28 ◇エリックルート 恋の応援
王城で仲良くなったジュリーから、一緒に天文台に登った時に、一生のお願いがあるって言われたの。
「婚約解消なんだけどさ…あと少しだけ待ってほしいの…今、好きな人がいるんだ。その人のこと私も頑張ってみたいんだよね。…もし、それで上手くいってもいかなくても、結果が出たら絶対に解消するから。あと…1ヶ月待ってもらえないかな?」
それを聞いてエリックが私のほうに振り返る。
「プリシラいいかな?…ジュリーがこんなこと言ってくるの初めてなんだ。恋人がいないまま解消すると、たぶんまたお見合いばかりの毎日になる。」
そう言って私に聞くということは、それでも私の希望を優先する、ってことなんだと思う。
そんなこと聞かなくても、私の答えなんて決まっているのに。
「もちろんいいよ。ねえジュリーの好きな人ってどんな人?」
そして私もなにか手伝おうと思ってたらさ、私達と同じクラスの…ライム君だって。えええー!
「え、ライム君?どうして?あ、変とかじゃなくて」
「うん、ライムはいい奴だけど…ジュリーと関わりいつあった?俺だって学園でジュリーとすれ違うことがないのに」
「んー…なんかね、一時期よく叫んでるの聞こえたんだよね。エリックー!って。だから何かなあと思ったのが始まり」
「え!叫んでたから好きになったの?」
「いやーうーん、そう、かな?ええと、いつも一生懸命なにしてるのかな?って気になってさ、声かけたんだよね。そしたらエリックを応援してるんだって。よくね、プリシラの場所を教えに走ってはエリックに叫んでて、そしたらエリックがいつもその場所に向かって走るのが見えたよ」
はて、なんの話?って思ってエリックを見ると、ちょっと気まずそうに教えてくれた。
「えっと、一時期プリシラが先生から用事頼まれまくってた頃、俺が離れてて気づいてない時によく教えてもらってたんだ。ライムだけじゃないけど、ライムが一番多かったかもしれない。」
「あ、それで…いつもどこからともなく来ては手伝ってくれてたんだね」
へーへーへー。
よく、エリックどこから来たんだろうと思ってたけどその疑問が今解けた私。
「そうやってさ、友達の為に一生懸命になってさ、走って叫んで喜ぶ人、かっこいいなって思ったの。
最近はもう走ってるところ見かけなくなって、声かけるタイミングもなくなったけど…。
でも、エリックと知り合いみたいだから次回エリックに会った時に相談しようと思ってたんだ!だからね、今日王様に呼ばれてちょっとラッキーと思ってたんだよね。定例報告会だとまだずっと先なはずだったから」
「ライムならどこにでも呼び出せると思うけど、どうする?」
「うーん、私ライム君のことほとんど知らないからなあ。エリックとプリシラはなんかライム君の趣味とか知ってる?」
「趣味かはわからないけど、音楽編集得意だよ。前、クラスでダンスが流行ってた時に、休み時間の長さに合わせて編集とか編曲してくれてたんだ」
「音楽!わかった!じゃあそれでいく!とりあえず呼び出して!」
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そして翌日、即効仲良くなっていた。
どうやったんだろう?
私もエリックももっと頑張って後押しするつもりだったからびっくりしたよ!?
でもまあ、ジュリー素直だし明るいし可愛いし、そんな子が話しかけてきたら…もし私が男の子だったら舞い上がりそう。さらに趣味が合うなんて最強…あ、それで趣味を聞いてきたんだ…!
そのさらに次の日にね、エリックに「プリシラちょっと来て」って言われて廊下に行くとね、エリックが笑って窓の外の中庭を指差すの。遠目にも、とても楽しそうに2人が話してるのが見えた。
それ見て私がさ「上手くいきそうだね、よかったね」って言ったらね。
「うん、ジュリーはいい奴だけど人によっては好き嫌いが分かれるタイプだから…よかった。相手がライムでよかった。ジュリーが傷つかなくてよかった。昔からすごい助けられてたんだ…幸せになってほしいってずっと思ってたんだ。」
そうやって優しい目で言うの。
ちょっとだけ嫉妬しちゃったけど、内緒にした。
そして、約束通り1ヶ月後、エリックとジュリーは婚約解消したんだ。




