なかまに入りたそうな目で見られている
こうなってしまったらもうどうしようもないでしょう~。
自重なんて…何?それ美味しいの?
私は王都を歩き回って、犯罪にならない程度に装備やアイテムを回収しはじめた。
つまりは不法侵入しないという方向で。
知る人ぞしるというドワーフのお店で扇子買って(飛び道具と防御道具を兼用)バッタ市で伝説の状態異常無効効果のついたペンダントを安く買い叩いて装備し、腕のよい薬師のお店で冒険者ご用達ポーションや毒消しなどの応急処置セットを買い全部ストレージに放り込んだ。そして修道服の下には鎖帷子を着ようと思いましたが重くて無理でした。
も、もちろん3年後に勇者が召喚されても困らないように一点ものは避けましたよ?薙刀以外…。
つ、疲れた。
そして王都で評判のお店で孤児院の子ども達用と自分用に飴を買って帰りました。
この飴、治癒効果(小)ついてるんだよねぇ。
そしてこの孤児院も勇者であるプレイヤーと馴染みの場所。
孤児院の子ども達と遊んであげたり院に寄付をしたりすると一日一回につき5個セットの魔力回復効果のあるハーブを使ったクッキーをマザーからもらえるんだ。
このハーブクッキーを何個も欲しいがために王都に何泊もした事を思い出すなぁ。
もちろんもらいましたよ。
そして作り方まで教えてもらいました。
旅の着替えとして持ってきた服はすべて売った。
だって誰だかわからない害意をもった人に触られたんだよ? 気持ち悪いでしょ?
それにただの布の服じゃ防御効果期待できないし。
さすが王都、いわゆる既成服を取り扱っているお店もあって、寸法とかすぐに御直ししてもらえた。
気のせいか、いくぶん垢抜けた気がする。
多分気のせい。
それに服装から私を特定されてしまうかもしれないって思ったんだ。
何故ならカモメ亭まで旅をしてきた姉が一度も襲撃されていない点。
敵が姉の存在を知ったのは最近なんじゃないかなぁ?
きっと男爵様を謀殺した敵は男爵家をはりこんでいたんだろうね。
そこへ姉の荷物を取りにきた身内らしい私を見かけて、尾行したと。
まぁ推測だけど。
でもって、姉の荷物も全てストレージにいれました。
荷車はもういりません。
この荷車もダミー荷物を乗っけて、わたしが王都を出るまで孤児院の子ども達に有効活用してもらいます。 ええ、借り賃料金先払いしてありますしおすし。
返却先を孤児院での引き取りに指定して御者とお馬さんのレンタル代をキャンセルいたしました。
そして、その戻ったお金で、『ダンデライオン』の皆さまへの依頼をシークレットにして表向きの護衛と荷運びの仕事の依頼はキャンセル扱いにしました。
シークレットの依頼内容は『レベルあげ』。
あれです。寄生プレイとか言われる褒められたやり方ではない方法な訳ですが、こちとらきなくさ~~い事態に巻き込まれているのですから、責めないで欲しい。
ダンデライオンの皆さまに強めの魔物を弱らせていただいて。プスっと一突き。
留めを刺した人へのボーナス配当を狙います。
こっちでも、お貴族様のお坊ちゃんなどは、最初はそうやってレベルをあげたりするので。
私は貴族のお坊ちゃんじゃないけど、隣国のお貴族様、もしくは隣国そのものにつけ狙われているので!
主に姉の子どもが!
見えるようになったマップ機能には、王都周辺である第一エリアと『カモメ亭』のある宿場町までの地図が表示されている。行った事のある場所しか表示されないので、今はダンジョンの町の第二エリア、港町第三エリア、隣国との国境の第四エリアは表示されていない。勇者が最初に味方につけられるNPCはお城の中の人達だし、町にいる仲間化が可能なNPCは第三エリアまでクリアしないと現れない。
私を食堂に誘ってくれたあのソバカスのある可愛いシスターだけどね。!
彼女が聖女なんだよね。信じられる?
こっちでもイベントが進行しないと、少なくともあと3年はしないと、彼女は聖女としての力を覚醒しないから、今の時点で私がいくら旅に誘っても仲間にはならない。
それに、何と言って誘うの?無理だよね。
というか、勇者の仲間をスカウトしちゃったらストーリーがどうかなってしまうかもしれない。
やがて現れる魔王を倒せなかったら困ってしまう。嫌、困るっていうような生易しい事態じゃないよね。
そっちは自重しよう。うんそうしよう。
私も本来NPCのはずなんだけどなー。
でも、考えたら、狭い世界で『魔王』とかと戦ってるよね。
すべて自国内で片がつくんじゃん。
まぁ領はまたぐけれども。
港町から船でいくシャルワ帝国とか因縁深き隣国とか、今回は『魔王関係』では影響ないのだろうか。
あれだよね。国を跨ぐと、国の設定から人々の言語設定から作るのが面倒くさそうだもんね!
とはいえ、隣国は元の世界の某国風だし、シャルワ帝国は元の世界では中東よりの文化っぽいらしいし。
ちゃんとこの世界ではありますよ。これ以上進めない視えない壁のある世界の果てとかありません。
私は行ったことがないけれど。
いや、壁あったらどうしよう。
試したいようなそうじゃないような。
夕方になって騎士さんがやってきて、無罪放免、違った、出発しても良いとの許可が出たので、男爵家からの圧力がかかったのかも知れないよね。
どう説明したのかわからないけど。
その晩はありがたく泊まらせて頂いて、念のため教会側から出た。
すると光ってるよ光ってるよ。
マップに敵マーク。
やっぱり今日も張られていたみたい。孤児院からの出入り口を利用する馬車や荷車を監視しているように。
しかも数が増えてるし。
私はさり気なく、朝のお参りから帰る集団にまじって教会を出ると、敵マークを避けて、来た時とは別ルートを選んで歩いた。
教会門前町の商店街のそこに住む住人しか利用しないような裏通りの路地を進んでいくと…。
ぐぅぅぅぅぎゅるるるるるるる
あれ?腹の虫?
音の鳴った方を見れば
貸家と書かれた一軒の、昔は何かのお店だっただろう家の扉の前で座り込んでいる半裸の青年が、うるうるとした瞳でこっちを見ていた。
きゅーーん
きゅんきゅんきゅーん
あれ?またまたデジャブ。