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オリヴィエス(ファンタジー世界)作品

光速の魔術と思考実験

作者: 民間人。

はじめに……


 これは我らの世界において、科学と魔術が融合しながら発展していった場合の、一種の思考実験であって、この思考実験に描かれている仮説が、実際に神の作りし世界の真実の姿を示すものとは、必ずしも言い得ない。しかし、多くの研究成果の下では、この思考実験はある種の物理学的研究の極致にあり、必ずしも神の作りし世界の真実の姿と異なるとも言い得ないだろう。

 また、この思考実験は貴きムスコール大公国宰相ロットバルト閣下(故)の後援の下で考査されたものであり、この思考実験に対して疑義を呈する事は、栄えある閣下の威光に背く事となる事もまた、合わせて申し上げておかなければなるまい。



 我々の研究成果によれば、魔術を遠隔地へと作用させるためには、1.魔力を生成する器官の、十分な魔術的素養か、2.正確な計算の下、緻密な法陣術によって、目標地点に特定の事象を生じさせる条件が認められる場合に、これに従って法陣術が発動する条件が揃っている場合にのみ、作用する。

 通常、魔法とは、「物理的な要因によって刺激や変化を与えることなく、「現象」を発現させる術および作用の総称」をいう。即ち、原理的には科学的知見によらずに魔術の作用を発現させる事は可能であるが、一方で、魔法の「作用説」を取れば、エネルギーの作動や変化に応じて、「科学的に」魔法を説明する事が可能であるという学説が存在する。このような研究分野を魔法科学と呼ぶが、現在のところ、魔法科学によって科学的に魔法の限界を示すには至っていない。


 では、魔法を用いる事によって「どの程度まで」科学的事象を捻じ曲げる事が出来るのか、或いは、「どの程度まで」を科学的事象を捻じ曲げる事によって、魔法の限界と定義するのかについて、今回研究協定を結んだプロアニア王国国立科学研究所(アカデミー)物理学公会議(コロキウム)の協力の下で思考実験を行った。


 彼らの研究によれば、実際に科学的に明かされている事象はごくわずかであり、魔法科学も同様に、魔法の科学的説明が可能な領域は限定的であるという。

 その中で、彼らが少なくとも科学によって解明可能な領域は、「光速度の領域内における物理的事象」ではないかと考えている。光速度の領域とは、我々が実際に物理的に計測が可能な事象の速度における限界であり、光速度以上の運動を通常観測できない事から、前掲公会議の正式な研究分野の範囲内としているものである。光速度は名前の通り、光の進む速度の事を指し、ムスコール大公国内の魔法としても、光の歪曲などを操作する魔法が存在する。

 なお、ここではこれらの魔法について四元素説による分類を用いず、作用説における、光のエネルギに作用する魔法である「光魔法」と仮定して分類する。


 この光魔法は、現在の科学的な観測の限界を示すものであり、魔法科学においても、光魔法の解明を、一先ずは最終目標と捉えて研究を進めている。


 では、仮に光速度以上のエネルギーを加えて、光速度以上の物理的な移動を発現させる事は可能なのであろうか。

 前掲公会議の公式声明によれば、季節ごとに光速度の観測を行った実験において、少なくとも、光速度は一定不変であるという結果がプロアニア王国領内の複数の研究成果として報告されているという。

 これについて、ムスコールブルク大学魔法科学・魔法生物学博士ローマン・ルシウス・イワーノヴィチ(故)は、あくまで自身の研究分野外にあるため、正確性を保証しないとしながらも、「仮に光速度が一定不変であるとすれば、どのような速度で移動しているものの内部にあっても、物理現象の法則は同様に作用するだろう。一方で、ある物質が異なる速度で移動している場合には、その見え方は「時間的」・「空間的」に若干の差異が生じる事になろう」という。

 さらに、近年では、前掲公会議において、「光速度以上の速度を目論んで様々な負荷を物質にかける実験」を行った報告において、光速度以上の速度は観測できなかったという結果が報告された。

 これらの観測結果・研究結果及び推測を真とする場合、我々は、光速度以上のものを知る事が出来ず、光速度以上の物理的移動を目論んでエネルギーを加えた場合、光速度以上になる事は無く、エネルギーは異なる何らかの形に変形すると考えられる。


 我々の仮説が正しければ、エネルギーが何に変形するのかと言えば、質量ではないか。つまり、逆の理論を用いて、「物質の質量をエネルギーに変換する事」が可能なのではないだろうか。そして、ある一つの物質の質量をエネルギーに変換して得られるエネルギー量は非常に強力であり、故ロットバルト閣下の目指した、強力な兵器による勢力均衡に基づく、平和的な国際関係の醸成の実現も不可能ではないのではないか。我々は、この兵器の研究を急がなければならないだろう。絶対的破滅の兵器を基礎とした、恒久的な国際平和関係の醸成の為に、プロアニア王国国立科学研究所及び、ムスコール大学附属科学研究所では、今後、この強力無比な兵器に関して共同研究を進める事を決定した。


 ムスコール大学附属科学研究所研究所長 ヴェルナール・コロリョフ1884年の研究所長就任挨拶より引用

物理学は訳が分からないので、正直色々と考えるのをやめて書きました。えぇ。

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