いつものたい焼き
俺は高垣啓介、高校2年生だ。
啓介「いってきまーす」
さえ「いってらっしゃぁーい」
私立北学学園に通う俺は毎日この足場の悪い道を登校している。交通手段は自転車、体を鍛えるためだ。
通学途中にあるたい焼き屋でたい焼きを買い、腹ごしらえをするのが俺の日課だ。
たい焼きのおばさん達とはそこそこ顔見知りで仲がいいんだ。いや、まじで。
帰宅時には必ず寄っているレベル。
啓介「おばちゃーんいつもの下さーい」
おばちゃん「はいよーまた来たのかい」
おばちゃん「いつもありがとねー」
啓介「あいよ!」
啓介「やっぱここのたい焼きはうんめぇーなぁー」
渡されたたい焼きをその場で頬張ると、店の中から見慣れた少女が顔を出してきた。
梨花「お…お兄さん、いらっしゃいませ」
啓介「おぉ、梨花、今日も店の手伝いお疲れ様な」
梨花「う、うん」
この子は二ノ宮梨花、ここのたい焼き屋の娘でそうとうシャイな奴。この子が心を開いてくれるようになるのにどれほどの時間が掛かったことか…。
啓介「いつも接客ありがとな、中学生なのに偉いなぁ、梨花は」
梨花「う、うん…ありがと、お兄さん///」
啓介「んじゃ帰るわーごっそさーん」
ーーーー翌朝ーー……
まい「お兄ちゃん起きて!朝だよー」
啓介「あと10分…」
まい「むぅー」
さえ「こらこらケイちゃん、まいちゃんが困ってるよ?」
啓介「あと5分…」
さえ「また遅刻しちゃうよ?」
啓介「あと気分…」
まい「それ、時間ですらなくなってるよお兄ちゃん?」
さえ「もぉー、どれくらい寝るつもりなの?」
啓介「5億年くらい?」
まい×さえ「地球が終わっちゃうよぉ!」
啓介「あーはいはい起きますよーっと」
啓介「あー眠い眠い」
さえ「そいえばケイちゃん進路希望調査提出した?」
啓介「進路希望調査?あーたしかそんなのもあったっけかな。」
さえ「もうしっかりしt
啓介「んじゃいってくるわー」
さえ「あ、もうケイちゃん!」
通学途中
啓介「っあーだり」
??「あ、ちょっとあんたー!」
啓介「……」
⁇「ちょっと!聞いてんの?」
啓介「…………」
飛鳥「ねぇ…」
啓介「んぁーもうなんだよ」
飛鳥「べ、別にただたまたま見かけたから声をかけてあげただけよ」
啓介「なんで上から目線なんだよ。」
啓介「ったくそんなことでいちいち呼び止めんなっての、先行くぜ」
飛鳥「ちょっと待って!」
啓介「あーもうなんなんのお前、かまってちゃんなの?」
飛鳥「どうせあんたは一緒に登校してくれる友達もいないだろうし、私が一緒にいってあげてもいいわよ」
啓介「あ、そーゆーのいいんで。」
飛鳥「え……」
ーーー学校ーーーーー
ザワザワザワ
ワイワイ
ザワ
ガララララ
シーン
啓介「はぁ」
一体俺の学園生活はどこから狂った。
思えば…あの頃だったかもしれない。
ーーー入学式、初日ーーー
それは桜が満開の季節、新しい入り口に胸を高鳴らせ、校門の前を通ったときだった。
DQN「おいおいおい、どぉしてくれんだよぉ、このtシャツ18万もしたんだぜぇ」
飛鳥「うるさい!あんたたちがしつこく絡んでくるからでしょ!」
DQN「はぁ?!なめてんのかこのクソ女!」
啓介「なんだ?入学そうそう喧嘩か?」
DQN「てめぇ…ちょっと可愛いからって調子乗ってんじゃねぇぞ…あぁ?」
飛鳥「ふんっそんなダサいシャツが18万もする訳ないじゃない!小銭あげるからそれでシマムラでも行って店員さんオススメのインナーシャツでも買うといいわ!」
