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2 エドガー視点1

「甘えていいよ。いつでも言ってね。」


寝てると思ったんだろう。とても優しい声が聞こえる。


それまで人前で寝るのは怖かった。

この家の子供じゃないこととか、可愛いげがないといった陰口とか、知りたくないことを知るのは大体そんな時だったから。


でもプリシラの言葉はとても温かい。

体温も、とんとんと背中に触れる小さな手も。


プリシラは家中の者に好かれていて、甘えん坊でわがままで明るくて優しくて、何もない自分をみじめにさせることも多かった。

でも、プリシラ自身の言動に救われているところもあって。


プリシラが眠った気配に気づいてゆっくり起き上がる。

ソファーの背もたれに変な角度で置かれてる頭を、先ほどの自分がされたように膝にそっと置いた。ふわふわな金髪をなでる。


「お父様にいじめられてると思った?」


そっとつぶやく。助けにきてくれたのかな。そして、元気づけようとしたんだろうか。


「ぼくは大丈夫だよ。だから、安心しておやすみ」


たぶん、君がいるからぼくは大丈夫なんだ。

だから、この家を守れる大人になるよ。


****


「あら、エドガー様とプリシラ様」

「やあ、マリー、ちょうどよかった」


廊下で会った侍女に眠ってるプリシラを渡す。

プリシラの手が服にしがみついてて外すのに手間取った。


「あらあら、遊び疲れちゃったんですね。ありがとうございます。」


「うん、後で置いてきた絵本も持っていくね。あ、勉強部屋の花瓶が倒れて割れてしまったから、後で片付ける人を呼んでもらえるかな?」


「はい、わかりました。…お勉強は大変ですか?」

「ああ、まあ、ね。」


気遣う問いに苦笑して答える。

お父様の怒鳴り声が聞こえたのかもしれない。


「まあ、期待に応えられるようにがんばるよ。」

「こんなこと言う立場ではありませんが、ご無理はなさらないよう。プリシラ様も心配しますよ」

「タイミングいいなと思った。やっぱり心配してきてくれたんだね」


マリーがしまったという顔をして、ぼくは笑う。


「…プリシラが悲しむようなことは何も起こらないよ。お父様もぼくも、このラインがあるから、今以上に悪くなることはないんだ。」


プリシラの柔らかい髪をなでる。


「このゆるふわは本当病みつきだ…」

「エドガー様も魅惑のゆるふわですよ。恐れ多くて触れませんが。」

「え、別に触ってもいいけど?」

「いえいえ、この閉鎖社会で生きられなくなりますので。」


侍女の世界も大変らしい。

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