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閑話② 兼 最終話 ヨモギーダの目的

 最古の預言書に記された『異界喰い』と呼ばれる存在があった。


 見るものによってその姿は漆黒の竜とも、輝くガマガエルとも言われている。

 

 『終わりを告げる者』

 『具現した終焉』

 『滅海』

 『絶望の共犯者』


 様々な呼び名を持つその存在の目的は、ただ一つ。


 世界を喰らい、無に帰すこと。


 過去、いくつもの世界が『異界喰い』に飲み込まれた。


 世界を飲み干し、また新たな世界に移動する。


 そいつが、やってきた。




_______________




 神々が住む山がある。


 そこにいる四柱の神は、世界の滅亡を防ぐため、やってきた『異界喰い』との戦いを決意した。


「しかし、戦うだけでこの世界に凄まじい影響があるのではないか?」


 知と魔術の神リーグルールの問いに、ゼラスが頷く。


「うむ⋯⋯なので、まずは戦いの前に、ある空間へと引きずり込む」


「空間?」


「ああ、私が以前発見した、この世界の表裏ともいえる空間だ。私はそこを『神域』と名付けた。

 完全に独立し、外部への影響は一切遮断されている」


「なるほど⋯⋯」


「最悪我々が敗北しても『異界喰い』をそこに閉じ込めることができれば⋯⋯まぁ相手は様々な世界を渡り歩いてきた存在、そう上手くはいかないだろうが」


 そう言ってゼラスは他の三柱の神々を見回した。


「敗北は、この世界の終焉を意味する。だが、他の道もある」


「他の道?」


「我々四人の力を合わせれば、他の世界への移動も可能だろう」


 ゼラスの発言に、武の神ジョーグンは怒りの表情を浮かべて叫んだ。


「ばかやろう! そりゃあこの世界の人間や、フィールを見捨てるってことか!? そんなことできるわきゃあないだろうが!」


 生命と豊穣を司る女神ナーテスも、ジョーグンの言葉に頷く。


「そうよ! それにそいつがここを滅ぼしたあと、また移動して追いかけてくるなら意味がないわ! 私たちで倒すのよ!」


「ゼラス、この世界を誰よりも愛してるお前の発言とは思えんな」


 リーグルールが訝しげに聞く。


「いや、お前たちの覚悟を確認したかっただけだ。試すような真似をして悪かった」


 その後、四柱がしばし見つめあったあと⋯⋯。


「来るぞ!」


 ゼラスの言葉と同時に『異界喰い』が、この世界に顕現した。





 


 全能神ゼラスは力をふり絞り、『異界喰い』を神域と呼ばれる次元へと転送した。


「これで、地上への影響は防げる⋯⋯」


 しかし、己の力を大きく超える『異界喰い』を、長くこの次元へ縛り付けることはできない。


 ゼラスが相手を拘束している間に、他の三人の神々が攻撃を開始した。


「だっりゃあああ! 武神掌・覇界!」


 武の神ジョーグンは、神気を両手の掌に込め、同時に突き出す。


 ズガン!


 派手な音を立て、放った神気が『異界喰い』を貫き、全身を揺らした。


「生死反転・魂坤乾滅!」


 生命の神ナーテスが、禁を破り死を呼ぶ秘術を行使した。


 ブオンッ!


