったぞ」

食後のお茶中に、ヤマモトが城の地下で会ったレイコの話をする。

「前の勇者様がいなくなっても、ずっと一人で聖剣を守っていたんですか。健気ですね」

ファブレは感動している。

だがミリアレフは目を吊り上げる。

「勇者様、ゴーストをミハエル様の配下に推薦したのですか!」

「マズかったか? 他に仕事先も思い浮かばなくてな。聖女と相性が悪いというから私たちのパーティには無理だし」

「なんてこと・・ゴーストの分際でミハエル様のお傍に・・し、しかも四六時中ミハエル様を観察できるなんて。私がそのゴーストを見つけたらすぐ神の身許に送ってやります!」

ミリアレフが拳を振り回す。

「しかし彼女はかなり有能だぞ。それこそミハエルが王になる手助けになるかも知れん」

「えっどうしよう・・じゃあいらなくなったらポイで!」

「酷い聖女だな・・」

ファブレもヤマモトと同じ感想しか浮かばなかった。


「あっすみません、伝えるのが遅くなりました。ヤマモト様が留守の間に、セジュール家の使いという方がいらっしゃいました。いつでも都合のいい時に、ボクとミリアレフさんも連れて来てほしいとのことです」

ファブレがヤマモトに頭を下げる。

「ああ、例の指輪の件だな。じゃあ早速明日行こうか」

「セジュール家は美食で有名な貴族ですよ、ファブレさんの出番かも知れませんね!」

「フフ、頼りにしてるぞ」

ミリアレフとヤマモトの信頼に答えられるだろうか・・ファブレは不安だった。

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