表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
従者物語③ 勇者の専属料理人、ファブレ  作者: yuk1t0u256
一章 魔王編
PR
49/326

49話 潜入

夜明けとともにヤマモトたちはロアスタッドを離れ、敵指令のいる村へと向かう。戦場になっている街道の西を避け、北側の森を大きく迂回するルートだ。

ファブレは一人で馬に乗れないのでヤマモトの懐で同じ馬に乗っている。非常に気恥ずかしいがどうしようもない。ファブレの背中や腕にヤマモトの体が当たり、耳にヤマモトの吐息がかかり、髪の匂いがして頭がクラクラする。

休憩のころには顔が真っ赤で茹で上がったようになってしまった。

朝食を取らずに街を出たため、休憩中に料理召喚を使い朝食となる。

メニューはゆで卵のみじん切りにマヨネーズを和えたもの、をパンに挟んだタマゴサンドだ。

3人とも絶賛してくれた。

だがスパークの馬に移りたいというファブレの希望は、ヤマモトとスパーク両者から却下され、

ミリアレフがかけてくれた酔い止めの魔法は、ファブレのヤマモト酔いには効果が無かった。


日が山の稜線を超えたころ、南から大砲の音が微かに響くようになる。今日の戦闘が始まったのだ。

今日の防衛はヤマモトとミリアレフ無しで乗り切らなければならない。いつもより犠牲が増えるだろう。だが敵指令を倒せば戦闘は終わるのだ。しくじる訳にはいかない。4人は気を引き締めて進む。


そして日が中天に輝くころ、4人は目的の地下通路の入り口に到着する。

見た目は枯れた古井戸だが縄梯子が垂らされ、昇降できるようになっている。

生い茂る草に隠された古井戸は、場所を知らなければ誰も気づかないだろう。

井戸の底には横道があり、そこを通って村の井戸まで行けるという。

先頭のスパークは松明をつけ、殿のミリアレフは光魔法で灯りを灯す。

入口こそ狭かったが、通路は2人が並んで歩けるほど大きく、しっかりと作られている。

「なんで村にこんな立派な地下通路があるんだ?」

ヤマモトがスパークに聞く。

「聞いた話じゃ昔、村から何かを運び出すのに使ってたらしい」

「何か?」

「何を運んでいたかまで分からんが、こんな秘密の通路を使うんじゃ表に出せない物だろう・・む」

スパークがピタリと止まり、手で待ての合図をする。

「スケルトンだ。だが巡回や警備ではなさそうだ。何だ?」

闇に眼をこらすと、ファブレにもぼんやりと浮かび上がる白い骨らしき物が見える。

しかし動いていないようだ。

「2体だけか。とりあえず倒しておこう」

ミリアレフが前に出ようとするのを手で制し、ヤマモトは通路に転がる石を2つ手に取ると手首のスナップを使って投げる。

壺が割れるような音が響き、2体のスケルトンは頭部の一部を失う。すると操り人形の糸が切れたように、全身の骨が床に落ちてただの骨の山になった。

近づいて調べるスパーク。

「魔王軍のスケルトンだな。おそらく村の方から迷い込んで、居心地がいいのでボーッとしてたんだろう。ここはジメジメして空気が淀んでいるからな」

「ええ?」

猫や犬じゃあるまいし、スケルトンにそんな習性があるのだろうか。

とその時、闇の奥からガシャガシャと追加のスケルトンの足音がしてくる。

「私に任せて下さい!」

ミリアレフが正面に立つ。神官の秘儀、ターンアンデッドを使うのだろうとファブレは思っていたが

「天罰てきめん!」

ミリアレフは両手に持った杖でスケルトンを叩き伏せた。


地下通路は迷いスケルトン以外の魔物の姿はなく、最奥の村の井戸まで到達した。

井戸の蓋は閉められている。スパークが上まで上がって慎重に蓋をずらして外の様子を確認する。そして大胆にも蓋をどけて井戸の外に出ていった。

ファブレは気が気ではなかったが、やがてスパークが戻ってきて安堵する。

「この井戸は小さな小屋の中にある。小屋の扉が閉まってるから井戸から出ても大丈夫だ。少し外の様子を見たが、小屋を出て右側、焼け焦げた教会の中に魔物の赤い体と陽炎が立ち上っているのが見えた。あれがバーログだろう。悪魔は教会や神殿を穢すのが好きらしいからな」

「教会を燃やして占拠するなんて、許せません!」

ミリアレフが憤る。

「落ち着け。他の魔物はどうだった?」

ヤマモトが状況を確認していく。

「この小屋の周りにはいなかったが、教会には当然配下がいるだろう。そこまでは見えなかった」

「小屋から教会までの距離は?」

「そうだな・・あんたの街の冒険者ギルドから、四つ角までくらいだ」

「分かった。ミリアレフは質問はあるか?」

「作戦はどうしますか?」

「単純だ。バーログの近くまで走っていき、君がサンクチュアリでバーログを捉えたらあとは私が戦う。指令さえ倒せば他の魔物は逃げるんだろう? 走っている最中に襲ってきた敵は私が蹴散らす。もし作戦が失敗したときはこの井戸から退却する。その場合は通路は崩させてもらう」

「分かりました、大丈夫です!」

ミリアレフは杖を握り締める。ヤマモトはスパークとファブレに向き直る。

「君たちはここで待機だな。上がったら蓋をしておくが、もし魔物が来るようなら逃げてくれ」

「了解だ。あとは任せたぞ」

「ああ。任せておけ」

ヤマモトとスパークが軽く拳を合わせる。

「ヤマモト様、ミリアレフさん、お気をつけて・・」

「行ってくる」

「穢れた悪魔に神罰を食らわせてやります!」

ヤマモトとミリアレフが井戸を出て蓋が閉じられ、ファブレには蓋の隙間から微かに差し込む光しか見えなくなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