19 ◆分岐点 If... エドガールート
ここから◆エドガールートです
「お兄様は…お兄様はね、私達、おかしいと思う?普通の兄妹じゃないと思う?」
私はね、お兄様ならきっと「今のままでいいよ」って言ってくれると思ったんだ。
私がどんなに甘えてもわがまま言っても、いつだって優しかったから。だから、この時も、今の私が一番欲しい言葉をくれると思っていたんだ。
でもお兄様は…とても悩んで、苦し気な顔をして、ためらって。そして、言った。
その言葉はとても、私にとって予想外だった。
「いびつだよ、ぼく達の関係性は…兄妹としてはいびつなんだ。そして、もっと言うなら、ぼくとプリシラは本当の兄妹でもない。
ぼくはプリシラが好きで…妹ではなく、一人の女の子として好きで…。
だから、ぼく達の関係がいびつになってしまったんだと思う。だから、ぼく達の関係はおかしいけど…これについては、プリシラは何一つ悪くないよ…」
私は頭が真っ白になってしまって、口をつむいで顔をそむけるお兄様を見つめることしかできなかった。
そうこうするうちに馬車が家について、先に出たお兄様がいつものように、私に手を差しのべる。
でも、私が手をのばす前に、お兄様は差しのべた手を引っ込めてしまった。
「ごめんメアリー、今日はお願いできるかな?」
と、私の護衛に声をかけるとスタスタと私を置いてきぼりにして歩いて行ってしまった。
メアリーが慌てて私をエスコートしてくれる。
私は、涙が出ないようにするので精一杯だった。
こんなこと、初めてだった。
私が変なこと言ってしまったせいで、形のない大事なものが壊れてしまった。
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「ねえ、お父様…。私とお兄様が兄妹じゃないって本当?」
家族団らんの夕食の時間。
私がそう質問すると食卓に緊張感が張り詰めた。
使用人達も動きを止めて、食器の奏でる音も、人がいるざわめきも消えて、しんと静まりかえる。
「プリシラ、どこでそれを…」
「…ぼくが言った」
「そうか…」
お父様とお兄様が、そう、短く言葉をかわす。
「そうだ。エドガーは、血が繋がっていない。家の跡取りとして、物心つく前に引き取った子だ。」
そう話すお父様に、私はさらに言葉をぶつける。
「でも、だって、お兄様の髪の毛はゆるふわで、私もお母様もゆるふわだわ!…色は、誰とも、違うけれど…」
そう。小さい頃、疑問に思ったことがあったんだ。なんでお兄様だけ銀髪なの?って。
「じゃあ、お兄様はいつから知っていたの?みんな知っていたの?私だけ知らなかったの?」
「知る必要はないと思ったんだよ、プリシラ。エドガーにも直接話したことはない。…自分から疑問を持ち調べたんだ。」
「だって…!」
私はそれ以上言えずに、ぼろぼろと涙を流す。
だって、お父様が辛くあたるんだもの。
だって、お母様が無関心なんだもの。
いつからお兄様は、自分が家族じゃないかもって思っていたの?
いつから、誰にも相談せずに調べてたの?
そうして、誰とも血が繋がってないと知った時、何を思ったんだろう。
小さい頃、お父様が怒鳴っていた日、うつむいて手のひらをぎゅっと握りしめていたお兄様を思い出す。
それでもお兄様は、私が近づくと、いつも優しく微笑んでくれたんだ。
色んなことが頭の中をぐるぐるして、小さい頃の出来事や、先ほどの馬車の中でのやりとりや、その時の苦しそうな表情を思い出して。
そうして、小さな頃顔をそむけていた幼いお兄様と、馬車の中で顔をそむけたお兄様のイメージが重なった時。
ああ、私が傷つけた。と唐突に思った。
「…ごちそうさまでした。」
と言って、私は手をつける前だった食事を残して席を立つ。
そして自分の部屋に戻って、私の部屋付きの侍女マリーに「一人にしてほしい」とお願いして、部屋の中に閉じ籠った。




