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従者物語③ 勇者の専属料理人、ファブレ  作者: yuk1t0u256
一章 魔王編
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11話 2辛400、パリパリチキンにチーズミックス

「あの、もしかしてヤマモトさんですか?」

市場でヤマモトとファブレが買い物をしていると、突然少女から声をかけられた。

黒髪に黒目で、どことなくヤマモトに似た東洋系の顔立ちだ。

「そうだが、君は?」

「わたしリンっていいます。やった、やっと見つけた!」

少女は興奮して嬉しそうな声をあげる。

「もしかして私と同じニホンジンか・・? ひとまず家で話そう、すぐそこなんだ」

「はい」

ファブレは驚いた。まさか異世界人の二人が会うところに出くわすなんて。

家につき、二人にお茶を出す。

「ありがとうございます」

リンは少し落ち着いたのか、ファブレに礼をいいお茶を一口すする。

「あ、美味しい」

「日本茶に近いものを選んだんだ。それで、何かご用かな?」

「はい。異世界で知ってる人が少なくて心細くて、そんなときにヤマモトさんの話を聞いたから

会ってお話したいなと。突然すみません」

「いや、気持ちはよくわかる。会いに来てくれて嬉しいよ」

ヤマモトはリンに微笑む。こうしてみると頼れるお姉さん風で、後で幻滅されないかファブレはハラハラする。ファブレが心配してもしょうがないのだが。

二人はお互いの境遇や、元の世界での暮らし、この世界での驚きや不満などを取り留めなく話し続ける。すっかり意気投合したようだ。

「ところで、彼は? こちらの住人ですよね」

リンはファブレを見てヤマモトに問う。

「ああ、彼は私の従者だ。と言っても戦う力は全くない。1日3回、異世界の料理を召喚できるのだ」

「えっ? 日本の料理をですか?」

「ああ。だが彼の知識や想像を超えたものは無理だ。だから色々味や料理を覚えてもらっている」

「じゃあ、カレーはできますか?」

「一度失敗したが、この前自作でコツを掴んだと言っていたので、かなり近いものができるだろう。

どうかな?」

ヤマモトはファブレに問う。やはりウコンやターメリックなどは入手できなかったが、似たようなスパイスを炒めたときの味や香り、デミグラスソースではなくバターと小麦粉からルーを作る方法も分かっていた。

「はい。たぶん大丈夫だと思います」

「じゃあファブレ、リンちゃんにカレーを作ってあげてくれないか?」

「いいんですか! 楽しみ!」

「ええと、辛さはどうします?」

ファブレが問う。また甘口なんだろうか・・

「普通の辛さ、中辛でお願いします!」

「分かりました」

ファブレはカレーを想像する。白く炊いた米、ビーフシチューを黄色くしたようなルー。ただし味はバターと小麦粉に炒めたスパイスを足したもの。それにすりおろしたリンゴで少し甘みも足す。

「料理召喚」

そして白い皿の上にカレーが盛られ、刺激的な香りが広がる。

「うわあ、いい匂い!」

「うむ、食欲をそそる香りだな」

「もう我慢できない! いただきます」

リンはスプーンでルーとライスを掬い、口に運ぶ。

「これはカレーだわ、美味しい!」

とすぐに次のスプーンを入れるが、そこでポロポロと涙がこぼれる。

「だ、大丈夫ですか?」

ファブレが心配してコップに水を入れる。また辛すぎただろうか。

「うん、大丈夫・・家でカレーを食べてた頃を思い出しちゃって」

泣きながら、しかし笑顔で一口ずつカレーを味わうリン。

「とっても美味しかった。ありがとう、ごちそうさま!」


やがて夜も遅くなりリンは帰っていった。冒険者ギルドで手伝いをしているらしい。

「しかし異世界の人が食べたくなるものはやっぱりカレーなんですね」

「カレーの発祥は別の国だが、もはや国民食といえるメニューだ。家族団らんのイメージもある」

「僕の料理を食べて泣く人がいるなんて・・ちょっとびっくりしました」

「料理人冥利につきるという奴だな。君の料理はすばらしい。自信を持っていい」

「ありがとうございます・・」

ファブレもちょっとホロリとしてしまう。

「明日の朝は私にもカレーを作ってもらおうかな。朝カレーもよかろう」

とヤマモトがリクエストする。

「甘口ですか?」

「無論だ。リンゴとハチミツが味の決め手なのだ」

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