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看板娘、頑張る  作者: 相川イナホ
16/42

はじめての隠密2

 

 「あれ?」


  背後の壁がガタンと傾いて、わたし達は一瞬のうちに建物の中へ。


 「あれ?」


中には女の人が一人いて、いきなり杖をふるってきた。


 「ハイハイ、ちょっと黙っててねー」


 何かがふわっと当たったような気がする。

 何か魔法をかけられたみたい。しまった!魔法耐性取っておくんだった。

 ゲームでは魔法耐性が必要なのは第2エリアをクリアしてからなので油断してた!


 この女性は敵か味方か?

 私は男爵ジュニアとその騎士さん達を振り返ってみた。


 もしかしてお知り合いですか?といったニュアンスをこめて。

 

 しかしながら騎士さん達から何の情報もない。


 「「・・・・・・・・・・・・」」


 

 というか、レオは元々寡黙だけど、騎士さん達とかあの五月蠅すぎるジュニアまで口をパクパクさせて手足をバタバタさせている。


 ぶっ! 


 こんな時だけどその面白い顔に笑えてきてしまう。


 どうしたの?パントタイム?こんな時に?


 って 私も声が出ない? あれ??


 

 「ハイハイ出口はあちらね。おつかれさまー」


 いかにも投げやりでめんどくさそうに先程の女性は言うとまた杖をふるう。

 また何か魔法を使われたみたいだけど、何をされたのかと首を傾げている内に、わたし達は、壮行会で賑わう王都のストリートへ出ていた。


 え?


 言葉もないままクエッションマークを浮かべた一行は件の女性を見る。


 「こっちこっち」


 女の人はまるで友人を手招きするかのように手をこまねいた。



 かなりの人手が出ていて、いろんな人がいるのに、誰も私達の事を見とがめない。

 首をひねりながらも、私達の足は何故か女性のいる方へと勝手に進む。


「こっちこっち」


 近くに寄れば、その分その女の人は遠くに離れる。


 それを何回か繰り返すと、まるで今までの事がなかったように、大きな通りに出た。

 さっきまで敵の包囲網を抜けようとあんなに苦労していたのに拍子抜け。

 唖然としていると、待ち構えていたかのように目の前に馬車がやってきて止まった。

 そして目の前で扉が開く。


 「こっちこっち」


 女の人は、その馬車に乗り込むとまた手招きをした。


 いや、「こっちこっち」じゃないから!!。

 なんか軽くホラーなんだけど!


 なのに、私の足は馬車のタラップに足をかけて…後ろからきた騎士さんと、割とがんばって踏ん張っていたレオに押されて馬車の中へ。


 全員入ると同時に馬車の扉が閉まる。

 え?何この中。見た目より広いんですけど?

 おかしいよね。7人というガタイのいい騎士含めての人数が入ったのに余裕があるし。

 普通の4人乗りの箱馬車程度の見た目だったんですけど??


 「どうぞお座りになって?」


 女性は私達にソファーを勧めた。


 なんで馬車の中にこんな大きな物があるの?応接セットとか??

 ちょっとした応接間じゃないの??


 それにオカシイ。


 マップで確認したけど、ここは王城の外壁の内側じゃないか。

 先程男爵ジュニア達が襲われていたのは、エレの町とは反対側にある貴族街に近い場所だったはず。

 さっきの「こっちこっち」の移動で到底辿りつける場所じゃないんですけど??


 「お茶をお出しするべきですかねぇ?そういうのは、わたくし苦手なんですけど」


  いつの間にかマイペースに、どこからか茶器セットを出してきて、茶葉をポットに適当に何杯もいれているこの女性は何者なんだろう?


 いや、待って、待って、そんな適当な分量の計り方ないからーー!!


 見ていられずに思わず駆け寄ってしまった。


 「あ、ごめんなさい?もう話しをしても大丈夫な…はず?あら?お茶を淹れてくれるの?」


 女の人はコテンと首を傾げた。はずってなによ?何故疑問系??

 とはいえ、今は匂いからいってお高そうな茶葉の危機。私は急いでポットを女の人から取り上げた。

 お湯を注ぐ前でセーフ。あの分量で淹れられていたら激濃のお茶が出来上がってしまって誰も飲めなくなってしまうところだった!。よかったお茶は救われた!!


 

 「私、ルルリア様が僕『ヤミ』と申します。所要がありまして潜んでおりました所、お困りのようでしたのでお助けしましたが?」


 その女性は次に私を見て言った。


 

 「それで、貴女方はどなたかしら?」


 私はお茶をきちんとティースプーンで計りなおしながら胸を張って言った。

 

 「私は通りすがりの敵の人に見つかりたい人です」


 「「は?」」


 そこでウンウンと頷いてくれたのはレオだけだと言う・・・。なんで?



 「お前は…またややこしい事を。家に帰ったのではないのか?」


 男爵ジュニアが、何だか頭痛を耐えるようなジェスチャーをしつつ混ぜっ返す。


 「男爵ジュニア様」


 「俺は、アルフレドというのだが。アルフレド・メディチ。名前くらい憶えておけよ…」


 「あ、つい心の声が出てしまっただけです。アルフレド様。それがですね。私、後をつけられましてですね。で、かく乱せねばと戻ってきた次第でですね」


 「心の声…??、つけられた????」


 「それでですね。ジュニア様は何故襲われていらしたのですか?」


 今までジュニア、ジュニアと心の中で呼んでいたので、どうしてもジュニアって出てしまう。

 気をつけねばと気負っていると、「ヤミ」と名乗った女性は考え深げに額に人差し指を添えた。


 「投げつけられたあの目くらましですけれど。あの、光って視力を奪いさらに煙にまくというえげつなさは隣国でよく使われているものですわねぇ」



 「な、ん???」


 ジュニアは絶句している。


 ええ、でも私は知っていますよ~。知っていましたとも。

 この王国を虎視眈々と狙っているのは、隣国だって!


 ややドヤ顔でポットに湯を注ぐ。もちろん茶器は私の魔法の「あたため」でホカホカだ。

 むらして~。うん、ちょっと喉かわいてたな。時間を進めてと、これ最近覚えた「クイック」ですが初披露。仲間の詠唱を早送りさせたりして、魔法発動時間を短縮できる技なのよ。

 これ覚えるとねー「スロウ」もペアでついてくるの。スロウは敵にかけて、味方の攻撃を当てやすくできる技ね。


 おっときれいに茶葉がお湯の中で開きましたよ~。

 これも高価そうな茶器ですなぁ。

 丁寧に注いで…。


 むふ~~なんという芳醇な香り。

 色も琥珀色がとても綺麗。

 あ、どうぞどうぞ。他人の家のものですが、おいしく淹れましたので。


 

 「…弟王子達を疎ましく思った王太子殿下の手のものではないのか…」



 え?ちょっとジュニアさん。今さらっとすごい事いいませんでした????

 

 この国、魔物や隣国の脅威の他に、お家騒動的な危機が勃発してますの???


 味方同士で足引っ張ってる場合と違うでしょおおおおおおお!!!!


  





ヤミのつもりでカゲになっていました。すみません。

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