~第2話~ 探偵は異世界でも…?
なぁ、みんなどう思うよ?
朝起きたらいきなり異世界飛ばされてた…って。
軽~くやばいよね?
人知のレベル超えてるよね?
えっ、えっと…。
思考、停止。
まぁでも…。
危険な場所ではなさそうだ。
窓から見ると、この部屋はおそらく2階程度の高さにあると思われる。
そしてベッドから左を見れば、階段がある。
モンスターとかいきなり来ないよね?
外からの景色を見るあたり、ヴリトラと七英雄の噴水がある。
ということは恐らく、初期スポーン地点の「始まりの村 アヴァロン」か?
いやまぁ結構名前は大層なものだけど、寂れてる。
というかゲーム内での時より寂れていないか?
階段の下から足音が聞こえた。
だんだんと近づき、階段を駆け上ってくる。
そして目に飛び込んできたのは、1人の女の子だった。
身長は自分が176とかそんなもんだったけど、見た感じからすると自分の首までくらいかな?
髪はロングでおろしてる。
綺麗な黒。
まるで日本人のようだった。
でも、日本人とは思えないほど綺麗…
こちらの詮索している様子を察したのか、しばらく互いに何も言わなかった。
ちょっと口を酸っぱそうにすぼめ、心配そうな目を向ける。
え、可愛い。
ちょ、可愛い…。
「あ、あの!」
いきなり言われたので少し驚き、
「ん、んっ!?な、何?」
「お怪我は、ないですか!?」
へ?
なんで怪我、なんだろ?
質問してみることにした。
「なんで怪我の有無を聞くの?」
ちょっと俯き加減になり、彼女は答える。
「いえ、昨日の夜のことなんですが、あなたが道端で倒れていたので…何かあったのかと。」
いやまぁ、そんなことがあればそう考えるか。
ていうか、道端に倒れていたってどゆことや。
「え、道端に、倒れてたの?」
「は、はい…。」
なんとなく読めてきた。
自分はどうやら昨晩にこの世界の道端に倒れていて、それを見つけたこの子がこの家まで運んでくれたのかな?
「ねぇ、君がこの家まで運んできたの?」
「は、はい。この家には私1人しかいないので…」
「え?」
思わず声が出た。
この家には、君1人だけ?
え、それまじ?
お、落ち着け、落ち着くんだ、自分。
なんかかかってる布団思いっきり握っちまってシワになってるけど…
落ち着くんだ。
そ!そうだ!こういうときには素数を数えれば!
1.4.6.8.9.12.14…
ってもろ素数じゃねぇ!
「ど、どうかされましたか?」
さすがに焦っているのを感じ取られたか…
「え!?な、何でもない!何でもないったら、何でもなぁい!?」
「あ、あの~、大丈夫ですか?」
あわ、あ、あわわわ…
思考停止。
ベッドに身を委ねた。
昨日の夜もそうだったけど、今日はベッドが柔らかいやぁ。
わぁい。
「…。そっとしといてあげよ。」
それでいい、それでいいんだ、君。
頭の中を整理したい。
まず、この世界はほぼと言っていいほど、ヴリトラと七英雄の世界だ。
根拠は2つ。
1つ、外にあるヴリトラと七英雄の噴水。
2つ、彼女の服装が、始まりの村の服装だったこと。
現実世界だったとしても、相当な精巧さだ。
ここまで作り込めるとは思えない。
そして次に、この世界で生きることについて考えよう。
現状では、彼女によってこの家に運び込まれ、恐らくだが看病を受けた、といつところか。
これをこの世界で生きれるようになるには、最低でもこの家から出るべきか。
そういえば、ゲーム内のように通貨は使えるのか?
銀行はあるのか?
もしかしたら、モンスターもいるよね?
この姿の状態で戦いたくないよ!?
だって死んじゃうかもしれないじゃん。
ということは、この世界にもリスポーンの概念があるかどうか分からないのに死ぬのはやばくね?
真面目に死ぬ可能性もあるよ?
…そのうちに分かるんでしょう。
また階段を駆け上がる音。
「大丈夫でしょうか?」
さっきの彼女の声。
ぼーっとしていたので、ちょっと反応が遅れた。
「ん?うん、大丈夫。」
「なら良かった…。申し遅れましたが、私はカレンと言います!」
「カレンか、いい名前だね。僕の名前は赤嶺翔馬、翔馬でいいよ。」
「は、はい。翔馬さん。」
テンプレとも言える自己紹介の時のフォロー&自己紹介のやりとり。
少し疑問に思ったことを聞いてみる。
「ねぇ、この世界に七英雄はいる?」
「正確には、『いた』ですね。」
「そうか、急な質問に答えてくれてありがとう。」
まさか。
いや、自分の記憶が正しければ、七英雄はゲームしている時点で、『いる』なのだ。
その七英雄にまつわるストーリー等を繰り返し、七英雄について知るのが私達のゲーム内でのいわゆるミッション。
この世界に、七英雄はいた。
そして、今はいない。
つまりは、ゲームの時よりも時代が流れている?