DQN「っんだとこのアマぁ〜」
啓介「うわぁ…あの子キツイなぁ、あれは殴られるぞ」
DQN「いい加減にしやがれ!クソ女!」
飛鳥「きゃっ」
啓介「ま、流石に女の子を殴るのは見てられないな」
パシッ
DQN「……あ?」
飛鳥「…え?」
ギリギリ
啓介「そのくらいにしておけよ、女を殴ったんじゃ男が廃るぞ」
DQN「はぁ?誰ですかアンタは、正義のヒーロー気取りのアホですか?」
啓介「話聞いてる限りじゃその子にも非はあるみたいだし、ここは話し合いでケリつけようや」
飛鳥「私に非なんてない!こいつらから絡んできたのよ!いつの時代のナンパだっての!」
啓介「またそういうこと言う…」
DQN「女ぁあぁあぁぁあぁ!!」
啓介「あぁったくこれだけはやりたくなかったんだけどな」
ドコッ
啓介「頭冷えたかー?って聞こえてねーか。」
ザワザワ
オイミロヨアイツ
エーナニコワーイ
啓介「はぁ、遅れるぞ。」スタスタ
飛鳥「え……あ、うん…」
ーーーーーーそして現在へ至る。ーー
この事件以来、俺は学校で不良を一撃で倒したヤバイ奴というレッテルを貼られてしまい、皆んなから怖がられ浮いた存在になった。
ーー教室ーー
ザワザワザワ
ソレアルー アルヨネー
啓介(これは寝れそうにないなトイレにでもいくか)
ザワザワザワ
ワーイワーイ
ソレオモシロイネ‼︎
ガタッ
シーン……
啓介「…あ。」
ーーーーー廊下ーーーー
啓介「もう辛いよ。」スタスタ
⁇「あ、啓介くんじゃーん!」
啓介「赤坂先輩」
赤坂「おっはよー☆」
啓介「おはようございます。」
赤坂「相変わらず無愛想だねー、どーお?学校生活は慣れた?」
啓介「あーまぁそれなりには。」
赤坂「そっかそっかーなんかあったらいつでもいってねー☆」
啓介「うっす。」
どうもあの人は苦手だ、隠キャラの俺にとって、あんな元気ハツラツな太陽娘は眩しすぎる…。まぁ悪い人ではないんだけれども。
しかし何故あの人は俺のようなボッチにかまってくれるのだろうか、まあそうとう優しい人なのだろう…。
キーーンコーンカーンコーン
啓介「あぁ…もう授業か…」
ーーーー下校時ーーーー
(よし帰るか今日も梨花ちゃんのたい焼き食ってやなこと忘れよう。)
啓介「梨花ちゃーんいつものー」
梨花「あ、はい、お兄さん。」
啓介「おーサンキューなー」
啓介「梨花ちゃん、最近学校は楽しい?」
梨花「は、はい楽しいです。」
啓介「そっか、よかったよ、俺も梨花ちゃんもあまり友達が出来るタイプじゃないからなぁ」
梨花「わ、私は…暗いから…けど、お兄さんは違う、と、思います、こんな根暗な私に優しく接してくれるの、お兄さんだけだから…」
啓介「ははは、それは梨花が可愛くていい子だからだよ、俺梨花ちゃん以外に友達いないもの」
梨花「か…かわっ…///////」
啓介「そういえば今年で受験生だよね?どこ受けるつもりなの?」
梨花「へ?…えっと…お兄さんと同じところ…です」
啓介「…?梨花ちゃんならもっと上目指せるんじゃない?」
梨花「いえ…お兄さんと同じ高校…行きたいから////」
啓介「そうか…それはなんだか嬉しいな、けど、高校受験なんて今後の人生を左右する問題だから、しっかりと考えるんだよ?」
梨花「は、はい…ふふ、やっぱりお兄さんは優しい」
啓介「そうか?」
梨花「はい…♡」