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従者物語③ 勇者の専属料理人、ファブレ  作者: yuk1t0u256
七章 帝国編
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282話 ファブレの弱点

ヤザワはパーティ内の親睦を深めるため、毎夕食をパーティ全員で共にすることにした。

しかし外食では目立つので、ファブレの家に皆が集まることになる。居間はぎゅうぎゅう詰めだ。

アリアの召喚術ではまだ全員分出せないため、夕食はファブレの担当だ。

「ヤザワさん、何かリクエストはありますか?」

「うーん、今日はこれと言って浮かばないな。お任せでいいかい?」

「分かりました。料理召喚!」

皆の前にチーズの乗ったハンバーグ、温野菜、スープ、好みに合わせたパンとライスが召喚される。

「わぁ、いい匂い!」

「うひょう、俺ハンバーグ大好き!」

「うむ、頂こう」

アカネはナイフとフォークを両手に持ったまま固まり、料理をマジマジと観察している。

「ハンバーグというでござるか? 得も言われぬ食欲をそそる香り・・」

キョロキョロと周囲を見て、皆と同じようにナイフで切り分けてフォークに差し、口に運ぶ。

「! 美味すぎるでござる!」

アカネはハンバーグを切っては口に運ぶのを繰り返し、皿はすぐに空になった。

アカネに期待に満ちた眼差しを向けられ、ファブレはお代わりを召喚する。歓喜するアカネ。

「異世界料理は最高でござるな!」

「気に入ったようで何よりです。ところでアカネさん、帝国では普段どんな食事を?」

ファブレの質問に皆が耳をそばだてる。アカネは躊躇いなく答えた。

「帝国ではここまで食事にこだわるなど考えられないでござる。毎日同じ物を食べている人も多いでござる。一番多く食べられているのはジャガイモでござるな」

アカネがハンバーグの付け合わせのマッシュポテトをつつく。

「ジャガイモですか。どんな料理を?」

「茹でイモ、ふかしイモ、それを潰した物、膨らませて焼いた物、あとは煮物でござる。帝国ではあの大量の油を使った・・揚げるという調理法は見た事がござらん」

アリアが何か言いたげにファブレの方を見た。視線に気づいたファブレが話を振る。

「アリアは何か帝国のジャガイモ料理を作れる?」

「肉じゃが」

ポツリと呟いた言葉にファブレは驚いた。

「えっ、肉じゃが?」

ヤザワが口を開いた。

「ボクがアリアに頼んでみたら、元の世界とほとんど変わらない出来で驚いたよ」

ヤザワの言葉にファブレは昔の自分を思い出す。最初に作ろうとした肉じゃがはビーフシチューになってしまった。醤油味も理解できず、ヤマモトが満足いく肉じゃがを作れたのは相当時間がかかったはずだ。

「そうなんですか? アリア、肉じゃがを召喚してくれないかな?」

「うん。料理召喚」

アリアはレベル2になり、4人分の料理を出せる。食器なども問題なく出せるようになっていた。テーブル中央に4人分の肉じゃがの大皿がデンと出現する。

ファブレはそれを観察した。ファブレの知る異世界料理の肉じゃがと全く変わらないように見える。一点を除いては。

見慣れぬ食材が一つ入っている。白い糸の束のようなものだ。ファブレはそれをフォークで刺してつまみ上げた。

「これは?」

「シラサギ?」

「シラタキだね」

アリアの間違いをヤザワが訂正する。

「えっ!? これが白滝?」

ファブレはショックを受けた。まさか自分が召喚できない物をアリアが召喚できるとは思わなかった。

動揺しているファブレを見てヤザワが苦笑する。

「そんなに驚くような物かい?」

「いや、ボクはこれが想像できずに召喚できなかったんですよ。凄いねアリア」

ファブレは白滝を味見してみる。

「・・ほとんど味はしませんね。やっぱり食感を楽しむ物なのかな」

ファブレは白滝がどんな物か理解した。これなら召喚できるだろう。

「料理召喚!」

だが何も出ない。

「えっ?」

二度、三度と試してもやはり白滝は召喚できない。ファブレは動揺した。

「な、何で出ないんだ?」

「きっと校長が召喚出来ない、苦手だと思う期間が長すぎて、それを払拭できていないのであろうな」

アベルの言葉にファブレは納得した。

「そうかも知れない。はぁ、参ったな・・」

「ふふん、私の勝ち!」

アリアは得意満面だ。

「校長にも苦手なものがあるんだね!」

「そういえば何でも切れる達人が、こんにゃくだけは切れないなんて話があったね。フィクションだけど」

ファブレがヤザワに尋ねる。

「こんにゃくというのは白滝と同じですよね。原料は何ですか? 海藻です?」

「いや、こんにゃく芋という芋らしいよ。刺激が強いから調理に手袋が必要で、中和するために草の灰を混ぜるとか見聞きしたことがある」

「ええっ! なんですかそれは」

「異世界の料理って時々ムチャクチャやるよな。そんなにしてまで食うか普通?」

セラフィエルが白滝をポイと口に放り込んで首を傾げる。

「なんだこれ・・味がしねぇぞ」

「帝国にはこれと似た料理があるから、イメージしやすいんでござろうな」

「そういえば、帝国には醤油もあったね」

「えっ、帝国には醤油があるんですか?」

「アリアの肉じゃがとっても美味しいね!」

「ほう、豚肉も牛肉も入っているようだ。それで味に深みを感じるのか。大したものだ」

「おいアベル、肉ばっか取るんじゃねー。イモしか残ってねーぞ」

「人参も残ってるであろう」

「俺が人参嫌いなの知ってるだろ!」

食卓は非常に賑やかだ。自分の料理が話題の中心になっている事にご機嫌なアリアを見て、ファブレは考える。

アリアは自分がヤマモトの従者になった時より幼い。それなのに既に召喚レベル2、すぐレベル3に上がるだろう。更にファブレが召喚できなかった物を召喚でき、ファブレが苦労した肉じゃがをほぼ完璧に再現している。アリアは自分以上の才能の持ち主ではないのだろうかと。

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