sweet1
ソレは突然おきたんだ
急に真っ暗になる視界
背中に感じる自分のものではない
別の人間の体温
爽やかなシトラスの香りが
鼻腔をくすぐる
ドンっ
私は訳も分からず
そいつを突き飛ばして
逃げ去った…
事の起こりは
私が体育の補習のために
1人体育館で練習をしていた時に
起こった
元々体育が苦手ではない私だったが
どうも縄跳びだけはできず
そんな私につきっきりで
1人体育教師をつけると
言われたのだ
誰がいいかと聞かれた私は
割と仲良くしている1人の
体育教師の名を言った
「あぁ真山先生ね?
彼なら若いし
教え方も上手だと評判だから
きっと一ノ瀬さんも上達するわっ!」
一歩間違えるとイヤミにしか
聞こえないセリフを堂々と
言ってのけた私の担任は
じゃあ頑張ってねと爽やかな
笑顔を残して私の前から消えた
大変憂鬱だが仕方がない
縄跳びができない自分が
悪いのだ…渋々と重い足を
引きずり体育館へと向かう
「おぉっ!
一ノ瀬っ!来たなぁ」
ウッ
爽やかだ爽やか過ぎる
「えぇまぁね…」
「お前俺のこと指名してくれたんだろ?
先生嬉しいよ!」
「だって先生以外の人にしたら
怒るでしょ?」
「そりゃあそうだろ!
だって俺一ノ瀬のこと
スキだしー!」
ケッ
うそくせぇ笑顔…
なんだそのセリフ!
「先生…
早く始めましょう…」
「そうだなっ!」
それから30分ほど私は
練習をかさねた
しかし一向にできない
私に痺れを切らした先生は
急に私の後ろに立つと
ギュッと私の手を握った
「ほぇっ!?」
「いいからじっとしてろ
いくぞっ…?」
ピョンっ
と 飛べた?
そのあともピョンピョンと
先生と一緒に飛ぶ
「わぁー!
凄いっ!」
………………
んっ?
「せんせぇ?」
「駄目だ…我慢できねぇ…」
今まで聞いたこともないような
低い声で彼は囁いた…
ソレは突然おきたんだ
急に真っ暗になる視界
背中に感じる自分のものではない
別の人間の体温
爽やかなシトラスの香りが
鼻腔をくすぐる
ドンっ
私は訳も分からず
先生を突き飛ばして
逃げ去った…
「待って!
奏っ!」
ぐいっと勢いよく腕を引かれた
私は体制を崩して
先生の上へと馬乗りになった
「ハァハァ…
危ねぇなぁ…」
「嫌っ!
離せっ…!
馬鹿やろっ…」
「やだ
離さない
だって離したら逃げるだろ?」
ハァ!?
「当然でしょうっ!」
「なぁ奏…
俺…お前が好きだ…
そうやって俺に怒ってる
目も生意気なことを言う口も
全部愛しいんだ…
だからっ…」
……………
「…っつ……
ごめん…
まだ突然だし…
分かんないよ…」
「あっ…そうだよなぁ…
ごめん…
でも気持ちだけでも知って
欲しかったから…」
バッ
「とっとにかくもぅ
帰るっ!」
私はそう言って
その場から逃げ出した
……………
…ふぅ…………
家に帰り風呂につかりながら
私は考えた
あれはいったいなんだったんだ?
先生が私を好き!?
まだ信じられない
私は生ぬるい湯につかりながら
回らない頭をフル回転させた
よし…
もうあいつとは関わらない!
うちの学校は生徒数も多いし
きっと大丈夫だっ!
一抹の不安はあるものの
自分で決めた計画に太鼓判を押して
私は深い眠りについた…
sweet1END