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【WEB版】退屈嫌いの封印術師  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第六章 封印術師と鎖紋の剣

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第百七十五話 バルハとアルト

 ぼやけた景色が見える。


 どこだ? 夢の中か?


 オレの瞳には本が映っている。この本は……見覚えがある。


『すまないな、アルト』


 視界の端に、オレは老人を捉えた。

 忘れるはずのない人物だった。バルハ=ゼッタだった。

 爺さんの前には、1人の女性が立っている。魔女のようなローブを着た女性だ。



 そうか、いまオレが見てるのはあの日の記憶か。



 来訪者が来た日だ。

 あの日は聞こえなかった爺さんと彼女の会話が聞こえる。


『アイ君、ミーに任せてよ。ここから出よう?

 最後に皆に挨拶しようよ?』


 アルトと言う名の女性は、涙声になっていた。


『それはできない。まだ、やるべきことがある。

 アルト、いざという時は彼を助けてやってほしい。

 あの子はきっと、希望となる』


『アイ君……!』


『君と会えてよかった。

 君たちと出会えてよかった。

 宝物のような日々をありがとう。

 さようなら。アルト……』


 彼女は涙を一粒落とし、去っていった。



 ---  



 パチッと瞼を開く。

 真っ先に目に飛び込んできたのは男の顔だった。


「よっ! おはようさん、大将」


「カーズ……目覚め一発目にお前の顔は勘弁願いたいな」


「わりぃ、そこまで気が回らなかった。

 次は美女を用意しておこう」


 体を起こす。

 首を回す。


 なんだここ、明るいな。壁沿いにランプがいっぱいある。尻の下には温かい石床。、広い空間だ。

 前に見たヴァンハーツ幹部の面々が居る。着ぐるみ娘とミストも居る。


 他にはマミーコンビと、カーズと、マリヨのおっさんとイージス、あとは見知らぬ2組。


 合格者とヴァンハーツの幹部が集まってるようだ。

 合格者は横一列に並び、ヴァンハーツは両脇に縦に並んでいる。


「どこだここ?」


「第100層にある祭殿の中だ。

 今は総大将殿の準備が整うのを待ってるとこ」


 オレはカーズの体を見る。


 カーズの体に傷がない。オレの体も痛みがない、視線を落とすとオレの傷も治っていた。


「マリじぃが治してくれたんだ」


 カーズがオレの疑問を察して答えた。


「そっか。ありがとな、マリヨのおっさん」


「いやいや、礼を言うのは私の方さ。君のおかげで――」


「おふたりさん、待ち人が来たぜ」


 カーズの目線が動く。

 カーズの目線の先を追う。

 オレ達の正面にある羽衣のようなカーテンを手でどかし、ギルド総大将は現れた。


 三角帽、マント。右手人差し指を除き、全ての指に指輪をしている。


「ひゅー、とびっきりの美人じゃねぇか」


 カーズの言う通りだ。

 綺麗な紅い眼と煌びやかな長髪。スタイルも抜群だ。


「三次試験、合格おめでとう。

 ミーがギルド総大将のアルカナだよ」


 アルカナ、確かすげぇ有名な錬金術師の名前だったよな。 

 オレの持つ“オシリスオーブ”や〈ユヴェイオン〉の結界はアルカナが作ったって話だ。

 アルカナが拍手を始めると、ヴァンハーツの面々が続いて拍手を通過者に送った。


「さて。話の前にまずは……」


 アルカナのつま先がオレの方に向けられた。


「え?」


 ぼふん。と鼻から耳にかけて柔く温かい感触が当たった。

 アルカナの豊満な胸がオレの顔を包み込んだのだ。




「会いたかったよシー君ッ!!!」




 この場に居る全員がどよめいた。

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