もしくは、この世界はたまたま七英雄と同じ名前の七人の英雄がいただけ。
ゲーム内での年月を考慮すると…
たしか昨日ログインした時はゲーム内の、西暦のようなもの、フェルス暦568年だったはず。
リアルタイムでこの暦は変動する。
「今はフェルス暦何年?」
「フェルス暦668年です。」
あー、理解。
この世界は完全にヴリトラと七英雄の中の世界。
そして、それと同時にヴリトラと七英雄の世界よりも、100年後。
あぁもうめちゃくちゃだよ、この世界。
いやまぁ、こっちに来てそんな経ってもいないんだけど。
「あの…どうかされました?」
「あ、いや何でもない。」
ていうか今更ながらめちゃくちゃタメで話しちゃってるや、まぁいいか。
「そういえば七英雄はどうしたの?」
「七英雄ですか?私はあまり知らないのですが…。この村の長老なら知っていると思いますよ。」
「案内してくれるかい?」
「え、えぇ。構いませんよ。ですがお腹すいてませんか?翔馬さん?」
んまぁ、翔馬って呼び捨てでいいよ…。まぁいいけどもね?
「言われてみれば昨日の夜から何も食べてないね、今は何時?」
「午後2時です。」
「結構経ってるんだな…。ご飯食べていいの?」
「ええ、構いませんよ。下に降りられますか?」
「心配どうも、大丈夫だよ。」
「じゃあ、降りてきてください。」
優しい笑顔だ。
僕にこんな優しい笑顔が向けられたの、子供の時以来じゃないかな。
…。
まぁ、いいか。
階段を降りる。
明るい雰囲気だ。
木々の温もりを感じる。
昔ならではの安心感、というものだろうか。
温かい。
何もかもが温かい。
「カレン、本当にご飯なんて食べていいの?」
なんて自分でも言いつつ、ちゃっかりテーブルに座る。
「いいんですよ、翔馬さんは倒れていたんですから、元気つけないと!」
優しい。
ただ、優しい。
探偵なんてやってるのがバカバカしくなってくる。
「はい、どうぞ!」
テーブルに出されたのは…。
「え、ナニコレ。」
どう見ても、ダークマター。
少なくとも人に見せられるものではないし、人様に食わすものではないだろ!?
「どうかされましたか?」
「い、いや、何でもない、何でもないです、いただきまぁす。」
液状なのでおそらく作りたがっていたのはシチューかなんかなのだろうが、少なくともシチューとは言えない!お世辞にも言えない!もはや言わせないよ!こんなの!
出せれたスプーンで取って食べてみる。
「ごふぁっ!」
うん、予想通りやったで。
口中に走る生ゴミのような味。
あの所々から感じられた優しさとは何だったのか。
意識が…遠のく…。
「どうしました!?」
おい、毒盛った本人が心配してんじゃねぇ、ぶん殴るぞ。
「な、何でもないよぉ…。」
絶対口からダークマターがこぼれてる。
ぽたぽた雫となって垂れる音が聞こえるもん。
「え、こぼしてますよ?」
「あぁ、すまない、すまない…。」
ばたんきゅ~。
「ええ!?翔馬さん!?翔馬さぁん!?」
油断するんじゃなかった。
畜生…。
俺の人生ここまでかよ…。
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再びベッドに逆戻りした模様。
もう一度見た景色をまた見るのか。
「起きてくれた!」
ぎゅっと抱き締められる。
そんなに心配してくれていたのか。
「ぐ、ぐるじぃ…。」
「あぁ!?ごめ、ごめんなさいぃぃぃ!!」
そんな土下座する勢いで謝らなくともいいのに…。
「…。普通に長老のところへ連れてってくれるかい?」
「その前になんであのカレーを食べた時倒れたんです?」
あれカレーだったのかよ!?
どう見ても真っ黒なダークマターでしょ!?
「あぁ、ちょっと喉に思いっきり入っちゃってね?それで。」
適当に誤魔化してみる。
「あぁ、そうだったんですね、気を付けてくださいね。」
おまえのせいだろがァ…。
そんなこともあったが、長老のいるシティホールへ向かうことになった。
全ての村に1つ、シティホールと呼ばれるいわゆる市役所が存在している。銀行としても使われたりしている。
そしてここからは個人的に思ったことなのだが、この世界ではNPC全員が意思を持っている、と思われる。
ゲーム内では決まった会話しかできないが、ゲーム内ではこんなテンプレの会話なんてなかったはずだ。
そんなことも思いながら、シティホールへ向かう。
基本的に長老のところなんて行かない。
ゲームだった頃は長老は街についての特に必要の無い情報しか喋らないので、会う必要もなかった。
ちょっと刀の鞘がちくちくするので、やや歩くのは疲れる。
どう工夫しても当たるんだけど、これ。
なんでかなぁ…。
そんなこんなでシティホールに着いた。
そして。
この日を始まりとして、赤嶺翔馬は異世界に来ても、探偵業をすることになるなんて、翔馬は思いもしなかった。
to be continued
どうも、龍眼です!
次回はついに事件を起こしますよ!
翔馬のキレッキレな推理をお楽しみに!(多分)
いやぁ、初日で100pvもらえるのは驚きでした!w
でもでもTwitter見てると初日でもっともらってる人はいっぱいいらっしゃるみたいですね…尊敬。
皆さんぜひぜひブックマークや評価おねがいします!そして、感想くださればもはや小躍りします!w
それでは、*˙︶˙*)ノ"マタネー