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看板娘、頑張る  作者: 相川イナホ
12/42

なかまが増えた!


 「…もしかしてポチリンヌ?」


 きゅんきゅーん


 「あのワンコ君、だったの?」


 きゅんきゅーん


 「どうしてその…人間に?」


「この首輪で、出来る、そういう魔法」


 あ、そこはしゃべるんだ。てっきり「わふ!」て言うと思ったのに。


 「お手」


 きゅーん


 肉球のない手が差し出した手のひらに乗せられる。完全に人型だ。


 たしかに首にしているのは、あの時の首輪だ。というかチョーカー風なのだけど。


 「…どうしたの?」


 「おなかすいた」


 「あなたの飼い主…コホンえっと、ご家族は?」


 「死んじゃった。店守れ言われてた。でも水浴びしてる時、これ盗まれて…戻れない、貸家になってた。」


 「入れないの?」


 「もう契約切れた。店の。この店、借りたもの言ってた」

 

 「ああ、そういう事情かぁ」


 「ご主人、魔王蘇る、自分寿命、だからこの店、俺守れ言われてた」


 つまりは、魔王が出現する事を知っていたポチリンヌのご主人は、自分が死んだ後、役立つものを提供できるようにポチリンヌに店を任せていたけど、彼が水浴びしている時に大事な首輪を盗まれその間に借家の更新期限が切れてしまったと。


 なんでお店を貸家にしたんだ。持家だったらよかっただろうに。


 「とりあえずこれ食べる?」


 私はストレージからパンと飲み物の袋を出した。


 彼の幻の尻尾が盛大にふられたような気がした。


 「大家さんの家は何処?交渉してみましょう」


 ---------------------------------------------


「…何度来ても同じだ」


 大家さんは開口一番にそんな事を言った。


「期限がきても顔を見せないからてっきりどっかでのたれ死んだとばかり思ってたんだ。俺は悪くないぞ」


 「あの、事情があって遅れてしまったけど、彼のお店をもう一度借りる事は?更新したいんですけど」


 私の背後に何故か隠れようとするポチリンヌの代わりに私が交渉してみた。 


 「だめだだめだ。もう次の借り手が決まっているんだ!違約金がいるようになる!それに金はあるのか?」


 たしかにポチリンヌの恰好は追剥ぎにあって身ぐるみはがされたような酷い恰好だ。


 「店に売上げあった。俺商売ちゃんとしてた」


 「…店に残っていた金は修繕費としてもらった。ガラクタばかり残ってて処分代をどうしようと思ってたくらいなんだ!さっさと片付けて出てけ!いつまでも残っていたら憲兵を呼ぶからな!!」


 大家は鍵を私達に投げつけるように私達に渡すと家から締めだした。


 ポチリンヌはぶるぶる震えて私の袖を掴んでいる。


 「俺、あの姿で何度も店いった。その度に蹴られた。俺あの人苦手」


 あー犬の姿の時のことね。


 私達は諦めてポチリンヌの元のお店に戻った。

 契約とかよくわからないけど、お店を取り戻す事は容易そうではなさそうだ。

 退去の時に現状に復帰などという明文がなければあの大家のしたことを訴える事もできなさそうだ。


 中はすっかり改装も済んでおり、どうやら新しい借り手は飲み屋にでもするつもりらしい。

 

 「ご主人様の大事なモノ…」


 ポチリンヌは一部屋に放り込まれた様々な道具を手にとって悲しそうだ。

 

 「金庫も空…」


 これでは他に借り直そうとしても、元手をどうするかという問題が起きる。


  私は私でお店の内装を見回して首をひねった。


 「なんか見覚えがあるような…」


 こんな新装開店のようなぴかぴかの状態じゃなくってもう少し使い込まれたような感じにすると…。


「あ、そうか!!」


 ここはゲームで聖女を仲間に加えた後に訪れた事があった。


 「たしかこのへんに…」


 そう、この店で伝説の武器が手に入ったはず。


 指が壁の違和感を感じとる。ここはレベルの低いうちは゛何かが隠されている気がするがレベルが足らないようだ゛と表示されるところ。


  案の状

 ゛何かが隠されている気がするがレベルが足らないようだ゛


 やっぱりですかー。



 「契約、果たせなかった」


 見ると俯いたポチリンヌの身体が光っている。その姿はみるみると薄くなっていく。


 「どどどどどど、どうしたの!!!?」


 「契約果たせない。俺消える。消えたくない」


 顔を覆って苦しそうにしているポチリンヌ。


 「えええ??なんなの?どうすればいいの???」




  これはフラグですか?多分従魔の契約的な????


