25 ◇エリックルート 王城デート
「エリック、王子様だったんだね」
「うん、あまり言わないようにしてた。普通の学園生活をしたかったんだ。」
「ふうん、そっか。でももし言っても、クラスの子達も態度変わらないと思うよ?」
「うん…そう思う。でもやっぱり緊張はするよ。まあ戴冠したらバレるし、黙ってられるのも数年くらいだけどさ」
「戴冠式いつ?」
「うーん…父がいつ引退するかだなあ…。最近旅行に行きたそうにしてるからやばいかも」
「そうなんだ…もうしばらく頑張ってほしいねえ」
馬車の中でそんな話をしながらお城のゲートをくぐる。
わあ、お城だあ。こんな場所に入れるなんて夢みたい。
「近くで見ても大きくて綺麗だねえ。あ、ねえねえ、エリックあれはなに?」
「ああ、あれは研究棟の天文台だな。入れるよ、行ってみる?」
「うん、行きたい!他にはどんなのがあるの?」
「もちろん居住スペースがあるけど…住み込みの人が多いから、小さな街みたいな区画もある」
「へえー」
「とりあえず街区画をぶらついてから昼食にしようと思ってたんだ。そのあと天文台、みたいな感じでいいかな?」
「うん!」
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街区画はねえ、なんか前世のフリーマーケットみたいな感じだった。畳1畳くらいのスペースが1店舗。様々なものを並べてるお店が立ち並ぶ。アクセサリーや洋服や小物もあれば、食べ歩きできるようなものも売ってる。
お店は屋内と屋外にあって、人が多くてすごい賑わっているの。
はぐれないように私達は手を繋ぐ。
「手を繋ぐのも、まだ照れるな…。プリシラとこうしてるの、実はまだ信じられないんだ。」
そう言ってはにかみながら笑うから、私もつられてはにかむ。というかなんか、心がくすぐったくてによによする。
それで私は、手が繋がっているエリックの腕を抱きしめて微笑むの。エリックが伝えてくれる心の分だけ、私も心を返したい。
「私も、エリックから手を繋いでくれるの夢みたいって思うんだ。お付き合いって、こんなに幸せな気持ちになるものなんだね…」
すると、エリックが私を嬉しそうに真っ直ぐに見つめて、私の髪をなでた。そして顔を近づけて囁く。
「俺も、手を繋げる距離にいられるのが夢みたいだ…。付き合う前から、本当はずっとこうしてプリシラに触れたかった…」
キスされるかと思った。恥ずかしくて顔が赤くなるのが自分でも分かる。エリックも恥ずかしそうに笑って、2人で色んなお店を冷やかして歩いた。食べ歩きしておいしかったお菓子は、帰りにお土産にしてくれるって。
「そういえばさ、馬車を降りてから護衛いないね?こうやって出歩いてて大丈夫なの?」
「うん、学園みたいなもんだよ。所々に警備は配置してるけど…この中には身元がしっかりしている人しかいないから、だいたいの区画は自由に過ごせるんだ」
「へー、外みたいなのに、家みたいなんだね」
不思議だなあと思いながら周りを見る。新しいものばかりで見るの楽しい。
「…ところでプリシラ。父に昼前に寄れって言われてるんだ。突然で悪いけど、挨拶に付き合ってもらえる?」
「うん、構わないよ。私、エリックのお父様に気に入ってもらえるように、頑張るね」




