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マチルダと虹色のゆらぎ  作者: 栗原 あみ
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魔力測定へ

レオンハルト様の案内は、意外とちゃんとしていた。


外側から魔術学院の説明を受ける。魔術学院は運動場と、3棟の建物から成っている。門に近い方から、学院の教授達の研究棟、運動場、私たち学生が授業を受ける学生棟、そして学生寮と並ぶ。大掛かりな魔術の練習は、運動場で行われるという。運動場の端にある円形の建物が食堂らしい。すると、向こうに見えるのが士官学校か。


士官学校のに睨みをきかせていると、遠くにカイルの姿を見つける。おーい、と手を振るとこちらに駆け寄ってきた。


「探しましたよ!馬車でお待ちくださいと申し上げたはずですが!」


「僕が無理矢理連れ出したんだよ。虹色の発動者と話してみたくてね。」


「これは…!」


カイルが何か言おうとしたのを、レオンハルト様が手を前に出し静止する。ソフィーとレオンハルト様のコンビにも思ったんだけど、カイルとレオンハルト様もお互の事をよく知ってる仲のような……。あ、そっか!


「レオンハルト様!カイルとソフィーが私の前に仕えていらっしゃったのは、貴方様ですね?」


3人が一様にこちらを見る。


「この度は、大変優秀な執事と侍女を私に譲ってくださってありがとうございます。発動者になり周りの環境が大きく変わっても、安心出来るのは2人のおかげです。深く感謝申し上げます。」


丁寧にお辞儀をする。顔を上げるとレオンハルト様が微笑んでいる。


「カイルとソフィーが力になっているようで、僕も嬉しいよ。なかなか洞察力があるようだね。じゃあ、僕がなぜ自分の側近を君に送り込んだかも、察しがついているのかな?」


「え?えー…と、親切?」


一呼吸おいて、わっはっはっは、と3人が大笑いする。


「いや、なんというか。洞察力は優れているのに、人を疑うということはしないのだな。」


「そこが、マチルダ様の美徳でございます。」


笑い終わったソフィーが、目尻の涙を拭いながら言う。失礼しちゃうわ。大笑いされた後に、美徳と言われても…ねぇ。


「疑う…と言われましても、悪意は感じませんし…。」


と私は困ってしまう。カイルが片手を自分の胸に当てて進み出る。


「マチルダ様、実は私とソフィーの判断で、あなたのお立場についてお話ししていないことが一つございます。」


なんだ、話してないの?とレオンハルト様が言う。


「この通り、純粋な方でいらっしゃいますので。一度に何もかもお知らせすると重圧かと思いまして…。」


「じゃあ僕から話すよ。でも今から、理事長に挨拶、そして魔力測定だろ?ねぇ、マチルダ嬢。お疲れだろうが、今日の予定が終わったら少し僕とお茶でもしないかい?」


「はい。喜んで。魔術学院のことも色々教えていただきたいですし。」


「じゃあ決まり。後で、ゆっくり話そう。」


「では、私はお茶の準備を整えます。カイル様、どちらにご用意したしましょう?」


「そうだな…。公に話すことでもないし…。マチルダ様、マチルダ様のお部屋にレオンハルト様をお招きしてもようございますか?」


「まだ私は、自分の部屋に足を踏み入れたこともないしね…。カイルとソフィーがそれがいいなら、異論はありません。」


「では、私はお部屋に先に戻り、準備をしております。」


ソフィーが一礼して去っていく。


「ソフィーを急がすのも悪いからな…。では2時間後に学生寮の前で。」


かしこまりました、と私とカイルで一礼すると、レオンハルト様も行ってしまった。







私は、カイルと共に理事長室を訪ね、理事長様に挨拶を済ませた。そして、理事長様とカイルと私の3人で魔力測定に向かった。


廊下をしばらく歩き、とある部屋の前で止まった。扉には、『教授 カール・シュトック』と書かれている。


「お待ちしておりました。こちらが虹色の発動者殿ですな。」


部屋の主と見られる人物が話す。この方がシュトック教授か。50代くらいかな。理事長様よりは若く見える。


「確かに…こんなナチュアは見たことがないな。早速、測定を始めよう。こちらへ。」


シュトック教授の前には丸い鏡が置いてある。


「これは瞳映鏡という。魔力の発動がある者がこの鏡を覗き込むと、鏡がナチュアの色に変化する。」


シュトック教授が鏡に自分の顔を映すと、魔映鏡は赤、青、黄の3色に染まった。シュトック教授の瞳を盗み見ると、黒い瞳がゆらぎ、赤青黄のナチュアが見えた。なるほど。


では、と促され、私は鏡を覗き込む。途端に鏡は、時計の針が1周するかのように、赤橙黄緑青藍紫がグラデーションを奏でながら順番に映し出された。


「まさに虹色、ですな。」


シュトック教授が、感嘆の声をもらす。


「では、次に魔力の測定を行います。通常、魔力はナチュアの数が増えれば、倍増しますので、ちと不安なんですが…だからと言って測定しないわけにもいかんし…。」


シュトック教授がぶつぶつ言いながら、大きな石が組み込まれた機械を、ガラガラと台車に乗せて運んできた。


「これは、魔影石を組込んだ魔力測定器です。魔影石に触れると、触れた者の魔力が影として現れます。それを数値化して、メーターに表示します。しかし、おそらくーー」


石に手を触れるように促され、そっと撫でてみる。


ボンッーー


大きな音がした。思わず目を瞑る。恐る恐る目を開けると、魔力測定器が煙を上げている。メーターを確認すると、振り切ったところで止まっている。


「やはり、振り切れましたか。」


シュトック教授が、また作らねば、とがっくり肩を落としている。



理事長とカイルが、あんぐりと口を開けている。こ、壊しちゃった…。ごめんなさい。


ブックマーク20件を超えました!嬉しいです!更新頑張ります^_^

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