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従者物語③ 勇者の専属料理人、ファブレ  作者: yuk1t0u256
七章 帝国編
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287話 公王攻略法

「えっ、ファブレが来てるのか?」

紆余曲折あり、カシューバーガーの社長に戻ったカシューことカシルーン。

秘書のタミナからの報告は寝耳に水だった。

「はい。今回は他の要件のついでで公国へ寄られたようですよ」

「ここにも来るのか?」

タミナが頷く。

「もちろんです。社長の本日の予定は全てキャンセルさせて頂きました」

「それは助かる。しかし一体どこに行く気なんだ?」


一人で社長室を訪れたファブレ。カシルーンが椅子から立ち上がり、笑顔で肩を叩きあう。

二人は立ったまま話した。

「カシュー、久しぶりだね」

「よく来たなファブレ。ちょっと太ったか? ハハッ」

「気にしていることを・・しかし今度はホットドッグのチェーン店を始めて、そっちも大繁盛とは凄いね」

「カシューバーガーとは別でやるつもりだったけど、潰し合ってもしょうがないしな。で、どうしたんだ突然?」

「うん、実は帝国へ行く途中なんだ。公王陛下の弟君、エドワルド殿下と一緒にね」

「帝国に? どういう事だ? 詳しく話してくれ」

二人はようやく椅子に座った。


「なるほど。勇者が帝国から王国に亡命したのは聞いてたが、その身受けか」

カシューは手を頭の後ろで組み、椅子に寄りかかる。

「けど・・帝国の勇者のためにお前がそこまでやる必要はないだろ。外交官になったのか?」

「いいや、もちろんただの料理人だよ。ボクも最初は乗り気じゃなかったけど・・ボクが従者だった時も色んな人に支えてもらった。今回はボクが支える側になろうかと思ってさ」

カシルーンが膝を叩く。

「よし、俺も帝国に行くぞ」

ファブレは目を丸くした。

「えっ? カシューも帝国に行くの? 何しに?」

「何しにって、帝国への出店のチャンスなど滅多にないからな。今から許可をもらいにギルガメス陛下のところに行こう」

「相変わらずの行動力だね」

カシルーンは既に立ち上がり上着を羽織っている。タミナはこれからの対応を考えると眩暈がした。


ギルガメスの屋敷では、ギルガメスとエドワルドが談笑中だった。ファブレとカシルーンの姿を見てあからさまに不機嫌になるギルガメス。

「なんだ二人揃って。新作のホットドッグでも食わせに来たのか?」

「陛下、兄弟水入らずのところを邪魔して申し訳ありません」

「せっかくファブレが来てくれたんだ。とりあえず食事にしましょう」

カシルーンが勝手に取り仕切った。ギルガメスは仕方ないという風に二人に席を勧める。

「では、料理召喚!」

皆の前に現れたのは素朴なアップルパイだ。それに薄くいれた紅茶もついている。

「うむ、これだ。またお前と一緒に食べられる日が来るとはな」

「母上が作ってくれたものと寸分変わらないですね」

二人の好物はラプターから聞いていた。二人が感傷に浸りながら食べ進めるのをしばらく待って、カシルーンが口を開いた。

「陛下、俺もファブレと一緒に帝国へ行ってきます。帝国にカシューバーガーの橋頭保を作ろうと思って」

それを聞いたギルガメスが激しくむせた。エドワルドがその背中をさする。

「いきなり何を言っている! そんな事を俺が許すと思うか」

カシルーンは平然としている。

「別に陛下が許さなくても、行くと言ったら行きます。決定事項です」

ギルガメスが目を吊り上げた。

「勝手に決定するな! いいか、平和ボケした王国と違い、公国は帝国からそう離れてないのだぞ。何が原因で、いつ火種が飛んでくるか分からん。仮に帝国に出店できたとしてもだ。公国からの文化侵略だなどと言われる可能性もある。リスクが高すぎる」

カシルーンは感心した様子だ。

「一応国の事を考えているんですね」

「当たり前だ!」

ファブレは考える。カシルーンが宣言した通り、ギルガメスが許さなくてもカシルーンは付いてきてしまうだろう。だが今後の事を考えるとギルガメスの了承を得るに越したことはない。アカネがヤザワを連れ戻すのに失敗したのは交渉のカードを持たなかったからだ。自分にある交渉のカードは何だろうか。ギルガメスの最大の懸念であるエドワルドのカードはもう使えない。となると・・

ファブレはおもむろにカシルーンに話しかけた。

「ところでカシュー。ヤマモト様が帰還された後、何人か異邦人が現れてね。その中の一人が、ヤマモト様が元の世界に帰ったあと、どうなったかを知ってたんだ」

「えっ、本当か?」

「うん、前に来たときに話そびれたよね。悪かった」

ギルガメスがピクリと反応する。

「おい、詳しく聞かせろ」

やはりギルガメスはヤマモトの事が気になるようだ。

ファブレはしばらく無言になり、その後カシルーンに向けて口を開いた。

「実はボクにとってちょっと恥ずかしい話もあって、話づらいんだけどね・・」

カシルーンが満面の笑顔になる。

「そりゃぜひ聞かなきゃならないな! よし、じゃあ帰るか」

「すみません、お騒がせしました」

阿吽の呼吸で立ち上がったファブレとカシルーンをギルガメスが呼び止める。

「待て、ここで話せ!」

「いえ、プライベートなことなので」

ファブレはにべもない。ギルガメスが降参した。

「分かった分かった! カシルーンの出国の許可は出してやる。だが面倒は持ち帰るなよ。で、ヤマモトはどうなったんだ?」


テーブルに笑い声がはじける。

「ハハッ、異世界人はお前がいつもそんな恰好でいると思ってるのか?」

「きっとジョゼフのイメージが混ざってるんだろうね」

「も、もしかして、俺もそのドラマとやらに出てるのか?」

「うん、カワモトさんにいきなりプロポーズする少年の話があるらしいよ」

「うわー! 参ったな!」

カシルーンが赤くなった顔を手でゴシゴシとこする。

「そういえばジョゼフはどうしている? まさかまだあの恰好じゃあるまいな」

「今は立派な青年だよ。そういえば今回誘ったけど、ちょっと来れないと言っていたね。どうしたのかな」

「実は・・」

ジョゼフの事、ハヤミの事、そしてまたヤマモトの事、王国の様子。ギルガメスとエドワルドが別れてから今までの事。料理学校やカシューバーガーの事。話題は尽きず皆で話し続け、夕食もファブレが召喚することになった。

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