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女神大戦 ‐The Splendid Venus‐  作者: 灰原康弘
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 ”『安全地帯』建立十五周年記念式典”⑤

 尊が目を覚ましたとき、視界がとらえたのは見慣れた男の顔だった。


「よぉ、目ぇ覚めたか」

「なぜ貴様がここにいるんだ」

 起きて早々舌打ちする。

「そんな顔するなよ。幸せ逃がすぜ」

 そう言って男――瀬戸はニヤリと笑う。反対に、尊の顔はますますしかめられる。

 腹部に痛みを感じ、さすっていると、

「鬼柳ちゃんに起こして来いって頼まれたんだ。腹を四十五度の角度で肘でたたくのがコツらしい」

「貴様ら俺をなんだと思っているんだ」

 ブラウン管のテレビのような扱いをうけた少年は、うっとうしそうに舌を鳴らすと、左腕に注射を打つ。


「調子はどうだ?」

「首尾は?」

 尊はそっけない口調で言った。

「上々だな。見てみるか?」


 リビングに行くと、テレビがつけられており、そこでは昨日起こった出来事について報道されている。

 すなわち“記念式典賛美花火”についてだ。

 あのとき会場内で聞いた音。あれは花火の音だった。直後に暗転したことも手伝って、彼らはあれを“爆発音”と勘違いしてしまったのだ。


 避難しようと外に出たあと、彼らは控えていた律子から種明かしをされた。

 曰く、楽しんでもらうための“デモンストレーション”だという(型どおりの式典に、“刺激”を与えるための余興、というふうに報道されている。しているのは、むろん、中央省とつながりのあるテレビ局だ)。

 同時に、テロリストに見立てた『騎士団』の団員を公安部が拘束する寸劇を見せることで、“テロに対しても屈することのない中央省”を有権者たちに見せることもできた。

 報道陣がいるまえで行ったので、宣伝効果もバッチリである。

『君主』にふんした朱莉が殺害されているのを見たのは、計画を知らない酒匂を除けば朝桐と『シュトラーフェ』、そして碓氷のみ。彼らに決して口外しないように口止めしたため、公にはなっていない。


