4輪: 魔力といふ因果律
今日は、なんかおかしい。
そごう千葉店ガーデン口とセンシティ前、千葉セントグレースヴィラ前交差点、JR千葉駅西口ウェストリオ前広場、更に北口ロータリーと立て続けに冥世の仝儕と出会した。
ここまでの獲得予定Mポイントは、6万mp以上。
万葉要街路は、確かにわたしが作った粗製龍脈だけど、普段は多くても1万mp稼げるかどうか。大体は、数千mpってところ。
マナリポートch.での今日の瘴気予報でも、格別、降魔の心配はされていない。
強いていえば、クランの仲間の子から届いたNO注意報のメッセくらい。
──なんでこんなに仝儕が湧くんだろう?
凄く稼げてるからいいんだけど、ちょっと気になる。
胤獣との出会いや使い魔にして復活せざるを得なかった少年といい、何かいつもと違う。
エンカウント率、というかイベント、アクシデントの発生率が多過ぎる、って思うの。
「ねえ、ハムタロス。今日、なんかおかしいの」
「なにがだい?」
「普段よりも仝儕との遭遇率が多い気がするの」
「ああ、それは当然だよ。だってボクと契約したんだからさ」
あっけらかんとペンギンは答えた。
「え?え?どういうこと?」
「ボクと契約したことで今の君は、以前とは比較にならない程、魔力がアップしてるんだ。
君は、元々潜在的に魔力量が多かったんだけどボクと契約したことで、今や聖人や英雄クラスの魔力を有した“伝説の超魔法少女”になりかけてるんだよ」
「なにそれ?すごいッ!でもそれと仝儕の出現率って何の関係があるの?」
ペンギンは下嘴に羽を当てて語る。
「魔力同士は、引き合う関係にあるんだ。正確には、惹かれ合う関係、っていったほうがいいのかな?
弱い魔力源に魔力は集まらない。逆に強い魔力源には魔力が集まり易いんだ。魔力には、こういう性質があるんだよ。これを“因果律”というんだ」
「え、そうなの?」
「そうなんだよ。だから、強力な冥世の仝儕を狩るには、強い魔力を持った者達が参加するクランが有効なんだ」
「?強力な仝儕を倒すのには、強い人達の力がないとダメってことでしょ?そんなの知ってるよ」
「違うんだ。そもそも、強大な仝儕との遭遇には、強力な魔力源が必要、ってことなんだ。
だから、強い龍脈や霊感スポット、曰く付きの史跡、魔法陣なんかで仝儕は出現する。同じように魔力総量の多いクランは、強力な仝儕と出会す可能性が高くなるんだ。
著名なクランというのは、著名な仝儕を退治しているからに他ならないけど、その為には著名な仝儕と遭遇する必要があり、その遭遇率を上げる為に魔力の高い者達が集うんだよ」
「へー!?そうだったんだ!」
ペンギンは羽でわたしのMagiPhoneを指す。
「君の所属するクラン『Overlord Must Die』は既に優秀といえる程のチームだけど、君の魔力がボクとの契約で飛躍的に向上したことでクランの魔力総量も爆発的に増えている。だから、より強力な仝儕と遭遇する可能性が高くなるんだ」
「え!?ってことは、Sランク・クランになれるのかな?」
「そうだね。魔力に惹かれる、っていうのは、何も仝儕だけじゃないんだ。当然、優秀な者、優れた魔法少女達も集う、ってことだからね」
「そうなんだぁ!よーし、わたし、がんばろう!」
ハムタロスは首を縦に振り、続ける。
「うんうん。後、アピールも必要だよ」
「アピール?」
「そう、アピール。注目される、ことだよ。
注目されることで認知度が高まる。崇拝や熱狂というのは、認知され注目されなければならないんだ。魔力が強くなり、偶発的な発生率や出会いは増えるけど、存在を示すことでより確率を高めることができるんだよ」
「有名になればいい、ってこと?」
「その通りだよ、魔斗華。有名になれば、同じく有名な者達が集い、著名な仝儕と相対することができ、それらを退治することができるんだ。そうすれば、さっきの少年や母子のような悲劇をなくすことができるよ。
真の英雄というのは、セルフプロデュースが上手く、自分の名を売ることができる知名度のある者達を指すんだ。名も無き英雄は、英雄とはいえないんだよ」
ハムタロスは羽をパタつかせて尚も熱く語る。
「任せといて。ボクは、英雄仕掛け人として幾人もの英雄と共にしているんだ。魔斗華にだってできるよ」
「なんだぁ、やっぱりハムタロスはプロデューサーさんなんじゃん!淫獣Pで間違いなかったんだね!」
「…いやいや、プロデューサーではないんだけど…守護者というか導き手というか…」
「うん、なんでもいいよ!よし、有名になろう!そして、悪い仝儕を一掃するよ」
「それじゃ、これから忙しくなるよ。まずはクランに戻り、次いで、計画を練り、自主活動を実行するんだ」
なんかよく分からないけど忙しくなりそう。
──絶対、頑張るの!