15 ◇エリックルート 屋上と告白
ここから◇エリックルートです
どしゃ降りの翌日はとてもいい天気で、私はいつも通り学園に向かう。
教室に入ってみんなにおはよーと挨拶したりされたりして席に座ると、エリックがわざわざ私のところまできて、少し緊張した顔をして「おはよう、プリシラ」と挨拶をした。私も一応「おはよう、エリック」って返したよ。
でも、エリックの顔を見たら、休みの前日のことを思い出して、心の中にもやもやとした暗い気分がただよう。
だから私は、挨拶をしてからすぐ顔をそらしたんだけど、またエリックが私の名前を呼ぶから「なあに?」と振り返った。
「あのさ、この前のことだけど…」
「いいよもう、気にしてないから。その話は終わろ?」
私は早く話を終わらせたい。でも、エリックは私の嫌な態度に戸惑いながらも一生懸命食い下がってくる。
「お願いだプリシラ、この前はごめん。また嫌な気分にさせてしまうかもしれないけど、あの日の話をやり直させてほしい。」
ええ…いやだ。あの日は帰りの馬車の中で、お兄様にいっぱい頭をなでなでしてもらって、そうしてやっと気持ちが回復したんだよ?
でも、エリックがあまりに真剣に言うから、結局私は降参して「わかった、いいよ」と苦笑いした。
そしたら、場所を変えたいって言うの。
一番長い休み時間に、連れて行きたい場所があるって。
さっき、いいよと言っちゃったから、私は「わかった」と言った。
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そうしてどこに行ったと思う?
私ね、ここに入ってみたいってすごく思っていたの。でも鍵がかかっているから普段は絶対入れない。
「なんで今日は開いているの?」とエリックに聞いたら「散々頼み込んだんだ」と答えた。今日は内緒だけど1日中開放されてるんだって。
私とエリックは今、学園の屋上にきていて、カチャリとドアノブを回した。
「…あ、そういえば昨日はどしゃ降りだった…。ごめん、プリシラ。ここならゆっくり話せると思ったんだけど…」
と、申し訳なさそうにエリックが言う。
前日の雨で屋上全体に広がる大きな水溜まりができていたから。
でもさ、私達の靴底はとてもしっかりしていて、ゴムの厚みもあるから、水溜まりの中に入っても大丈夫だと思うんだ。
それにね、水溜まりはとても透き通っていて、空を映して、きっと普段よりとても幻想的で素敵なタイミングだと思ったの。
「私はこのタイミングの屋上、嬉しいよ?だって地面も空みたい。ねえ、水溜まりの中に入ってみようよ」
だから私はそう言ってエリックに笑いかけて、そーっと水溜まりの中を歩いた。
地面に広がる青空に、いくつもの波紋が広がっては消えて、とても綺麗。ずっと見てたくて、足元を見ながら歩く。
「こっちに来ないの?」
とエリックのほうを振り返って聞くと、とても眩しそうに私のほうを見ていた。
そしてエリックが言った。
「プリシラ、君が好きだ…」