「この茶番はなんだ?」

 茶番というのが、『騎士団』と公安部による寸劇というのはすぐに分かった。

「こういうのもあったほうが、下心が見え隠れしてリアルだろ?」

「フン、聞いたセリフだな」

 尊は軽蔑したように鼻を鳴らすも、なんのことか分からない瀬戸は首をひねるしかない。


 今回尊が立案したのは、宮殿での爆弾騒ぎで来賓をのけたうえで、『君主』にふんした朱莉の死を偽装し、テロが成功したと錯覚させること。

 最初の爆発音のあとにろうそくの灯を消した“はしり抜けた一陣”は、会場を完全に暗転させるため、尊がした攻撃だった。

 騒ぎのスイッチとなった「爆弾だ!」という声は、むろん、『騎士団』の団員を使ったサクラである。尊が考えたのはここまで。“寸劇”は、瀬戸が勝手に組み込んだのだろう。


「べつに、おまえのすることには口出ししてねぇし、邪魔もしてない。文句ねぇだろ?」

「好きにしろ」

 ぶっきらぼうに言うと、尊は椅子に腰を掛ける。

「そんなことより、貴様、なぜここにいる? まさか、また面倒ごとを持ちこんできたんじゃないだろうな?」

 尊が疑り深い眼差しをむけると、瀬戸は軽く肩をすくめて見せ、

「報告に来たのさ」

 と言った。


「酒匂の死因だが、アナフィラキシーショック……まあ、ふぐ毒だな。その場で死亡が確認されたのは知ってのとおりだが、どうも、やつはそれを奥歯に仕込んでいたらしい」

「最初から自殺するつもりだった、ということか?」

「かもな」

 軽い調子で返すと、尊の対面に座りテーブルの上に置かれた饅頭に手を伸ばす。

「おい、人の家のものを勝手に食うな」

「固いこと言うなよ。……もっと饅頭みたいに柔らかく……」

 思いついたようにつけ加えた瀬戸を尊は汚いものでも見るかのような目で見る。

「それは私が自分の給料で買った来客用のおかしよ。文句言わないでちょうだい」

 律子が台所でなにかを切りながら言った。

「フン、それのチョイスが饅頭とは、ずいぶん渋いな。いくらしわが増えているからと言って、そこまで老けこむ必要はないだろう」

「あんたつぎにそれ言ったら刻むわよ」


 律子の名誉のために言っておくが、買ったのは饅頭だけではない。

 ほかにもクッキーやチョコレートなども買ってある。来客が好みそうなものをその都度出しているだけだ。

「よそうぜ、朝からケンカなんて。幸先悪い」

 そう言うと一口お茶をすする。

「貴様が面倒ごとを持ってこなければ、毎日唯と平穏に過ごせるんだがな」

 厭味ったらしく言う尊にも、瀬戸はニヤリと笑って見せる。

「そいつは悪かったな。ボーナスやったんだから、それと相殺してくれ」

「ホント、うじうじみっともない男ね」

 あきれ顔の律子が配膳を始める。

 今日はアジの開きに煮物とサラダだ。瀬戸がいるためか煮物とサラダはいつもより量が多く、アジは三人分だ。


「そいつの分も作ったのか?」

「作らないわけにはいかないでしょ?」

「俺の金だぞ」

「ホントにうじうじうるさい男ね。私の分から引いておいたから安心なさい」

 余談だが、尊が『騎士団』として稼いだ給料は、いったん律子が預かり、生活費などを引いたうえで尊の口座に振り込まれている。そうしなければ、唯へのプレゼントですべて使ってしまうからだ。

 最初に給料が振り込まれたさい、そのほとんどを唯のために使い、通帳の残高は九十八円となってしまった。

 結果、食事をする金さえなくなって飢え死にしかけ、見かねた律子が食事を作るようになり、生活費の管理もするようになったのだが……。


「考えてみれば、貴様の化けの皮はもう剥がれているわけだから、ここに来る必要はもうないと思うんだがな」

「あら、あんた私がいないで生きていけるの?」

 いたずらっぽく笑う律子。

「聞いたぜ尊」

 と、瀬戸は新しく出されたお茶を一口すすって言った。

「鬼柳ちゃんがすこし来なかっただけで、ゴミはあふれ出てるわ、服は脱ぎ散らかってるわで大惨事だったそうじゃねぇか」

 尊は忌々しそうに舌打ちし、

「べつにする必要がないからしなかっただけだ」

「人目につくところぐらい片せよ。男やもめにゃ蛆がわく、とはよく言ったもんだな」

「食事まえだぞ。やめろ」

 いやそうに手をふると、不審な視線を瀬戸にむける。


「征十郎。貴様本当に、それだけのために来たのか?」

「ああ。さっきそう言っただろ」

 笑って肩をすくめる瀬戸。この男はいつもそうだ。ひょうひょうとした物腰を崩さず、どれが本音でウソなのかが分からない。


 そのすべてを見透かしたような笑顔に、尊は舌を鳴らし、背もたれに体重を預ける。

 あのときの音は、たしかに花火によるブラフだ。

 しかし、それは後からの数発だけ。一番最初の爆発音だけは本物だった。

 あのとき、たしかにC4――プラスティック爆弾――は爆発していた。それも、宮殿内でだ。

 事前に徹底的に捜索されていたにもかかわらず、爆弾は設置され、爆発した。

 サクラとして仕込んだ『騎士団』の団員は、あれもブラフだと思ったようだが……。


 むろん、これは一部の人間しか知らない極秘事項だ。

 酒匂が死んだいま、だれが仕掛けたのかも分からない。

 いや、そもそも、酒匂に本当に『君主』を殺すつもりがあったのかも怪しいものだ。

 酒匂の遺体からは、およそ武器になりえるものは出てこなかった。爆弾が仕掛けられていた場所も、会場の遠く離れており、あの時間は人がいなかったためにけが人さえ出ていない。

 だが、たしかに酒匂は小清水を誘拐して『君主』暗殺の罪を擦り付けた。

 それもすべて十五年前の復讐のためなのか? 復讐を果たしたから自殺したというのか?

