31 ◆エドガールート 甘噛み
「いつから起きてたの?」
「さあ…いつだろう…?途中からしか聞けなかったかも。だから、もう一回言って?」
「ええ、無理だよ。…あのね、エドガーが好き…。一人の男の子として、好きだよ」
どしゃ降りの日に待ってもらった応えを返す。
そして膝の上のエドガーの頭をなでる。
なんだか甘い雰囲気になる。
エドガーが私の手のひらを、口まで持ってきてキスをした。そしてそのまま、私の手のひらの柔らかいところを、唇でついばむように何度も何度も甘噛みする。
「…止めて、エドガー…。なんかくすぐったくて…恥ずかしいよ…」
「ふふ、ごめん。嬉しくて。…こんなに早く、返事がもらえると思わなかったんだ。何年でも待つつもりだったし、ダメでもいいと思ってたんだ…」
「どうして?」
「言ったでしょ?今が一番幸せだって。…今以上の幸せな未来が想像できなかった」
そう言って笑う。
変なの。ものすごくもてるくせに。
私がお見合いをしないのは、お父様が手放したがらないからだけど、エドガーがお見合いをしないのは、そのまま過ごすほうが、お見合いするよりも好条件の女の子が、どんどん寄ってくるからだ。
最近だと、隣国の王女様からラブレターが届いて、ウィルソン家を大変ざわつかせた。最悪国際問題になりそうだったから今日までデートが延期になったんだけど、なんか上手く潜り抜けたみたい。しかも、困った時はいつでも力になると言ってもらえたらしい。どうやったんだろう?
ちなみにその時のエドガーの対応に、お父様が大変感銘を受けていた。
「エドガー…なんてすごい男なんだ…。父さん長い間厳しくしててごめんね」
「もういいんだよ、父さん」
みたいな三文芝居があって、なんだかめちゃめちゃ仲良くなっていて、私の今までの心配なんだったの?って思った。
とにかくエドガーは人たらしなのだ。
****
エドガーの体調が良くなってからは、絶叫系は避けて色々遊んだよ。
いにしえの洞窟とか面白かったな。すごい暗くて怖い洞窟を進むの。途中コウモリがキーキー鳴いてたりしてさ。でも洞窟の一番奥に進むと、すごく綺麗な場所に着くんだよ。で、また帰りが怖いの。恐怖9割、幸せ1割って感じなんだけど病みつきになりそう。
そんな感じで一通り遊んで、日が暮れてきて帰った。
メアリーとサイモンも、なんだか今までよりも少し距離が近づいてるような気がする。Wデートみたいで楽しかったな。これからもエドガーとデートする時はこんな感じになるのかな?
帰りの馬車の中でね、手のひらの甘噛みがどんなに恥ずかしいのかをエドガーにもわからせようと思って「ねえエドガー、手貸して?」って言ってやり返したんだ。
「これはやばい…無理無理無理、もう止めてプリシラ…うわ本当無理…お願い止めて…」
そんな反応が面白くて止めなかったら、目が座ったエドガーにやり返されて「ごめんなさいごめんなさい!…止めて…や…あ…ごめんなさい」ってなったりして、いつの間にか距離が近づき過ぎてることに2人同時に気づいて…さーっと離れた。
そして2人とも明後日のほう向きながら、明日の天気の話とかして帰った。




