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【WEB版】退屈嫌いの封印術師  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第六章 封印術師と鎖紋の剣
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第百八十一話 いざ世界樹を目指して

 アルカナはギルド本部へ帰った。


 オレは待ち合わせ場所であるソロン像へ向かった。


 その途中で、


「……。」


 道端で縮こまる子ブタを見つけた。


「そこでなにしてんだ、子ブタ」


「あ、お前!」


 子ブタはオレに気づくと立ち上がる素振りを見せるが、落ち込んだ様子で膝を抱えた。


「あっち行け。お前は嫌いだ」


 わかりやすいぐらい、ふてくされてるな。

 さっき軽く叱られたから落ち込んでるのか? あんなのオレからすると叱るというより諭すって感じなんだけど。


「へいへい。退散するよ――」


 あ、1つだけコイツに聞きたいことがあった。


「子ブタ、お前呪いを解く方法って知ってるか?」


「呪いを解く……?」


「知らなそうだな。じゃあいいや。またな」


 手を振り、背を見せると、


「待て!」


 と、呼び止められた。


「なんだよ?」


「お前、呪いを解く方法を探しているのか!?」


「まぁな」


「ば、馬鹿じゃないのか!

 呪いは解けない病だぞ! 呪いを解く方法なんてあるはずがないっ!」


 怒声……しかし、声の隙間に希望が混じってる気がする。

 やっぱ、ちょっとアイツに似てるよな。


「お前、昔から呪いのせいで苦しんできたんだろ?

 呪いを解きたいとは思わなかったのか?」


「お、思ったさ! でも、呪いは解けないって、色んな人が……!」


「誰かに無理だって言われたら諦めるのかよ」


「当然だ! 呪いは解けない、それが常識だ。

 諦めてなにが悪い!」


「いいや、悪くないさ。

 利口な判断だと思うぜ。つまらないとは思うがな」


 オレはある少女たちを思い出しながら話す。


「オレの面白い知り合いはな、誰になんと言われようが知ったこっちゃねぇって感じで、1直線に呪解の方法を探してるぜ。お前と同じように呪いに苦しめられてきた奴だ。呪解の厳しさを痛いほど叩き付けられても、一切足を止めやしない」


「そいつは、大馬鹿だな……」


「ははっ! その通り、大馬鹿だ。

 でもオレは、つまらんインテリより面白い馬鹿の方が好きだ。

 前人未踏を踏むのはいつだって、そんな大馬鹿だと思うからよ。

 なぁキャサリン、いつかアイツに会ってみろよ。シュラ=サリバンに」


「シュラ、サリバン?」


「きっと、お前の生き方を変えてくれるぜ。

 じゃあな」


「ま、待ってくれ!」


 立ち去ろうとするオレの手を、ぬいぐるみの手触りが包み込んだ。


「お前も、呪いを本気で解けると思っているのか?」


「――解くさ」


 オレは呆ける子ブタを尻目に、ソロン像を目指して再び歩を刻み始めた。


 ソロン像の前には、オレの体躯を超えるデカさのリュックが5つと、カーズ・レイラ・ニーアム・マリヨの4人が居た。


「おっ! 来たか大将」


「遅いぞドブネズミ」


「わりぃ、ちょっと話が長くなってな……このリュックはなんだ?」


 カーズがリュックの中を開いて見せてくる。

 そこの詰め込まれるは様々な色の液体が入った大量の瓶。

 前にソナタに見せてもらったことがある。確か名前は――


「〈魔填薬〉……」


「シール君」


 レイラが近寄ってくる。


「リュックは1人1個だってさ」


「……これを持ち運ぶのか?」


 立ち並ぶオレ、カーズ、レイラ、マリヨ。

 その前に、指揮官面をしてニーアムが立つ。


「これから我々は〈ガルズアース〉を目指す! 

 〈ガルズアース〉まではこの5人がメンバーだ。

 〈ガルズアース〉までの距離はおよそ2400㎞……」


 に、


「2400!?」


 そんな距離あんのかよ……!


「す、すごいね……」


 レイラは動揺する。

 マリヨのおっさんも同様に驚いていた。

 カーズだけはハテナを浮かべている。


「大将、2400㎞ってそんなに長い距離なのか?」


「どれだけ長いかわからないぐらい長い距離だよ」


「我々は1か月で2400㎞を踏破する」


 バカじゃねぇのか。

 普通に考えたら絶対無理だ。けれど、魔力を使えばなんとかなるのか……。


「この2400㎞、ただ消化する気はない。

 マリヨさんはともかくとして、お前ら3人にはこれから私が修行を付ける。楽をさせるつもりはない。リュックの中身を見れば、私がやろうとしていることに察しがつくはずだ」


「まさかとは思うけど、魔力を使いまくって薬で回復させて、また使ってを繰り返して、魔力の最大値を増強しようってわけか?」


「そうだ。足を動かせば同時に赤魔も増やせる」


 カーズは呑気な様子で、


「つまり、薬でドーピングしまくって成長しようってことか。

 なにかしらリスクはあるんだろう?」


「リスクはおいおい説明する。

 余裕をもって1日100㎞が目安だ。

 お前ら3人の課題は紙にまとめた」


 ニーアムはオレ、レイラ、カーズにそれぞれ1枚の紙を渡す。

 オレは紙に書かれた内容を読み上げる。


「全体的な魔力量の強化、

 形成魔術の習得、

 黄魔の色装の安定化、

 近接戦闘能力の強化」


「俺様は……全体的な魔力量の強化、

 形成魔術の習得、

 黒魔の習得、

 近接戦闘能力の強化だな」


「わたしは全体的な魔力量の強化、

 流纏の応用、

 虹魔の色装の習得、

 近接戦闘能力の強化……」


「課題の内容は全員ほとんど変わらない。

 移動の合間に修行も並行して行う。

 マリヨさんには料理や道案内、修行のサポートを任せます」


「わかりました!」


 このバカでかいリュックを背負って1日100㎞動いて、

 さらにこれだけの技術を習得するための修行……。

 嫌な予感しかしない。


「全員、リュックを背負え」


 リュックの紐に腕を通し、背中にリュックを吸いつかせる。


「重っ!?」


 赤魔を使わなきゃロクに動けないぞコレ……!


「……こりゃ、死ねるぜ」


「これを背負って100㎞動くって、普通にキツイね……!」


 ニーアムとマリヨはリュックを背負っても余裕そうだ。

 ニーアムはわかるとして、マリヨのおっさんはどうしてあんな軽々と……。


「あ、私のリュックの中身は調理器具とか調味料とかだから、

 君たちのリュックより全然軽いよ」


「そ、そういうことか……」


「お前達にはせめて3対1なら親衛隊相手でも勝てるぐらいにはなってもらう」


 ニーアムのその台詞に、カーズは首を横に振る。


「そりゃねぇぜ、大先生」


 カーズの言葉に同意し、オレとレイラは頷いた。


「だな」

「うん」


 不思議そうな顔をするニーアム相手に、

 カーズ、オレ、レイラは言葉を連ねる。


「一対一で」

「勝てるよう」

「仕上げてください」


「……ふんっ。お前ら次第だ」


 ニーアムは〈ユヴェイオン〉の外へ足を向ける。


「準備はいいか? 出発するぞ」


 こうして、オレ達は世界樹へ向けて歩き始めた。

 重い重い足取りでオレ、カーズ、レイラは歩き出す……いつか、この足が軽くなると信じて――

第六章終了!

ここまでお付き合いいただきありがとうございました!


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