 もっとも、捜査本部はそのように結論し、すでに解散したようだが。


 あのとき、尊自身もそう言ったのはたしかだ。

 テロ自体が目的ではない。それはたしかだ。だが、それが計画の一部であったこともまた間違いない。

 尊が“テロの成功”を演出した理由は、酒匂の反応を見るためだ。テロを本当に実行するつもりがあったのか、あるいは、単なるブラフか。それによって、事件はまったく違う様相を呈してくる。そう確信したからだ。

 やつのあのときの反応を見るに……。


 考えているあいだに、律子が戻ってきた。

「さあ、そろそろ食べましょうか」

 律子はエプロンを壁にかけると、尊の隣に腰を下ろす。

 ――まあいい。自分の仕事は果たしたのだ。

 さて、ボーナスで唯になにを買っていこうか。尊は一人プランを立てながら、煮物を口に放りこもうとしたときだ。

 瀬戸の携帯がなった。




 普段は静かな廊下を、何人もの職員が駆け足ですすむ。書類や機材を持っている者もいるため、時々ぶつかりそうになる。

 扉が開け放たれた部屋に入ると、そこは喧騒に包まれていた。

 彼らが浮足立っているのには理由がある。

 つい数分前、中央省警保局に一本の入電があった。相手は警保局長である瀬戸。

 その内容は――。


 ――いま宮殿から連絡があった。『君主』が行方不明となった。住民には知られぬよう、早急に捜索する。すぐに捜索本部を設置しろ。


 というものだ。

 それを聞いた捜査員は震え上がった。

『安全地帯』唯一の王族であり、最高主権者である『君主』が行方不明となった。そんなことが公になれば、大騒動になる。なんとしても、住民に気づかれるまえに、可及的速やかに、見つけなければならない。


 もっとも、住民は『君主』の顔を知らないのだから、気づかれる心配はないだろうが……。

 というより、『君主』の顔は捜査員たちも知らないのだ。こんな状態で、どうやってターゲットを探しだせというのか。彼らは内心イラついていた。

 捜索本部が中央省の会議室に置かれ、捜索隊の編成、万が一、億が一、誘拐などという犯罪に巻きこまれた場合を鑑みて、それに対応するための逆探知機などの機材が設置された。

