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第三部 プロローグ
柊尊はゆっくりと、その館のなかをすすむ。
肌に張りつく熱気。人間から酸素を奪う煙。館を包む炎は勢いを増すばかりで衰える様子がない。
しかし、その中にいて、尊はポケットに手を突っこみ、まるで散歩でもするかのように館をすすむ。
唯はもう外に避難させた。だから、心配はない。
これから自分がすべきことはただ一つ、この事件に決着をつけること。
もう失敗は許されない。チャンスは一度きり。残された時間も、そう多くない。
それでも、尊が歩みを止めることはない。
この先にある、最後の戦いのために。




