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従者物語③ 勇者の専属料理人、ファブレ  作者: yuk1t0u256
一章 魔王編
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18話 寿司 その愛と憎しみ

「マズいことになった・・」

ヤマモトが落ち着かなげに爪を噛んで呟いたのをファブレは聞き逃さなかった。

「どうしましたヤマモト様。何か不安なことが?」

「聞こえていたか・・いや何、寿司を食べたくなってしまったのだ」

妙な言い方だ。

「ボクが召喚するんですよね、何か問題があるんですか?」

「寿司は私の国のソウルフードともいえる、最も有名な和食だ。

 おそらく君が召喚するのは難しいだろう」

「以前少し聞いたことがありますが、スシについて詳しく教えてくれますか?」


一時期和食の基本だと言われ醤油の召喚ばかり練習していたときに、

ヤマモトに言われて生魚を切って醤油につけたサシミをいうものを食べた。

それを米に乗せたものがスシだとその時に聞いている。

尤もここ内陸部で手に入る魚を生で食べるのはヤマモトには無理なので、

サシミは胃腸の丈夫なファブレが首を傾げながら食べただけだが。


「うむ。炊いた米に、酢・砂糖・塩少々を混ぜて冷ます。これを酢飯という。

 それを小さく握ってその上にネタ、一般的なのは魚の切り身、をかぶせるように乗せたものだ。

 それに醤油をつけて食べる。

 本来はネタと酢飯の間にワサビという鼻にツンとくる薬味を入れるが、

 私は辛いのが苦手なのでいらない。大きさは一口で頬張れるくらいだな」

「なるほど」

ワサビはちょっと想像が難しいが、それが無いとなれば特に問題はないように思える。

なぜヤマモトは難しいと言うのだろう。

「やってみますね、料理召喚!」

皿の上に名前は知らないが、ファブレが食べた中で一番美味しいと思えた魚の切り身が

乗った寿司が一貫と、醤油少しが現れる。

召喚で現れた食材は新鮮で寄生虫などは無く、

ヤマモトが生で食べても問題ないことは分かっている。

「見た目は完璧だな。いただきます」

ヤマモトはいつもの手をあわせるルーティンのあと、

そのまま手づかみで寿司を取り、醤油につけて頬張る。目を瞑って咀嚼する。

「うまい・・味も完璧な寿司だ・・」

「美味しいですか、良かったです!」

ファブレは喜ぶがヤマモトの様子がおかしい。

普段なら美味しいものを食べれば笑顔になるのに顔が曇ったままだ。

「ヤマモト様?」

ヤマモトは顔を伏せ、言い訳するようにつぶやく。

「いや、魚以外にも貝や海老、卵など寿司のネタは多種多様で奥が深いものなのだ」

「そうなんですか。サンドイッチのような感じでしょうか」

「寿司をサンドイッチなんかと一緒にしないでくれ!」

ヤマモトの乱暴な言い方にファブレは驚く。だが勇気を出してヤマモトを諫める。

「ヤマモト様、ボクの言い方が悪かったかもしれませんが、

 スシとサンドイッチに上下はないと思います。以前ご自分でもリンさんに

 そのような事を注意されてたじゃないですか。

 今日のヤマモト様はいつもと別人のようです」

ヤマモトはハッと目を見開き、椅子から立ち上がるとファブレに頭を下げる。

「そうだ、君の言う通りだな。私が悪かった」

「あ、頭を上げてください。聞き入れて頂ければ結構ですから!」

ファブレはどうしていいか分からずわたわたと手を振り、

ヤマモトはフフッと笑って椅子に座りなおす。

「すまないな。どうも寿司に関してはガイジン、日本人以外はどうせ上手く作れないだろうという

 傲慢な優越感があり、君の作った寿司を認めたくないという気持ちがあったようだ。

 愚かで歪んだ愛情だな。あの寿司はとても美味かったよ」

「そこまで真面目に考えなくても・・。ボクにも郷土料理の誇りは分かります」

ヤマモトのリクエストで湯呑みという厚手のコップにお茶を注ぐ。

「寿司の後は湯呑みでお茶だな」

いつもの雰囲気に戻り一息ついたところで、玄関の扉がノックされる。リンが遊びに来たのだ。

ファブレがヤマモトに合わせてお茶と湯呑みを用意する。

「リンちゃん、いらっしゃい」

「今日は湯呑みなんですね、何か和食を食べたんですか?」

「ああ、さっき寿司を召喚してもらったんだ」

寿司という単語を聞いたリンはドヤ顔でファブレに言う。

「ファブレ君にはお寿司は難しかったでしょ? シンプルだけど奥が深いんだよ!」

ヤマモトとファブレは顔を見合わせて苦笑した。

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