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4 社交界デビューとはじめてのお友達

どきどきの社交界デビューがやってきた。

ドレスは水色に白のレースのAライン。


「ああ、シンプルなのにこんなに可愛くてどうしましょう。あと、どこを削ったらよいかしら…」

「とりあえずネックレスは止めておこう」

「髪の毛のアップ位置も下げませんか?このままでは目立ってしまいます。」

「そうだな。やってみてくれ。ぐはっ…可愛い…っ」


家族と侍女達総出で、作戦を練ってくれる。


「もうこれでいいよ、大丈夫だよ」


私はパーティー前なのにすっかり疲れてしまった。

お兄様の社交界デビューが大変すぎたから、みんなものすごい過保護だけれど、私はいうほど大したことがないと思う。

女の子の場合はお化粧するし。


両親もようやく妥協したようだ。


「そうね、そろそろ行かないと遅刻するし、これで行きましょうか」

「そうだな。もし騒動が起きたらすぐに帰ろう」


お兄様はお留守番。お父様とお母様に連れられていきます。ぶるぶる。


****


あんまり外出したことがなかったから、大きいシャンデリアや真っ赤なカーペット、きらきらと美しく着飾った人たちは、すごくすごく刺激的だった。


「わあー、すごい!綺麗、見てみて、お父様お母様」


わくわくにこにこ。お友達できるかな?


「続いておなりになりますのは、ウィルソン家のご令嬢、プリシラ様です。」


会場に入る時に、司会者がアナウンスするらしい。

ふーんと聞いてたら、ざわっと会場が揺れた。


「ウィルソン家のご令嬢」「エドガー様の妹君」「おおなんと愛らしい」「あれが」


色んな人が色んなことを言うので多くが聞き取れない。ざわざわざわざわ。

怖くなってお父様の裾をつかむけれど


「行きなさい。私達は2階で見ているからね。」


と小声で送りだされた。

保護者はここで別れて2階フロアに行くのだ。


後ろがつかえてるので勇気を出して一人で歩き出す。

仕方ない。これがデビューだ。

にこっと笑って、自分にできる最大の優雅さでお辞儀をした。

かくして私は拍手を以て迎えられた。


その後もしばらくは子息子女の入場が続いて、入場の度に一生懸命拍手をする。


いっぱいいるなあ。名前覚えられない。


まあでもいっか。いずれにしても、私の前に入場した人のことは、名前がわからないわけだし。

仲良くなってから一人一人に自己紹介したらいいよね。


「プリシラ様、飲み物どっちがいいですか?」


声をかけてくれる子が現れた。親切な子だあ。

ありがたくオレンジジュースっぽいほうを受け取った。


「ありがとう。あの、お名前教えてもらえませんか。」

「どういたしまして。レイチェルと言います。」

「レイチェル様…」


黒髪ロングの女の子だ。前世のテレビアニメの某美少女戦士のレイちゃんが、さくらんぼもってるイメージで覚えよう。


「…うん、覚えた。よろしくね、レイチェル様」

「こちらこそ。ねえねえ、なんでプリシラ様の入場の時ざわついたの?有名なの?」


とても不思議そうに聞いてくる。


「あ、それで気になって声かけてくれたんだね。んー、たぶんお兄様のせいかな?私はなんでもないよ。」

「ふうん、大変だね」

「お兄様はね」


ふふふと笑う。なんだ、社交界デビューって楽しいな。


最近した失敗の話とか今朝からのどたばたを話して笑ってると、レイチェルが顔色を変えて口をむすんだ。


「レイチェル様、どうしたの?」

「あの、私また後できますね」


そう言ってそそくさとどこかに行こうとするので、周りを見ると3人の令嬢が近づいてきた。


「プリシラ様、私達も仲間に入れてくださいませんか?」


3人のうち1人が前に出てにこっと微笑んできた。

ブリなんとかさんと、エリなんとかさんと、マリなんとかさんというらしい。名前覚えられない。


「あらさっきまで2人だったかと思いましたがお一人でしたのね」

「先ほど見えたのは影じゃないかしら」

「もしくはカラスじゃないかしら」

「あら、カラスなんて場違いなもの、こんなところにいませんわ」


くすくすと笑い始める。


心がざわざわして小さく震える。

こんな人達を見たことがあった。たぶん前世で。

前世の私はこんな風に笑われてて、何も言い返せなくて、うつむいて…ただただ嫌なことが通り過ぎるのを待っていた。


でも。

私は変わったんだ。前世の私が憧れた理想の私に。

だから、心も変わりたい。手のひらをぎゅっと握りしめた。


「なにが楽しいの?」

「え?」


どうやら聞こえなかったようだ。

うう。がんばって言ったのに。

聞き返されたから、さっきよりももっと大きな声で言う。


「私の友達を馬鹿にして、なにが楽しいの?」


淡々とした疑問を投げかけると、おどおどし始めた。

後ろの2人は視線をそらすので、先頭のブリなんとかさんを見つめる。


「あの、あの子と友達になるのは、止めたほうがいいですよ。」

「どうして?」

「みんな、仲良くしないほうがいいと言うわ」

「みんなってどなた?教えてくれたら一人ひとりに確認するわ。あなたから聞いたけど本当にそう言ったんですか?って」

「……」

「私の友達を侮辱しないで。」


にらむとうつむいて、ブリなんとかさんも何も言わなくなった。


会場にダンスが始まるアナウンスが流れる。

レイチェルを探しに行こう。

小さなケーキ2つとフォークと綺麗な色の飲み物を2つとった。

バランスが難しくてしばらくもたもたして、やっといい持ち方を見つけて会場を出た。


私の勘が、中庭だって言ってる。

これからダンスが始まるんだもの。このタイミングで一人になりたいなら、私だったらそうする。

ほらいた。花壇の影に隠れてた。

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