第百七十八話 賢人の庭
祭殿の中に居るのは8人。
左から順にマリヨ、カーズ、オレ、レイラ、ニーアムと並ぶ。
正面にはアルカナとミスト。
レイラの膝の上に着ぐるみ娘が座っている。
「ギルド総大将殿、改めてお願いします」
仕事モードのニーアムが、文句のつけどころのない姿勢で話を切り出した。
「我々と手を組み――」
「いいよ! 一緒に騎士団ぶっとばそー!」
軽く、本当に軽く、アルカナは承諾した。
「ミッス君からシー君の話を聞いた時にはもう、心は決まっていたよ」
「だったら試験なんてやらずに、オレと会ってくれればよかったじゃないか」
「そういうわけにもいかなかった」
とミストは言う。
「お前ら、これは見たか?」
ミストは煙に乗せて、オレ達の前に紙をばら撒いた。
オレたちの手配書だ。
「お前らの首を求めて賞金稼ぎやら、騎士団やらが〈ユヴェイオン〉に流れて来たんだ。
そいつらを排除する間、お前らには安全な場所に避難して欲しかった」
「それで試験を受けさせてゴーレムの中にぶち込んだってわけか」
納得。悪くない手だ。
実際こんな場所ですらあれだけ狙われたんだ。外にいたらもっと来ただろうな。
「それだけじゃないよ」
アルカナは補足する。
「ヴァンハーツの皆を説得するために君という人間をアピールしたかったんだ。
三次試験の様子はずっと観察させてもらった。マリ君を助けるところも全部ね。君が情に深い人間だと言うのは皆によく伝わったはずだ。ミーが無理やり命令して動かすより、効率的に彼らを利用できる」
「僕は反対だ!」
レイラの膝の上から着ぐるみ娘は飛び出した。
「なんでだいポニー?」
「騎士団と戦えば、ギルドのみんなが危険に晒される……。
ここのみんなはぼくにとって家族なんだ! こんな奴らのために、みんなが傷つくのなんて絶対に嫌だ!!」
なんとも、言い返しづらいな……。
「それにコイツらはぼくを臭いと言った! 許すまじ!」
さっきの発言より圧を感じるのは気のせいか?
「お嬢、みんな合意の上です。
無理やり戦場に行かせることはありません。
あんまりワガママ言わないでください」
「ぼくは反対だ! ぼくは絶対に協力しない!」
「別に、その子豚1人ぐらい居なくてもいいだろう。話進めようぜ」
「シー君、そうはいかないよ。
彼女はこう見えてもウチの最高戦力。“天に仇為す者達”の1人なんだから」
「なちゅ、なんだって?」
レイラがオレの腕を引っ張り、耳に唇を寄せてくる。
「知らないのシール君?
“天に仇為す者達”は魔族が恐れる魔術師のこと。再生者に単独で対抗できる人達を言うんだよ。おじいちゃんやアドルフォスさん、ソナタさんはみんな“天に仇為す者達”に数えられてるんだから」
「なに!?
じゃあコイツが、爺さんやアドルフォスやソナタと同格だって言うのか?」
「ふんっ!」
こんなふざけた恰好の奴が、オレより強いってのか。
いや、コイツの呪いと祝福の力を考えればわからなくもないか。コイツの姿を見た瞬間、大抵の人間は動けなくなるもんな……。
「子豚……じゃない、キャサリン。頼む、力を貸してくれないか?」
「嫌だね! べーっだ!」
このガキ……!
「ポニー、シー君とは仲良くしていた方がいいよ。
彼は君にとって、この先必要となる人物だからね」
「総大将様……それは一体どういう……?」
「答えはミーが教えるべきじゃないかな。
ポニー、いつまでも殻に閉じこもったままじゃ、昔と変わらないよ」
声色は落ち着いていたが、アルカナは間違いなくキャサリンを叱っていた。
キャサリンはしょぼんと肩を落とし、レイラの膝の上で固まった。
「話を進めていいでしょうか?」
ニーアムが急かすように言う。
「まずは、君たちの行動予定を聞こうか」
「我々ガルシア組は〈ユヴェイオン〉を出た後、東北にある異常気帯領域を抜け、賢人に会いに行くつもりです。歴史の記録者たる賢人なら再生者、凰帝の名を知っている可能性が高いと見てのことです」
「賢人に会いに行く……ということは、君たちが目指す場所は賢人の庭――」
「はい。世界に4つある世界樹の内の1つ、〈ガルズアース〉」
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