 耳障りな音と共に現れた黒い円が、『異界喰い』の半身を削り取った。


「魔術の深奥を見るがいい! アブソルート・プリズン!」


 魔術の神リーグルールの呪文と同時に、視界を埋めつくすほどの神鏡と光線が召喚された。


 光線は神鏡によって幾度となく反射されながら、『異界喰い』を貫き、その体を削り続けた。


 ──しかし。


 削れども削れども、その都度『異界喰い』は再生する。


 神々が、奥義を駆使しても消滅させることができない。


「くっ⋯⋯みんな、すまんこれ以上は⋯⋯」


 普段弱音など吐かないゼラスが、その顔に冷汗を滲ませながら呟く。


「へっ⋯⋯もともと、無理だってのは、わかってたんだ、気に、するな」


 神気を使い果たしたジョーグンは、呼吸を荒くして膝をついた。


「そうよ⋯⋯相手は『滅び』そのもの⋯⋯私たちにどうこうできる相手じゃなかったのよ⋯⋯」


 目を閉じ、諦めたように寂しげな笑みを浮かべ、ナーテスが言う。


「認めたくはなかったがな⋯⋯知をふり絞ろうとも、打開できない局面があることを」


 リーグルールの目から知性の光が失われ、虚無を映し出したように虚ろになる。




 四柱の誰もが諦めかけた、その時──


「あ、お前らこんなとこにいたの? 探したぜー」


 手をぶんぶんと振りながら、ヨモギーダが登場した。


「えっ、ここ、神域なんですけど⋯⋯どうやってここに?」


 驚いた様子でゼラスが問いかけた。


 するとヨモギーダは


「いや、ここ俺が昔作った空間なんだけど⋯⋯」


 といって頭を掻いた。


「そ、そうですか⋯⋯ちなみに、なんの為に?」


「ん? 学校で『大』するのって恥ずかしいじゃん? その為にさ、音も匂いも漏れない空間をさ」


「⋯⋯さいですか」


「あ、なんだよその返事」


 ゼラスの返事の仕方に不満そうに呟いたヨモギーダだったが、ふと視線を移し『異界喰い』を見た。



「⋯⋯あ、トイレ掃除君いるじゃん」


「え?」


「そこのもやもやしたやつ。ここで俺の排泄したのを掃除する為に作ったのに、いつの間にか逃げちゃったんだよ」


 ヨモギーダが説明すると、『異界喰い(トイレ掃除君)』が片言で話始めた。


『オマエ、ムカシ、オレニ、クサイノクワセタ、イヤナヤツ。

 ウラミ、ハラス』


 外見に感情を示すものは一切ないが、『異界喰い(トイレ掃除君)』の深い怒りが全員に伝わる。


「「「「これあんたのせいかぁぁぁぁぁあ!」」」」


 四柱の叫び声がこだまする中⋯⋯


「馬鹿言うな⋯⋯っ! 訂正しろよ、今の言葉⋯⋯っ!」


 ヨモギーダは叫んだ。


 その迫力に、四柱は沈黙した。そしてヨモギーダの次の言葉を待った。


「そこまで臭くなかったよな!? な?」


『インヤ、イロイロ、セカイマワッタケド、マジトップクラス』


 珍しく、冷や汗を流すヨモギーダの事を四柱は静かに見つめたが──


「コイツ、昔より大きく成長してるな⋯⋯油断ならんぞ」


 冷や汗をごまかすように、ピンチ感を出した。


(あっ、話変えた!)


 とはいえ、数多の世界を喰らい続けた『異界喰い(トイレ掃除君)』は、ヨモギーダが実際驚くほど成長していた。


 しばらく両者は睨み合い⋯⋯


「んー。ま、最後だし。元飼い主の責任取って⋯⋯見せてやるぞ! 俺の本気を!」


(これ絶対、勢いで誤魔化そうとしてるやつだ!)


 ヨモギーダが叫び、四柱が内心でツッコむのと同時に『異界喰い(トイレ掃除君)』がヨモギーダへと突進した!


 四柱の誰もが、驚くほどの速度でヨモギーダへと肉薄するが⋯⋯


ミルィ・クワ・ナーム(絶え間なき停滞)


 ピタッ!


 ヨモギーダが『異界喰い』を指さすと、動きが停止した。


 そのまま、ヨモギーダは呪文の詠唱を続ける。


デ・グールゥ・ゾホテ(真実の碑に刻まれし)


スヤ・ナリュゥス(完全無欠の)ロゥ(偽証)




 その呪文を聞いたゼラスが、驚愕し、震えながら言った。


「こ、これは⋯⋯創造神言語クレアトゥール・レックス⋯⋯」


 誤魔化すためとはいえ、どエラいことしてるな、とゼラスが思っている間も、ヨモギーダの詠唱は続いていた。


ムロァス・ダッカ(神の僭称者による)レム・リーア(偽りなき神命)


ツィージュ・エ(其は不可避)ア・ウク(の理)


