はじめての隠密3
「この国、大丈夫なんでしょうか。こんな大変な時に内輪もめとか、信じられないんですけど。(馬鹿なの?死にたいの?自分達で滅亡フラグ建ててるとか庶民巻き添えにしてんじゃないよ、まったく!!。)
それで、どの王族とどの王族が敵対してるんですか?」
「…なにか今、聞き捨てならん罵詈雑言が聞こえたような気がしたが。女、隣国とはどういう事だ?」
「若!いけません。何処に耳があるか!」
「助けていただいてかたじけない。お嬢様が気絶されているので寝かす場所ありませんか?」
「きさま何者?!」
(ぐぅぅぅぎゅるるるる)
「わたくしの名前、『ヤミ』って言いましたよねぇ?一度に話しかけて来るのやめてもらいます?あ、そちらのソファーでよろしければどうぞお使いになって?」
今まで、口が聞けなかった反動で、一気に皆、思い思いの言葉を発する。
若干一名の魔法生物はお腹の音をさせていたけれど。
「おなかすいた」
ああ、ごめんなさい。たくさん走ってその後の騒動だから、お腹すいたよね?
予定ではちょっと姿を見せて、消えるつもりだったから!
決して、ウチの子に食べさせていないわけではないのよ???
「ルルリア様の関係者と言われたか。『西の塔の魔女』殿は遠征へいかれたものと思っていたが」
男爵ジュニアの騎士の中で少しだけ毛色の違う人がいるなーと思っていたら、ご令嬢付きの騎士だったらしい。
この中で、なんだか一番有能そう。
「ええ。王子殿下の出発には間に合いませんでしたけど、追いついて行動は共にされているはずです。
わたくしは留守番ですので、王城の中での争いごとには、この国の王家との盟約通り主は感知しておりませんが、ここ最近隣国のものが王都へ出入りしているようだと『カゲ』も申しておりましたわ。ごめんなさい。ここにはお茶ぐらいしかございませんの」
ご丁寧にレオの「おなかすいた」発言に返答をしてくれる。
あれ?この人が『ヤミ』さんで『カゲ』さん?そしてルルリア?ルルリアってルルの事?
「まぁ王族に男子が何人かいれば、それに乗じて勢力をと思われる関係者はいますでしょうね。
いつの世にも」
最後のは私の質問に対する答えのようだ。
「優秀な跡継ぎが何人もいるというのも、それなりに悩ましいですわね」
いやいや、ゲーム開始時の3年後には2人に減っちゃうんですよ!
信じられないでしょうけどね!
「…それで?まぁジュニアの男爵家はフィリップ王子側なんでしょうけど」
なんたってフィリップ殿下の妾である姉をずっと援助し続けてきたくらいなのだ。
王太子殿下と弟王子達に確執があるなら、王太子殿下とフィリップ王子は敵対関係という事になる。
「王太子殿下は別にフィリップ殿下を敵視してはおりませんぞ」
「兄上は、そんな人ではありません」
ソファーに半身を起こしてご令嬢がこちらを見ていた。
お、王太子を兄呼び?という事はこの子って!!! 王女様??
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「危ない所を助けて頂いてありがとうございます。アルフレド様。メディチ家の皆さん。そしてそこのあなたとあなた。私、アステルガ王家が3女マリエステルと申します。どうぞお見知りおきを」
マリエステル王女。ゲームでは出てこなかったお姫様だ。
本編ではすで亡くなっている可能性が高い。
さっきの襲撃がマリエステル王女を狙った物だったとしたら、私がレオとあの場に乱入した事で運命を変えた?
え?というと、男爵ジュニアも本来はあそこで死んでいた??
「俺が追っていた連中が、まさかマリエステル王女をも害そうとしていたとは、しかも、あいつら…」
「旦那様の仇が隣国関係の手のものだったという事でしょうか」
・・・・・・・・・・危ない事に首突っ込んでたよ。この子。
あれかぁ…私が男爵様の死因に不信感を強く植え付ける事を言っちゃったからかぁ。
ずっと調べていたんだろうなぁ。
そうだよ。父親を殺されたんだもの。
必死に犯人を探していたんだろうね。
きっと悔しかっただろうな。身近な人を殺されて。
「…なんだ?その目は」
男爵ジュニアは不審気に私を見ている。
「そういえば、お前、つけられたと言っていたな」
「そうそう、あいつら私の事を追いかけまわしてくれたの。だからちょっとばかりお灸を据えさせてもらってさらに情報かく乱を狙って乗り込んだわけ。そしたらジュニア様達が相手ともめてて」
「ちょっと待て。お前、相手がわかるのか?そもそも、俺だと思って助けにきたわけではない…という事は、どうやってあいつらを見つけだした?」
頭のいいお子様は嫌いだ。
「…それには裏ワザがあるのよ。詳しい事は聞かないで。」
言えませんよ。マップ機能を持ってるだなんて。
「わかるんですか?相手が?」
マリエステル王女。あなたがそれに食いつくの???