 


 「新しい名前、新しい契約、俺消えない。お願い…助けて」


 「わかった、契約する!あなたの名前はレオ!契約内容は私を守る事!」


 前世で飼っていたボーダーコリーの名前を思わずつけてしまったけど、雄なのにポチリンヌっていう名前よりマシだよね?


 ぶわっと光が大きくなって広がった後、一匹の白とクリーム色のツートンの毛色のボーダーコリーがそこにいた。


 「あれ?犬種が違う?レオ?」


 ポチリンヌは大きなちゃうちゃう犬といった感じだったけど?


 わふっ?


 そう鳴いて首を傾げられればもう私はメロメロだ。


 「あーん、かわいいいいいい。」


 首に抱き着き撫でくりまわす。


 その目が憂いを帯びて元の御主人様の持ち物の山を見ているのに気がついて私は大丈夫だよって頭を撫でてあげる。

 

 「絶対『勇者様』はあなたの御主人様が本当に渡したかったものに気がつくから」


 あなたはご主人様の言いつけを守った事になる…と言外に滲ませて。



 「さて、いつまでもここに居られないようだし、必要なものを持って出かけましょうね」

 

 何より私は追われる身だ。さっさとこの王都から出ていきたい。


 「え?全部?いいよ。ドンとこい!」


 全部ストレージに入れてしまえばいいんだもんね。


 ポチリンヌ改めレオ(ボーダーコリー)が仲間になった!



 ---------------------------------------------------------------------------


「へぇ、あなた、元のご主人様に作られたの?『魔法生物』?何それ初めて聞く!」


 ポチリンヌ改めレオの人間の姿が半裸なのでワンコの姿のまま会話する。私は傍目からしたら極度の犬好きか頭のおかしい人だろう。



「きっとあなたのご主人様だったっていう人って凄い人だったんだろうねぇ」


 聞けば錬金術師だったという。パンと両手を合わせていたのだろうか。



 私の心からの賛辞にレオは嬉しそうだ。


 こっちの姿の方が落ち着くらしい。とはいえ彼の服も買ってあげなければ。


 今の私は王都を出発して次のエレという町を目指している。日帰りの距離なので私と同じく徒歩で歩く人も多い。

 この町を私達は『ダンデライオン』の皆さんと待ち合わせの場所に指定した。


 私がレベル上げをしようと思っていると告げると、レオは時たま現れる魔物をとらえて私に止めをさせてくれた。小さな棘のあるネズミやツノのある兎などだ。


 それを見て、わたし達を追い越していく旅人から「いい相棒で用心棒だねぇ」と微笑ましそうに声をかけられる。

 そうそう、ただの飯屋の看板娘は今まで一度も魔物退治なんかした事がなんかありませんよぉ。

 旅のお供に忠犬を連れていかなきゃとてもじゃないんですぅぅ。


 でもね、レオを乗せてくれる乗合馬車がなかったんだもの!仕方ないよね。

 従魔登録が必要だったなんて知らなかったんだもの!


 それに王都の冒険者ギルドには敵マークが張り付いてたんだもん!


 ちくせう。


 私の立ち回りそうなところに先に張り込みって、私は重大な犯罪を犯した犯人か!!


 というか、それだけ王都に隣国の手のものが入り込んでいるって事だよね。

 そっちの方を憂慮しよう


 私がシスター姿でギルドに行った時にはまだそこには敵マークがなかった。

 監視対象の私の姿が見えなくて焦っているのかも?


 倒した魔物をストレージに突っ込むと歩き出す。

 うんホーンラビットが手に入った。仕入れも出来て一石二鳥。


 まだまだストレージには余裕があります。


 がんばって仕入れするぞぉーって違うか。


 

 

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