既視感と行動開始▼side A+級冒険者ライズ
A+級冒険者ライズさんの視点です。やっと出せた!!ライズさん!遅くなりました!ごめんね!
俺は『メイケル王国ナナセ自治区アイリス町』の冒険者ギルドにいた。
まったりと近くの冒険者と情報交換をしたりしているときその出来事は起きた。
冒険者ギルドには似つかわしくない見目の良い少女が現れたのだ。
遠目に小さな木の円テーブルを友人と囲みながらその少女を見たときどこか既視感を覚えた。
ギルド員と町の門番に挟まれた少女─12歳…いや、下手したらもっと下かもしれない─は見た目のわりに大人しくしていてどこか奇妙だった。
本来は盗み聞きなどするべきではないがいつ何時も喧しい奴らも含めた周りがシンとしているため何を話しているのかぼんやりと聞こえた。
身分証がひとつもないなんて珍しいこともあるもんだと思う。何故なら、あんまりじろじろ見るもんじゃないけれどさっきも言った通り少女の見目は良く、身成も小綺麗で清潔感の漂うもの。つまり、普通の町民身分証を作るときなどと変わらぬくらいの金は全然持っていそうだからだ。
しかし、やはりどこかで見たような顔立ちや色彩な気がするのだ。
「むむ…王国で見たのか…?いや、あんな目立つ顔の少女は見たことがないな…」
悩んでいる間に少女はギルド員と共に二階に行っていたようだ。張り詰めていたような変な緊迫感の在った一階の空気がふっと緩む。そして、じわじわと他の冒険者達の喋り声が聞こえてきた。
「…ズ!ライズ!おい!」
「ん!?…なんだ?」
思考の海に沈んでいて、キースに呼ばれていたようだが、全く気付けていなかった。
言い忘れていたがキースと俺は一応とある王国の騎士である。一応数ある騎士団の隊の中でもそこそこ上位の隊に所属している。
「今の女の子の髪と眼の色…」
「ん…?何だ?もしかしてお前も王国のどっかで見たことでもあったか?」
「馬鹿言うんじゃない!見たことあるどころか…いや、ここでする話じゃない。とりあえず宿に帰るぞ!」
問答無用とばかりにキースは俺の腕をひっつかみ無理矢理立たせると宿までずるずると引きずって行った。
*****
─魔導具によって防音結界を張られた宿の一室
「あの顔立ち、髪の色に眼の色…まるっきり王国の宰相閣下の色じゃねえか!」
キースにそう怒鳴られてようやく違和感が溶けてなくなる。確かに顔立ちや色彩が宰相閣下そのものである。しかし宰相閣下より目が大きくて丸く、また髪に赤っぽい色の髪が混じっていた。
「あの真面目な宰相の隠し子か?」
「若気の至りっていうのもあるだろうけど取り合えずあの少女本人に色々聞くか?」
「珍しい色彩とはいえ宰相閣下の実子じゃないかもしれないんだぞ?
というか、そもそも見も知らぬ男二人が声を描けたら怖がられるだろう…
怖がられなくても周りが警戒するぞ、あんだけ目立つ少女に話しかけたら」
下手したら捕まる。他国に来ていて変態だ、幼女趣味だで捕まったり変な呼称を付けられたら王国に帰れないだろ。恥でしかない。
「う~ん、確かにそうだ。
……そういや王国に帰るまでの期限ってどれくらいだったか?」
「魔導具に連絡が来たときにすぐ帰れるようにしとけば良かったはずだ。何をする気だ?」
「あの少女の後をつけよう」
「ストーカーになるのか?」
キースお前はそんなやつだったのか…
「阿呆!一気に犯罪者臭増すからやめろ!あの少女にぴったりくっついていくと最悪気配でばれる可能性がある。だからお前の目を飛ばすんだよ」
「成る程それならばれないな…取り合えず何かあったときのためにも目はつけておく。…まぁ結局ストーキング行為にかわらないじゃないか」
ふわりと俺の右手の人差し指に青い光と炎の蝶が一匹とまる。こいつは俺の魔力が可視化したものであって生命体ではない。蝶はふわりと飛び立つと窓をすり抜け少女のもとへ飛んでいった。
「お前もそれに荷担してるんだから同罪だろう。そもそも犯罪みたいな言い方するなよ!
……なんと言うか変な気持ちになるからやめてくれよ!
なんというかその、もやっとするから。
言い訳じみてるけど国の不利益になりそうな人物や、情報、物品の監視は俺らの隊に許可されてる権限だぞ!うちの宰相閣下の実子を名乗りだしたらどうするんだよ?紛い者かもしれないんだ。実際見た目似てるし。監視するに値するだろ?」
キースは一気に捲し立てたせいで息が切れてぜいぜいと肩が上下している。
「わかったわかった冗談だ。少女はすぐ移動するようだから宿の引き上げ準備をするぞ。」
そんなに言うほど荷物は無いが念には念をだ。
「よし、行くか。」
俺とキースはこれから長い期間少女の沢山の突飛な行動に驚いたり、あり得ないほどの面倒に出会うことになり、色々と苦労するなんて想像もしていなかった。




