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従者物語③ 勇者の専属料理人、ファブレ  作者: yuk1t0u256
一章 魔王編
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20話 シーフードパスタ

「あっ、ヤマモト様、海が見えてきましたよ!」

ファブレは馬車の窓から身を乗り出して、ようやく見え始めた海を指さす。

ヤマモトは落ちないようにファブレの肩を抑える。

「そんなに乗り出すと危ないぞ。潮の香りもしてきたな。なんだか落ち着く」

ファブレは馬車内に戻るが、今度は正面から海が見えないかと御者席の間を覗いたり、

背伸びしたりしている。ヤマモトは笑って諫める。

「落ち着け。もうすぐ嫌というほど見れるようになる」

「すみません。海は初めてなもので」

ファブレはソワソワと落ち着かなげに席に座る。

「ヤマモト様は海のそばで育ったんですか?」

「そうだ。学校の窓から海が見えてな。窓際の席は取り合いだったよ」

「素敵ですね!」

窓から海を眺めるヤマモトはさぞ絵になるだろう。


ファブレの魚介類の知識が弱いため、ヤマモトの鶴の一声ではるばる海にやってきたのだった。

本来は港町の中央までの馬車だが、海のそばで下ろしてもらう。

「うわーすごい!」

ちょうど天気もよく、海面は陽光を反射して幾千の鱗のように煌めいている。引き波が浜辺の砂を海に引き込んでは、

その上に次の波がかぶさって浜に押し寄せる。風と共に波しぶきが飛んでくる。

波の音と海鳥の声が絶えることはない。

「これが波ですか、どうしてずっと動いているんです?」

「簡単にいえば風の影響だ」

「そういえば風が強いですね」

ファブレは波に手を浸し、それを舐めてみる。

「すごくしょっぱいです!」

「やはりこちらの世界でもそうなるのか」

「これなら塩や、豆腐に使うにがりも作りたい放題ですね。

 どうして海の水はこんなにしょっぱいんですか?」

「私の世界と同じであれば・・大昔の環境や気候のせいだろうな」

ヤマモトはゆっくりと波辺を散歩する。ファブレははしゃいで走り回っては

発見したものをヤマモトに伝えたり、質問しに戻ってくる。

「さて、長旅のあとだし今日はゆっくりするか。夕食は宿で取って、明日は市場を回ってみよう」

「はい、楽しみです!」

日が暮れてきた海を後にし、宿に向かう。


「はいよ、うちのオススメのシーフードパスタ。たくさん食べとくれよ」

もはや何の獣人なのか分からないほど恰幅のいい、宿の女将が二人に料理を運んでくる。

「わあ、色々乗ってますね」

「そうだな、白身魚に貝、エビ、イカもあるな。冷めないうちにいただこう」

ヤマモトのいつもの手を合わせるルーティンのあと、さっそく食べ始める二人。

アサリらしき貝を食べて驚くファブレ。

「なんだか噛めば噛むほど味が出るみたいですね」

「貝類は特に旨味が強いんだ。出汁としても使われる」

「このエビは見た目も鮮やかでとっても美味しいですね」

「エビは元の世界でも人気の食材だ。今度エビフライを作ってみようか。

 子供にも人気のメニューなんだ」

「フライというと油で揚げたものですよね。それも美味しそうです」

輪状のイカをフォークで刺して眺めるファブレ。

「このイカというものはどうしてこんな形なんでしょう。元はどんな姿なんですか?」

「そうだな・・背の高い帽子をかぶって足がたくさんあるというか・・

 帽子部分を輪切りにすると輪っかになるのだ。明日市場で見れば納得できるだろう」

「泳ぐのに足がたくさんあるんですか? 海の生き物って変な形が多いですね。

 ちょっと怖い感じもします」


パスタを平らげ、お茶で一服する二人。

「海には陸の10倍の種類の生き物がいると言われている」

「えっ、じゃあ海の食べ物のほうが陸より多いんですか?」

「そうかもしれない。もちろん知識が多い方がいいが無理に細かいことを覚えなくてもいいぞ。

 君の場合は切り身と味しか知らなくても問題ないくらいだからな」

そこへ女将が皿を下げにくる。

「お口に会ったかい?」

「ごちそうさまでした。すごく美味しかったです!」

「ああ堪能した。素晴らしいパスタだったよ」

美人のヤマモトと無邪気なファブレの笑顔に、女将も満足そうだ。

「ちょっと話が聞こえたが、二人とも料理人なのかい?」

「いや、この子が料理人のはしくれでな。私は食べる専門だ。内陸から海の幸の勉強に来たんだ」

女将は周りを見渡したあと小声で話す。

「実は内陸の料理人に頼みたいことがあってね・・」

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