16 ◇エリックルート お友達の終わり
私は固まって、エリックを見つめる。
動いてるつもりがないのに、足元で小さく波紋が広がり続ける。
エリックは口を手で隠して、顔を赤くして、自分自身のセリフに最初はびっくりしているみたいだった。
だけどやがて色々合点がいったようで、しばらく考えてから、ゆっくりと言葉を選びながら話す。
「プリシラの目を通して見ると、世界がすごく、綺麗に見えるんだ。プリシラといると幸せな気持ちになるんだ。俺は、プリシラの隣が心地よくて…独り占めしたくて…それで、プリシラが他の人に触れるのを想像するのがつらかった。だから、あんなことを言ってしまったんだと思う。」
視線を揺らしながら、不安げに、私を見つめて、愛を伝える。
「プリシラ…自由な君が好きだ。だから、この前のことは忘れてほしい。もう、俺はこの先、プリシラの自由な気持ちを遮らない。どんな君も受け入れると誓う…。今よりもずっといい男になる。だから、俺と、付き合ってほしい…。」
ああ、もうすぐチャイムが鳴るはずで、次の授業が始まるはずだ。
私達は教室に戻らなきゃと、私の中の冷静な部分が、こんな時にそんなこと考えている。
だから仕方なく、そろりそろりと空の道を歩く。
エリックが立っている場所…ドアの前の小島みたいな石畳を目指して歩く。
私は私の気持ちがわからなくて。
なんて言おうか必死に考えている。
入り口を見ると不安げな顔で私を見ていたエリックと目があって見つめあう。
すると私の足はピタリと止まってしまって。
私はそれ以上、エリックに近づけなかった。
だって私、どうしたらいいか、わからない。わからないの。
今の私では、エリックの真剣な気持ちに応えられない。
「プリシラ…」
エリックがせつなげに私の名前を呼ぶ。
授業の始まるチャイムが聞こえる。
仲の良いお友達だった、私達の関係が変わってしまう。
 