 鑑識、科捜研などの科学捜査チームや、SATなどの特殊部隊などにも、事態の詳細は避け、待機しておくよう通達済みだ。そして、公安部により、対策本部が設置される。

 警保局のもとになった組織が警察だったからこそ、ここまで迅速に動くことができた。


「機材の設置、完了しました」

「ご苦労」

 部下をねぎらい、書類へと視線を落とす。彼はいま、捜索隊の編成をしている最中だった。

「しかし、本当なのでしょうか。その……」

 言いにくそうにしているが、それも無理のないことだと思う。

『君主』が行方不明など、前代未聞だ。とりあえず型どおりの命令を出しているが、自分が正しいことをしているのか自信はない。

「心配ない。じきに局長がいらっしゃる。それまでにできる限りのことを……」

 と、そこまで言ったところで、いままでざわついていた会議室が静まりかえった。


 入り口を見ると、二人の男が入ってくるのが見えた。

 一人はブランド物のスーツを着崩し、中折れ帽子をかぶった男。もう一人は十代半ばと見える白い髪の少年。

「局長、お待ちしておりました」

 スーツの男……瀬戸に一礼すると、部下に持ってこさせた書類を渡す。

「ずいぶん落ち着かねぇな。ま、無理もないか」

「申しわけありません」

 恐縮した様子に、瀬戸は構わねぇよと笑う。


「それで局長……」

 と瀬戸をしきりに気にしたように見る。

 騎士団養成学園の制服を着ている少年は、かなり目立っていた。

「ああ、コレか? コレは俺の部下だ。もともとは『騎士団』に所属しているやつなんだが、近くにいたんで協力してもらうことにした」

「おい、人を代名詞で呼ぶんじゃない」

 少年……尊の抗議を無視して瀬戸は訊く。

「で、状況は?」

「はい。新しい情報などはまだなにも……現在、捜索隊を編成中です。徒労でしょうが、念のためにいくつかのポイントに検問もしきました。しかし……」

『安全地帯』の地図の一点を見て、歯がゆそうに言う。その意味を察しつつ、しかし瀬戸はそれにはあえて触れない。

 報告から愚痴になりそうになったため、捜査員は無理やり方向転換する。


「よろしいのですか? その、こういったことは警視庁にも連絡したほうが……」

 十五年前発足した新組織・中央省。それは警察庁と防衛省が合併したものだ。つまり、警視庁はそのままの形で残っている。警保局は警察組織を統括する……云わば事務仕事が主な仕事内容なのだから、こういった件は、本来であれば警視庁の管轄なのだが……。


「報告はしない。この件は俺たちで秘密裏に処理する」

 こう言われては、もうなにも言えなくなってしまう。

「はぁ……しかし、こうもはやく宮殿から連絡があるとは驚きました。それもまさか、直接局長にかけるだなんて……。“自分たちで解決する”と言いそうなものですが……」

「ん? ああ。このあいだの一言がきいてるみてぇだな」

「は?」

 このあいだ……つまり“記念式典賛美花火”のさい、瀬戸は宮殿関係者にこう言ったのだ。


(――「今回は無事解決することが出来ましたが、次回からはぜひ、もうすこしはやく連絡を戴きたいですな。そうしていただければ、もっとスマートにできるのですが……」――)


 こうもはやく連絡があったのは、西園寺の口添えが大きいのだろう。もっとも、ほかに大きな理由もあるのだが。それを知っている尊は、自虐的に鼻を鳴らした。

「情報の共有はもういいだろう。征十郎、貴様の方針を聞こうか。どうするつもりだ?」

 傲岸不遜な態度に会議室の温度が下がる。

 たった一言で初対面の相手たちから不興をかう。ここまでくれば一種の才能だな、と思いつつ瀬戸は言う。

「何組かに分かれて捜索を開始する。中央省の職員だと気づかれないように、全員私服で動け。玄武地区はいい。いかに『君主』さまでも、あそこへは簡単には行けねぇだろうからな。帝都の捜索は慎重に頼むぜ。もめ事はごめんだ。

 数名の職員はここで待機。捜索に出る者も万が一のことを念頭に入れといてくれ。あんな式典のあとで、『君主』の身になにかあったってんじゃ、しゃれにならねぇからな。草の根わけても探し出すぞ」