ウーヴァ・ラ・ラード(顕現せよ)! ヴァ・ルーマ・ジャ(難攻不落の)デウス・ワス・テール(神滅陣)!」



 神域を、溢れんばかりの光が満たした。


_______________


「最後、って仰ってましたが⋯⋯」



 神域トイレから帰還したゼラスが、ヨモギーダに尋ねる。



「まさか師匠は、やつを倒すために、何度も転生を繰り返したのですか?」


 ゼラスの問いに、ヨモギーダは


「うんにゃ。最後ってのは、今世では、ってこと。

 俺、そろそろまた転生するわ」


 首を振りながら応えた。


「そ、そうですか」


 予想を盛大に外したゼラスはしばらく沈黙したあと、再度尋ねた。


「あの⋯⋯何度も転生する理由を聞いてもよろしいですか?」


「え? ああ、言ってなかったっけ」


「はい、知りませんが⋯⋯」


「名前だ」


「え?」


 ヨモギーダの言葉に、ゼラスの目が点になる。


 そんなゼラスに、ヨモギーダは不機嫌そうに応えた。


「いや、だから名前だよ。俺、毎回かっこ悪い名前つけられてさぁ。

 だからかっこいい名前付けて貰うまで、転生するって決めてるんだ」


 ゼラスはしばらく考えたあと。


「改名⋯⋯すればよろしいのでは?」


 と発言した途端。


「ばっきゃろう!」


「へぶらっ!」


 ヨモギーダのビンタが炸裂した。


 ビンタとは思えない距離吹き飛んだゼラスを追いかけて、ヨモギーダが胸ぐらを掴んで引き起こす。


「あのなぁ、俺は転生するとき、一応、子供に恵まれない夫婦の所に転生するようにしてるんだ。

 とはいっても、人の人生に割り込んでるわけだ。

 そんな両親がせっかくつけた名前を否定して改名したら、悲しむだろうが!

 お前は人の心がわからんのか!

 師匠として悲しいわ!」


「⋯⋯」


「おい、ゼラス! 返事をしろ! 返事を!」


 ゼラスの胸ぐらを掴んで、ぶんぶんゆすっていると


「あのー、師匠⋯⋯」


「なんだ?」


 話しかけて来たナーテスに、ヨモギーダは険悪に返事をする。


「返事、無理だと思います、その、ゼラス今のビンタで死んでるんで⋯⋯」


「えっ」



 


 



 とりあえず、蘇生した。




_______________



「んじゃ、俺そろそろ転生しにいくわ。

 また転生先で会ったらよろしくな」


 四柱に見送られながら、ヨモギーダは別れの挨拶をした。


「はい! また!」


「しっかり転生して来てください!」


「二万年後くらいがおススメです!」


「あ、別の世界とかどうですかね? かっこいい名前しかない世界とかありそうじゃないっすか?」



 四柱の別れの挨拶に、ヨモギーダは



「なんか、お前ら嬉しそうだな」


 と無表情で言った。


「う、嬉しいわけないじゃないですか! めちゃくちゃ寂しいですよ!」


「何言ってるんですか! うさぎじゃなくて心から良かったと思ってます! 寂しいと死んじゃいますからね!」」


「あー、私の今年の流行語大賞『寂しい』に決定しました!」


「寂しいじゃ足りないから、その上の言葉考えときます!」



 しばらくその様子をじっと見たヨモギーダは


「ま、いいか。

 今世の両親も死んだし、とりあえず思い残すこともない。

 んじゃ、また来世でな」


 そう言って、ヨモギーダが歩き出す。


 その背中を見ながら⋯⋯




(なら、改名でいいじゃねぇか!)




 四柱は心の中で叫んだ。




_______________





 俺はヨモギーダだった男。


 この、転生するまでの、ふわふわとした意識のみが存在する時間が、俺は好きだ。


 次に生を受けるまでの間、思うこと。


 さぁ、次はどんな名前になるのだろう。


 楽しみだ。


 この時間は、何百年後に転生するときも、体感としては僅かな時間だが⋯⋯



 意識だけのはずなのに、俺の視界が輝いたような感覚を覚えた。



 さぁ、転生の時だ。



 ──そして、意識が、はっきりとし始めた。



 







「こんにちは、私の赤ちゃん。あなたの名前は──」







 

やたら転生を繰り返す男、あらゆる最強を駆逐する 


 ─おわり─







 これで一応終わりです。

 といっても、そんなに時系列が重要な作品ではないので、何か思い浮かべば書くかもしれませんが、しばらくは下のリンクから飛べる作品に集中したいと思っておりまして、一旦完結とさせて頂きます。


①楽しかった!

②面白かった!

③笑えた!


 そんな方は是非、下の作品評価欄から評価頂ければ、創作の励みになります。

 PCなら画面をそのまま下にスクロール、スマホなどは下にスクロールして「評価をする」をタップすると、文章とストーリーの評価ができます。

 ちょっと面倒くさいですよね。

 そこを越えて、評価して頂ければとても嬉しいです。


 評価して頂くことによって、他の方の作品探しの参考になり、作者も喜ぶというステキな効果が!


 ではここまで読んで頂き、ありがとうございました! 



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