 そう言われても顔を知らないのでは探しようがない。彼らの胸の内を見透かしたように、瀬戸は懐から一枚の紙を取りだして見せる。

 そこには『君主』の特徴が羅列されている。これに該当する人物を探せ、ということだろうか。

 初めて見る”カリスマ”の手がかりだが、こんなもので探しだせとは……。

「こんなものしか見せられなくて済まんが、書いてあることは全員頭に叩きこめ。じゃあ、頼むぜ」

 会議室全体から、一斉の返礼があった。尊がうるさそうに顔をしかめた、まさにそのときだった。

 会議室の電話が鳴った。




 結論から言うと、捜索本部は解散となった。

 理由は簡単。捜索対象だった『君主』が見つかったからだ。それも、自室にいたという。

『君主』曰く、宮殿内を散歩していた、ということだったが……。

「まさか、トイレに行っていたのを気づかなかっただけ、とでも言うつもりじゃないだろうな?」

 瀬戸が持っていた受話器をひったくるように奪うと、不機嫌さを隠そうともせずに、吐き捨てるように尊は言った。

 息をのむ捜査員たちだが、不幸中の幸いと言うべきか、電話の相手は西園寺だったため、受話器から辟易したような雰囲気が伝わってきただけだった。


『お騒がせして申しわけありません。今後、このようなことがないよう、徹底してまいります』

「徹底ね。役人や官僚の“徹底”ほど信用できないものはない。貴様ら、そうやって……」

 と、今度は瀬戸が尊から受話器をひったくる。

「悪かったな、西園寺。いまのは忘れろ」

 瀬戸は疲れたように息を吐く。

「まあ、『君主』が無事見つかったならなによりだ。こっちのことは気にするな」

 後に二言三言かわして受話器を置く。

 そうして、捜索本部は捜索を始めるまえに解散となったわけだが……。


「とんだ茶番につき合わされた」

 椅子に深々と腰かけると、わざとらしくため息をつく。

「悪かったよ。でも、こんなの予想できねぇだろ? 大目に見てくれ」

「……すこしも詫びているように見えんが、まあいい」

 尊は瀬戸の仕草をまねて肩をすくめて見せる。

「くだらんことに時間をとられたおかげで、今日は唯との時間が長くとれそうだ」

「なに言ってやがる。おまえはこれから学園があるだろ」

「……」

「露骨にいやそうな顔するなよ……とにかく、事件は解決したんだ。いやでも行ってもらわなきゃ困る」

 尊はますますいやそうな顔になり、

「なにが解決しただ。そもそも事件でもなんでもなかっただろう。まったく、人騒がせな箱入りだ」

「あそこはそんなに退屈か?」

「……面倒なやつがいるんだ。いちいちからまれて、うっとうしくてたまらん」

「ああ、凛香ちゃんのことか?」

 瀬戸はポンと手をうった。

「……なぜ知っている?」

「鬼柳ちゃんから聞いたんだ。毎日毎日いちゃいちゃしてるってな」

「ふざけるな。俺は毎日迷惑してるんだぞ」

「迷惑ねぇ」

 と瀬戸は面白そうに笑う。


「まあ、とにかく学園にはいけよ。あんまりさぼると進級できなくなる」

「それも仕事か?」

「仕事……? ああ、そうだな……」

 瀬戸はすこし考えるようなそぶりを見せ、

「おまえ、昨日の事件でなにか考えてることがあるだろ」

「なんの話だ」

「とぼけるなよ。気づいてんだろ?」

 うるさそうに瀬戸を一瞥する尊だが、結局観念したように話しだす。


「小清水を一人で誘拐し、『君主』を暗殺する、などということを、あの老いぼれ一人でできるはずがない。それこそ、『危険区域』の連中と組んだというのでは、失敗する可能性のほうが高い。加えてあの爆弾……つまり、やつに協力した、あるいは利用した何者かがいるということだ」

 あのときの酒匂の反応を見ても、それは間違いない。また、『君主』が殺されている光景を見ても、まるでこうなることを予測していたかのように、酒匂はわざと大仰に驚いているだけで、その実、まるで動揺していなかった。

 酒匂は、テロを実行するつもりがあったということだ。凶器をなにも持っていなかったということは、実行犯はべつにいるということ。

 つまり……。


「事件はまだ終わってないってわけだ」

 面白そうに言う瀬戸に、尊は舌打ちをかえす。

「だったらどうした? 俺の仕事はもう終わったんだ。あとは貴様らでどうにかするんだな」

「そいつは違うぜ」

 妙に低い声で瀬戸は言う。

「俺がおまえに言ったのは、“事件を解決する”ことだ。黒幕がいるってんなら、そいつを見つけ出してもらわないとな」

 ニヤリと笑って続ける。


「ま、そういうことだ。これからのことはおって通達する。それまで、学園生活を楽しむんだな」

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